法文化学基礎

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法文化学基礎
標準年次
2
講義題目
法文化学への誘い(法・科学技術・倫理をつなぐ)
開講学期
前 期
担当教員
江口 厚仁
単位数
2単位
教  室
大講
科目区分
基盤科目
履修条件
特にありません。

カリキュラム上は法学部2年生向けの科目ですが、いわゆる実定法解釈学についての知識がない(たとえば他学部の)学生さんでも大丈夫です。
ただしその代わりに、全体に原理的な(理論的抽象度の高い)議論を展開しますので、授業に「即効的な実用性」を期待される方には不向きです。この点には十分にご留意下さい。

なお、この科目は「隔年開講」です。平成28年度は開講されませんのでご注意下さい。
授業の目的
この講義は、3・4年生に向けて開講される基礎法学系の「展開科目」(なかでも法理学・法思想史・法社会学・紛争管理論などの現代法システムの基礎理論を主題とする科目群)の導入編となることを目的としています。

みなさんの法学部での学びの中心は実定法解釈学ですが、本講はそれとは異なる手法を用いて現代法システムを理論的に(言葉の真の意味で「ラディカル」に)分析するための方法論=アプローチについて論じます。こうした方法論には、様々なタイプのものが存在します。本講義は「社会システム理論」に軸足を置きつつ、多様な法理論/現代社会理論の諸潮流を概観し、それらが現代社会を生きる私たちにとって、実際にどのような意味を持ちうるのかを、具体的な事例を手掛かりにしながらあれこれ考えていきます。

とはいえ、この講義はあくまでも高年次専攻科目のためのイントロダクションです。それゆえ、あまり細かな論点(それは3年生以降の「展開科目」群で提供されることになるでしょう)に立ち入るのはやめにして、できるだけ「骨太な描線」で「先端科学技術」をめぐる現代社会の争点・法理論の動向をスケッチしていきたいと考えています。

法学部ディプロマポリシーとの関連では、
A.知識・専門的能力の観点からは、実定法解釈学とは異質な現代法システムの分析フレイムが多数存在し、その各々が固有の知見をもたらしてくれることについて、大まかな理解をしていただければ十分です。細かな暗記情報の蓄積は特に求めません。
B.汎用的能力・志向性の観点からは、「柔軟で批判的・創造的な思考力の涵養」という点を重視します。「分析フレイム」は、みなさん自身の実生活の中で現に活用できるものにならなくては意味がありません。いきなりそれらを「自在に使いこなせる」境地に達することは、まずありえませんが、自分なりに試行してみることは可能です。まずは、そうした構えを身につけていただけることを期待します。

この講義を聴いて、「基礎法学」系の他の専攻科目も履修してみたいな、もっと突っ込んだ議論も聴いてみたいな、という気になっていただけたなら、それで本講義の目的は、ほぼ達成されたことになるでしょう。

授業の概要・計画
おおむね、以下のようなテーマを扱います。

1.先端科学技術と現代社会の行方−−その光と陰
2.先端科学技術と法/倫理がぶつかるとき
3.事例研究(生殖補助医療、インターネット、遺伝子操作など)
4.現代正義論−−法的規制の射程
5.リスク社会を生きる技法
6.先端科学技術と折り合って生きる知恵

より具体的な講義計画は、授業の進行を通じて適宜示します。
授業の進め方
講義用「レジュメ」「資料」を配布し、おおむねそれに沿って講義します。

なるだけ「1テーマ、1コマ完結型」の形で授業を進めていく予定ですが、その時々の勢いで話がすぐに脱線し、めったに予定通りには進行しないのが悩みの種です(実は、話し手も聞き手も、話が脱線している時間の方がずっと「楽しい(かもしれない)」という点がネックになっているのかもしれません)。

なお、この授業では、みなさんが記憶すべき「情報量の多寡」はあまり重視いたしません。専門用語をたくさん暗記することで「利口になった気分」を味わいたい人は、きっと「がっかり」しますので履修登録を避けるのが賢明でしょう(学期の最後になって文句を言われても困ります)。この授業のテーマは、衝突する異質な思考モードを媒介し、複眼的に問題を考えていくための「思考の形式」を鍛えることにあります。何かを暗記するのではなく、みなさんが自分自身の頭で何かを考え抜くための手がかりを提供すること、この点が本講義のポイントです。

ですので、講義も「ああでもない、こうでもない」と堂々巡りの様相を呈します。既製の「スッキリ明解な結論」に安易に飛びつかないための「正しい悩み方」がポイントですから、そのコンセプトに忠実に、講義自体も右往左往しながら進行します。 
教科書・参考書等
テキスト・参考書は特に指定しません。
関連する文献・資料については、講義の中でその都度紹介します。

余力のある人は、坂口光一編『感性・こころ−−自分らしい自分をつくる・もうひとつの知をひらく』(2008年・亜紀書房)の第3章−1「迷い抜く倫理学−互いを認め合い、違いにこだわる」(執筆担当は私です)を読むと、講義全体のイメージがつかめるかな、と思います。図書館に潜ってみてください。
成績評価の方法・基準
定期試験(ないしレポート)により評価します。
具体的な方法は、開講初日にプリントを配布して、口頭で詳しく説明しますので、お聞き逃しのないようお願いします。

法学部ディプロマポリシーとの関連では、
A.知識・専門的能力の観点では、細かな暗記情報の蓄積は特に求めないと宣言していますので、情報量の多寡を評価の対象とすることはありません。
B.汎用的能力・志向性の観点からは、「柔軟で批判的・創造的な思考力の涵養」という点に鑑み、自分自身が選び取った「分析フレイム」を自覚的に活用しながら、特定のテーマについて思考を展開していく力を評価したいと思います。
その他(質問・相談方法等)
オフィスアワーは特に設定しませんので、質問等は、授業時間後を含め適宜受け付けます。

【科目コード:LAW-LAW2111J】
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