民法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
民法演習
標準年次
3・4
講義題目
重要判例を通じて学ぶ民法
開講学期
通 年
担当教員
赤松 秀岳
単位数
4単位
教  室
303
科目区分
展開科目
履修条件
 民法の基本的知識を有することが望ましいが、ゼミに受講開始時に民法全科目を履修している必要はありません。
 ゼミやグループ討論で物怖じせず、自分の考えを述べるなど積極的な参加ができる(してみようと努力する)人であれば誰でも、履修を歓迎します。
 このゼミの基本方針は、次の通りです。
 民法の学習では、「読んで覚える」ことは単なる出発点で、「討論し考える」ことが重要です。他者と対話しながら自分自身で考える中で会得したことは、自身の中にしっかりと根付きます。また「発見のおもしろさ」を経験することは、もっと勉強してみよう、というモチベーションを高めることにもつながります。こうして、法的知識とその応用力・創造力を身に付けるための基礎力養成がこのゼミの目標とするところです。
 以上の基本方針に共感する人に、このゼミを希望して欲しいと思います。
授業の目的
 民法財産法を中心としますが、家族法の問題も取り上げて、とくに3年次生については、基本的知識を踏み固めると同時に、「法的に考える」力の養成に資するような重要問題を判例に即して検討します。各回の問題・判例につき、事実との関連で、なぜそのような判断が導かれたのか、そのような問題が生じる背景は何か、判例に対する批判的な学説がある場合、考え方が分かれる理由はどこにあるのか、自分自身はどのような立場をとるか、などにつき、グループ討論とゼミ本番での討論を通じて検討します。

授業の概要・計画
 以下の通り、なるべく民法の全体を網羅し、とくに民法学修上重要な民法判例百選T・U・V(最新版)で取り上げられている判例をできるだけ多く取り上げるようにしたいと思いますが、それにとどまらず、さらに最新の重要判例やその他の興味深い判例も取り上げます(なお、以下の各回の判例については予定で、かつ現時点でゼミの授業のイメージをお示しするものです。今後、下記の判例のいくつかを入れ替える予定ですが、授業開始時には確定して全回分の判例をお示しします。)。
第1回 ガイダンス・クラス作りとディベートの体験
第2回 民法94条2項と110条(最判平成18年2月23日民集60巻2号546頁) 
第3回 無効(最判昭和35年3月18民集14巻4号4483頁)
第4回 表見代理(最判昭和51年6月25日民集30巻6号665頁)
第5回 表見代理と無権代理(最判昭和62年7月7日民集41巻5号1133頁)
第6回 背信的悪意者からの転得者(最判平成8年10月29日民集50巻9号2506頁)
第7回 賃借権の時効取得(最判昭和62年6月5日判時1260号7頁)
第8回 即時取得(最判平成12年6月27日民集54巻5号1737頁)
第9回 共有関係(最判平成15年7月11日民集57巻7号787頁)
第10回 公道に至るための他の土地の通行権(最判平成2年11月20日民集44巻8号1037頁)
第11回 地役権(最判平成10年2月13日民集52巻1号65頁)
第12回 物上代位(最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁)
第13回 法定地上権(最判平成19年7月6日民集61巻5号1940頁)
第14回 債権者取消権(最判平成10年6月12日民集52巻4号1121頁)
第15回 集合動産譲渡担保(最判平成18年7月20日民集60巻6号2499頁)
第16回 債権譲渡(最判平成5年3月30日民集47巻4号3334頁)
第17回 数量指示売買(最判平成13年11月27日民集55巻6号1380頁)
第18回 所有権留保売買(最判平成21年3月10日民集63巻3号385頁)
第19回 賃貸借(最判平成11年3月25日判時1674号61頁)
第20回 請負(最判平成9年2月14日民集51巻2号337頁)
第21回 契約解除(最判平成8年11月12日民集50巻10号2673頁)
第22回 不法原因給付(最判昭和45年10月21日民集24巻11号1560頁)
第23回 過失(最判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)
第24回 使用者責任(最判平成3年10月25日民集45巻7号1173頁)
第25回 人身損害(最判平成8年4月25日民集50巻5号1221頁)
第26回 労働能力喪失説(最判昭和36年12月22日民集35巻9号1350頁)
第27回 性同一性障害(最決平成25年12月10日民集67巻9号1887頁)
第28回 冷凍保存精子による死後受精と親子関係(最判平成18年9月4日民集60巻7号2563頁)

授業の進め方
 ゼミ募集の結果もし相当数の受講者があれば、次のように行ないます。

(1)グループによる事前討論
まず、ゼミの受講者全員をいくつかの班に分けます。各班ごとに順番に報告を担当します(班の中でさらに報告者は固定せず、ローテーションしてください)。報告が当たっている班は事前に検討会を行い、報告レジュメを作成し、ゼミ当日の数日前には、レジュメをHP上にUPします(そのためfreeml上にHPを立ち上げます)。報告が当たっていない班は、HPからダウンロードしたレジュメをもとに、ゼミ当日までに必ず最低1回は事前検討会を行って、ゼミ本番に出席します。いうまでもなく、ゼミ本番でのディベートが活発になるよう、このようなシステムを採ります。

(2)教場での授業  
 ゼミ当日の教場では、報告を担当する班から選ばれた司会者が進行係を務め、レジュメを踏まえて問題提起がなされます。他の各班の受講者も事前討論をしており、当日の問題について一定の知識と関心を共有しているはずなので、それを前提に、全体討論と、場合によっては各班ごとの再討論が教場でなされます。以上を通じ、問題を深化させ、掘り下げていきますが、これも必要に応じ(とくに民法全部の学習をまだ終えていない受講者を念頭に置いて)、担当教員の側から、ミニ・レクチャーが挟まれることもあります。

(3)ライティングの課題―書く力の養成―
 自分の意見や考えを誤解されることなく正確に、自分の言葉で文書化できるという能力は、社会で仕事としていく以上不可欠の前提です(法曹のみならず、官公庁や企業においてもそうです)。そこで、このゼミでは、ゼミで取り上げた問題、あるいはそれ以外の問題について、自分自身の言葉で文章化して提出するライティングの課題を課します。提出された課題については、添削をして返却します。また、受講者のこのゼミ以外の勉強や活動になるべく影響がないよう、ライティングの課題は、夏休みを利用して作成してもらう予定です。そして、できればゼミ論集に纏める予定です(ここ数年は毎年ゼミ論文集を刊行しています)。
教科書・参考書等
 授業概要・授業計画にあげた各回の判例とその解説(判例百選や調査官解説、判例評釈)のほか、各種の民法基本書。
成績評価の方法・基準
 ゼミでの報告・討論によって、このゼミが目標とする「法的に考える」力を各受講生がどのように習得しているか、およびライティングの課題などを通じて評価します。
その他(質問・相談方法等)
 質問や相談については、オフィスアワーに研究室で対応するほか、ゼミの終了後の時間帯や、それ以外でも研究室に在室中は対応可能です。
 私が九大でゼミを担当するようになり8年目ですが、法科大学院進学(なお本ゼミに在籍したことのある者からすでに15名以上の(新)司法試験合格者が出ています)のほか、司法書士や、公務員、民間企業など、本ゼミ出身者の進路が多様化しています。そのため、多様な進路を希望する人が、毎回のゼミでそれぞれ自分にとって有益なものを持ち帰り身に付けることができるような、多様性に「開かれたゼミ」にしていきたいと考えています。
過去の授業評価アンケート