本講義では、まず第一にパレスチナでユダヤ人国家を建設することを目指したシオニスト運動がヨーロッパで成立した過程を扱う。次19世紀末から1948年ユダヤ人国家イスラエル建国に至までの期間におけるアメリカのシオニスト運動を展開とそのパレスチナへの対応を検証する。アメリカを舞台とする理由は@ユダヤ人国家イスラエル建国にあたってアメリカ政府の、そしてその政府に圧力がかけたアメリカ・ユダヤ人の動向が重要であること、A民主主義といった西欧の普遍的理念をナショナリズムの根幹に据えているアメリカのシオニスト運動を対象とすることで、パレスチナ問題を西欧発の政治枠組みの問題としてとらえなおすことが可能であること、B離散の地アメリカのユダヤ人の国家、民族にまつわる複雑で錯綜するアイデンティティや立場を描くことができることであった。次にイスラエル建国によってパレスチナ・アラブ人の虐殺、難民化といったパレスチナ問題が起こり、第一次中東戦争、第二次中東戦争、第三次中東戦争、第四次中東戦争を経て、1987年にパレスチナ人の民衆蜂起であるインティファーダが起こって、中東和平プロセスが始まり、それがとん挫するまでを扱う。最後にパレスチナ問題の解決や安定的秩序形成にあたってのオールタナティブについて考えたい。 |