日本法制史

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
日本法制史
標準年次
3・4
講義題目
近世日本法制史
開講学期
前 期
担当教員
和仁 かや(WANI K.)
単位数
4単位
教  室
102
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
LAW-LAW3221J
Course Title
Japanese Legal History
Course Overview
履修条件
多少なりとも歴史史料に触れる意欲があること。日本史の前提知識は問いません。
授業の目的
 法システムが先行き不透明な激変の渦中に置かれている現在、却ってその原点を確認する作業は重要性を増しているといえます。現代に通ずるものと通じないもの、そしてそこから学びうるものは何かについて、とりわけ江戸時代当時の法文や裁判記録等の歴史史料に直接触れつつ考えてみたいと思います。

 以下、ご参考までに、昨今重視されつつある「ディプロマ・ポリシー」なるものとの関連に少々触れておきますと、

1.知識・理解及び態度・志向性の観点
  単なる「知識」「情報」の類であれば各種検索手段の発達した今日においていくらでも入手可能ですので、少なくともこの講義では重視しません(一般的な暗記の重要性は、もとより申すまでもないことですけれど)。「何が理解できたか」よりも「何が理解できていないのか」、ある歴史史料から何が読み取れるのかと同時に、読み取れないことは何か、すなわち対象の持つ制約と自分自身の限界とを自ら「正確に」踏まえる姿勢こそ、―自戒も込めて―みなさんに身につけていただきたいと思っています。

2.専門的・汎用的技能の観点
  むろん専門性や汎用性を一概に否定するものでは毛頭ありませんが、これを安易かつ徒に「お題目」とすることの弊害は、昨今の日本(に限らないのかもしれませんけれど)における大学の現状が示しているといえます。虚心坦懐に歴史史料に浸る行為は、あるいはその解毒のひとつたりうるかもしれません。
授業の概要・計画
 明治時代以降のいわゆる西洋近代法継受の前提となったにもかかわらず、兎角誤解されがちな江戸時代を中心に、「法」「制度」「秩序」がどのように構想され、いとなまれていたのかを、裁判制度をひとつの柱として論じます。また比較法史的な観点からもきわめて興味深い対象である琉球法制史についても取り上げる予定です。

 主なトピックスは以下の通りです(受講者の関心等により変更の可能性もありえます)。          
(1)法制史の課題
(2)近世の「律系法典」─法の存在形態と継受の諸相
(3)刑事裁判手続とその位置づけ
(4)刑罰制度とその思想
(5)近世琉球の法制度と裁判
(6)民事裁判手続概観
授業の進め方
 基本的に通常の講義形式です。歴史史料(こちらで準備の上配付します)にある程度じっくり触れ、史料の読解を通じて当時の人々の思考を追体験する(恐らく現代の我々にとって、これはまさに一種の異文化体験といえるでしょう)ことが一つの大きな目的ですので、前近代の文章など凡そ見たくもない、という方には少々苦痛かもしれません。ただ、「履修条件」でも示した通り、取り組む意欲さえあれば前提知識は問いませんし、質問は大いに歓迎します。
教科書・参考書等
 指定する教科書はありません。

 参考書としては差し当たり以下の二冊を挙げておき、これ以外の参考文献は授業中に紹介します。
 平松義郎『江戸の罪と罰』(平凡社、2010年(初版は1988年))
 旧事諮問会編『旧事諮問録(上)(下)』(岩波書店、1986年)
成績評価の方法・基準
 試験により評価します。場合によっては講義中に小レポートを書いていただくこともありえます。
 評価に際しては、「授業の目的」や「授業の進め方」で示したことと連動しますが、史料が示すような当時の思考がどれだけ自らの言葉で再構成できているか、また自分自身で追体験しようとしているかを重視します。
その他(質問・相談方法等)
講義終了後、及びオフィスアワーに受け付けます。
事前/事後学修