法政基礎演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習
標準年次
2
講義題目
ドイツ法思想史入門
開講学期
前 期
担当教員
城下健太郎  (SHIROSHITA K.)
単位数
2単位
教  室
三会
科目区分
入門科目
使用言語
Japanese
科目コード
LAW-LAW1911J
Course Title
Introductory Seminar on Legal and Political Studies
Course Overview
Intrtoduction to the history of German legal thought
履修条件
 とくにありませんが、難解な本の読解(場合によっては「解読」)を行いますので、ひとつひとつの文章の意味をじっくり考えるのが苦にならないことが望ましいかと思います。
 思想や哲学に関心がある方の参加を歓迎します。
授業の目的
○法政基礎演習の共通目標
 この授業科目は、少人数のゼミ形式により、2年次から本格的に始まるより高度な学習へ向けての橋渡しの教育を行う目的で開講されるものです。具体的には、(1)リサーチ・分析能力、(2)ディスカッション・プレゼンテーション能力、(3)レポート・論文作成能力、という、将来どのような進路をとっても必ず要求される能力の伸張を目指しています。

○本演習の目的
 上記の目標に加えて、以下のことをより重視します。
 ・「自由」や「民主主義」などの概念についての理解を深め、自分なりの意見をもつようになること
 ・テキストの講読を通じて、著者の立場や意見を正しく理解することができるようになること
 ・高年次の学習にとって必要な「とっつきにくい学術書」の読み方を身に着けること
授業の概要・計画
〈授業の概要〉
 現代の民主主義的法治国家は、それが比較的安定して確立した国でも、私たちの自由を保証することについては機能不全にあるとしばしば言われています。国民は民主主義をより徹底することを求めているのに、現実政治の状況は満足できるような状況にはないようです。こうした機能不全が議会制や政治の手続の腐敗に由来すると言い切ってしまうのではなく、民主主義とは何かを根本から考えてみることで、現在の国家・政治・法のあり方を本演習では探ることにします。
 その手がかりとして、民主主義の「危機」の時代としてヴァイマル期ドイツの法思想を検討します。さしあたり、今なお憲法学に重大な影響を与えている著名な二人の国法学者である、ハンス・ケルゼン『民主主義の本質と価値』(原著1929年)とカール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』(原著1923年)を購読します。ケルゼンは民主主義を自由と結びつけながら擁護しており、シュミットは民主主義と自由を切断しつつ、独裁すらも民主主義の対立物ではないとします。二人の民主主義理解の対決を考察しつつ、あわせて現在の民主主義的法治国家を支える様々な諸原理・諸概念について学習する足がかりにしてもらえれば、と考えています。
 以上の2冊を毎回、範囲を区切って報告担当者を決めながら少しずつ読んでいきます。担当者による報告が済んだ後は、参加者に分からない箇所や矛盾点、自分と報告者との意見の食い違いなどを自由に議論してもらいます。議論の方法は「授業の進め方」を見てください。
(※今回読むことになるこの2冊は、皆さんが普段読んでいるであろう図書よりもかなり難解であることが予想されます。学術書を読むための技法については教員が適宜説明していきますが、分からない言葉などの「調べ物」といった皆さんの主体的な参加が必要ですのでご注意ください。)
 毎回の授業は以上のようなものですが、それに加えて本演習では、自分自身でテーマを選んでもらいレポート(3000〜5000字程度)を作成してもらうつもりです。テキスト読解が完了した後でレポートの書き方(アカデミックライティング)について詳しく説明します。

〈授業の計画〉
 授業の計画は以下のとおりです。(あくまで予定ですので、参加者の方の理解度や要望に応じて柔軟に変更していきます)。
 第1回 オリエンテーション 自己紹介、レジュメ作成や文献読解の方法の説明
 第2回〜第7回 ケルゼン『民主主義の本質と価値』の購読
 第8回〜第13回 シュミット『現代議会主義の精神史的状況』の購読
 第14回 まとめ(両者の比較)
 第15回 レポートのテーマ設定とアカデミックライティングの説明
 なお、授業外では、毎回の授業前に参加者全員がテキストの指定範囲(1回20〜30頁ほど)を読んでおくことを求めます。
授業の進め方
 演習形式の講義ですので受講者の皆さんに主体的に参加・議論してもらうことが前提の上で、次のように授業を行っていきます。
 初回授業時に参加者の皆さんと相談してテキストの報告箇所の割り振りを行います。参加者の人数によりますが、各自、必ず一回以上は報告するものと考えていてください。また、このとき全員にコメントカードを配布しますので、予習としてテキストを読む際に疑問点や意見などをそれに書き込んでもらい、次回に持参してもらいます。
 2回目以降のゼミでは報告者にレジュメ(要約)を作成してもらい、20〜30分ほど報告してもらいます。なお、後に質疑応答に移るので報告者には分からない用語などを調べておく必要があります。報告終了後、議論に移りますが、参加者全員にコメントを出してもらい、報告者に答えてもらいます。このとき、報告者以外も傍観者にならないようにコメントカードにもとづいて意見を提示することを求めます。(参加者は一度は必ず意見を述べてもらいます。)
 議論が尽くされた後、報告者に担当箇所での著者の主張をもう一度まとめてもらって、次回以降の議論につなげていきます。また、次回予習用にコメントカードを配布します。
教科書・参考書等
・使用するテキスト
 ハンス・ケルゼン『民主主義の本質と価値』長尾龍一・植田俊太郎訳、岩波文庫、2015年、660円+税。
 カール・シュミット『現代議会主義の精神史的状況』樋口陽一訳、岩波文庫、2015年(新装版、なお表紙が違うだけの旧版の2006年版でもよい)、600円+税。

・参考図書
 G・ライプホルツ他『二〇世紀における民主制の構造変化』竹内重年訳、木鐸社、1983年。
 H・ヘラー『ドイツ現代政治思想史』安世舟訳、御茶の水書房、1989年。
成績評価の方法・基準
 成績評価は、報告内容、議論への参加度とその内容、コメントカードの内容およびレポートを総合的に判断します。
 なお、テキスト読解能力および意見の応答能力の養成を目的としていますので、議論への参加と発言内容を特に重視します。
その他(質問・相談方法等)
 ゼミ運営の必要上、無断遅刻・欠席を禁止します。連絡などなけれは、その後の参加を認めませんのでご注意ください。
 なお、質問・相談は授業の前後のほか、研究室在室中ならば受け付けますので気軽にお尋ねください。
事前/事後学修