刑事訴訟法演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
刑事訴訟法演習
標準年次
3・4
講義題目
刑事訴訟法の現代的課題
開講学期
通 年
担当教員
豊崎 七絵 (TOYOSAKI N.)
単位数
4単位
教  室
303
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
LAW-LAW3911J
Course Title
Seminar in Criminal Procedure
Course Overview
This seminar will discuss and examine various issues in Japanese criminal procedure.
履修条件
 刑事訴訟法についての予備知識はまったく問わないが、このゼミを通して、刑事訴訟法を深く勉強してみたいという志を持つ者。ゼミは学生が主体となって創り上げるものなので、毎回の出席はもちろん、ゼミ仲間との議論やゼミ運営にも積極的に参加すること。

※このゼミには、毎年、多様な人が参加しています。なるほど法科大学院志望者も毎年おりますが(卒業生にはそれぞれ裁判官、検察官、弁護士になった人もいます)、公務員や民間企業、大学院(研究者志望)に進む人もいます。法学系のゼミはもちろんのこと、政治学系のゼミとかけもちしている人もいます。21世紀プログラム生、転学部生、留学生もいます。多様な人の参加を得て、ゼミでの議論も多角的になり、深まります。

※サブゼミ生、オブザーバーも歓迎です。ただし(サブゼミ生はもちろん)オブザーバーもゼミ生と同様の扱いとします。これまで「単位にならなくても、3つ目のゼミとして取りたい」ということでオブザーバーで参加してきた人たちの実質はオブザーバー(傍聴者)でなかったのはいうまでもありません。

※刑事訴訟法の講義の標準年次は3・4年次のため、現2年生の人は刑事訴訟法についてイメージがわきにくいかもしれません。下記の「授業の概要・計画」の欄に「最近のゼミの概要」を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。冒頭で書いた通り、知識の多さは全く問いません。
授業の目的
 刑事訴訟法の目的・意義を理解した上で、日本の刑事訴訟の現代的課題をとらえること。
授業の概要・計画
 解釈論上の基本的問題を理解しながら、現代の刑事手続が直面する課題についても、検討を深めたい。また各自の「個人技」に止まらず、議論を充実させたい。
 そこで前期では、@捜査、A公訴、B公判、C証拠法、D上訴・再審という手続の段階・流れに沿って、それぞれの基本的問題を検討する。もちろん、たとえば捜査といっても多くの問題があり、そのすべてを検討することは不可能なので、各参加者において関心のあるテーマを中心に、参加者の年次や学習状況、そして教員のアドバイスも踏まえつつ、相談して決めたい。また複数の手続段階にまたがるテーマについても、希望に応じ、適宜取り上げる。
 後期では、一つの再審事件もしくは1990年代以降の立法問題を共通素材とした検討を行う。
 再審事件を共通素材とする場合の具体的イメージについては、後述の「最近のゼミの概要」のうち、2007年度〜2012年度の後期に関する記述を参照のこと。再審とは有罪判決確定後の誤判救済手続のことである。再審事件は捜査に始まる手続をすべて経ているものであるから、再審事件を検討するということは、再審それ自体の問題はもちろん、捜査や証拠法をはじめ、刑事手続の問題を総合的かつ批判的に考察することができる。
 1990年代以降の立法問題を共通素材とする場合には、直近の刑訴法改正案はもとより、通信傍受(盗聴)、被害者関連立法、被疑者国選弁護制度、裁判員制度、公判前整理手続、公訴時効の廃止等々、検討対象の候補は多い。取り上げ方(何か一つを深く検討するか、複数を総合的に検討するか)は要相談であるが、いずれにしても「日本の刑事手続はこれからどこに向かおうとしているのか」という問題意識をもって取り組みたい。
 初回のゼミの時間に前期ゼミの計画を相談する。そこで各自、@捜査、A公訴、B公判、C証拠法、D上訴・再審、それぞれについて検討したい基本的問題を、少なくとも1つ(すなわち計5つ)考えてきて報告すること(例:C証拠法については、自白の任意性を検討したい)。
 また後期の計画も前期のうちに立てるので、検討したい再審事件と立法問題について考え、初回のゼミで報告すること。
 新3年生もできるだけ考えて、初回のゼミで報告してください。

☆☆☆

 参考までに、以下、これまでのゼミの概要を紹介する。

〇2015年度
 前期では、各自の問題関心に沿って様々なテーマ(逮捕に伴う捜索・押収、科学的証拠、接見交通権、犯罪報道、公訴権濫用論、裁判員制度に関する諸問題)を取り上げて検討した。後期では、刑事訴訟法改正案(取調べの録音・録画制度、身体拘束、被害者・証人保護、刑事免責、捜査・公判協力型協議・合意制度、通信傍受)を全員で検討している。
 なお9月にはゼミ旅行@壱岐、10月には検察庁見学、12月には裁判員経験者へのインタビューをそれぞれ実施した。

○2014年度
 前期では、各自の問題関心に沿って様々なテーマ(取調べの可視化、取調べ受忍義務、接見交通、おとり捜査、被告人の裁判員裁判選択権、別件逮捕・勾留、所持品検査の限界、刑事免責、違法収集証拠排除法則、公訴権濫用論、勾留)を取り上げて検討した。また2014年3月27日に死刑および拘置の執行停止ならびに再審開始が決定された袴田事件について、弁護人の方にインタビュー調査を行った。
 後期では、裁判員制度を共通の検討素材として、様々な角度から検討している。
 なお9月にゼミ旅行@沖縄も行った。

○2013年度
 前期・後期ともに、各自の問題関心に沿って様々なテーマを取り上げて検討した。具体的には、違法収集証拠排除法則、取調べ受忍義務、裁判員裁判にかかる問題(裁判員の負担、控訴審、量刑)、被害者参加制度、取調べの可視化、接見指定、伝聞法則、秘密交通権、現行犯逮捕、即決裁判手続、科学的証拠、公判前整理手続などである。また元裁判官や元検察官へのインタビュー調査、検察庁見学も行った。

〇2012年度
 前期では、各自の問題関心に沿って様々なテーマ(任意捜査と強制捜査、おとり捜査、取調べ受忍義務、弁護人の役割、必要的弁護制度、自白法則、裁判員制度における控訴審のあり方)を取り上げて検討した。また弁護人の役割を深く考察するため、死刑求刑事件の弁護について経験豊富な弁護士の方にインタビュー調査を行った。
 後期では、袴田事件(再審請求事件)を具体的素材として、接見交通、証拠法・事実認定、再審に関する問題をより深く検討した。さらに、同事件弁護人のインタビュー調査も行った。

○2011年度
 非開講。

○2010年度
 前期では、各自の問題関心に沿って様々なテーマ(黙秘権、被害者参加制度、公訴権濫用論、公訴時効、刑事弁護人の役割、代用監獄(代用刑事施設)、量刑事実の証明、取調べ受忍義務、証拠開示、再審)を取り上げて検討した。
 後期は名張事件(再審請求事件)を取り上げる予定であったが、担当教員の産休のため、これに代替する夏期集中ゼミとして、ゼミ論文の検討会を行った。

○2009年度
 前期では、各自の問題関心に沿って様々なテーマ(任意捜査と強制捜査、被疑者取調べ、国家訴追主義・起訴便宜主義、証拠法一般、補強法則、情況証拠による事実認定、再審)を取り上げて検討した。
 後期では、和歌山カレー事件(再審請求事件)を具体的素材として、鑑定、情況証拠による事実認定、黙秘権、そして犯罪報道に関する問題をより深く検討した。さらに、和歌山カレー事件と同様に自白等の直接証拠が一切なく、また足利事件と同じ方法のDNA鑑定が問題となった飯塚事件(再審請求事件)についての講演会、インタビュー調査を実施した。また美祢社会復帰促進センターの参観(武内ゼミと合同)も行った。

○2008年度
 前期では、各自の問題関心に沿って様々なテーマ(刑事訴訟法の歴史的展開、国民性論、適正手続、公訴権濫用論、起訴便宜主義、裁判員裁判、証拠開示、違法収集証拠排除法則)を取り上げて検討した。
 後期では、布川事件(2011年5月再審無罪判決〔確定〕)を具体的素材として、違法捜査・自白の任意性ならびに補強法則・事実認定論に関する問題をより深く検討した。本件再審請求人の方と弁護人の方による講演会、インタビュー調査を実施した。またゼミ旅行(呼子・唐津・古湯温泉)も行った。

○2007年度
 前期(ゼミ合宿@壱岐を含む)では、@刑事手続に関する全般的な問題状況を検討した上で(秋山賢三『裁判官はなぜ誤るのか』や映画「それでもボクはやってない」等を参考とした)、A手続関係者(裁判官、検察官、弁護人)に関する問題を取り上げ、またB刑事手続の流れ(捜査→公訴→公判→上訴)に沿って様々なテーマを検討した。
 後期では、鹿児島・志布志事件(2007年2月一審無罪判決〔確定〕)を具体的素材として、捜査、自白の任意性・信用性、そして犯罪報道に関する問題をより深く検討した。本件の元被告人の方と弁護人の方による講演会、インタビュー調査も実施した。
授業の進め方
 検討対象となったテーマについてのグループ報告ないし個人報告を踏まえた、ゼミ参加者全員による議論。
 報告者は事前にレジュメを用意すること。報告者以外の者もレジュメを参考にして、疑問点や自分の意見を整理して議論にのぞむこと。
 なお以上の日常的活動のほかに、ゲストスピーカー(実務家、研究者等)の招待や施設参観を行うこともある。
教科書・参考書等
 教科書等については第一回目の講義で指示する。検討対象となったテーマに関連する参考文献については適宜紹介する。
成績評価の方法・基準
 平常点(出席状況、報告内容、議論への参加態度等)とゼミ論との総合評価とする。
 無断欠席・正当な理由のない欠席は一切認めない(無断遅刻・正当な理由のない遅刻ももちろん同様)。
その他(質問・相談方法等)
 質問等については、豊崎にメールで連絡して下さい(アドレスは @law.kyushu-u.ac.jp の前に nanae を付加)。
事前/事後学修