パレスチナ問題は、中東のパレスチナという地域にヨーロッパのユダヤ人が1948年に国家を建設したことによって、パレスチナのアラブ人が虐殺、追放され、以降自らの国家をもてず過酷な状態に置かれることになった問題であった。このパレスチナ問題の発生にあたってはファクター、アクターとしてのアメリカが重要だった。パレスチナでのユダヤ人国家建設を目指したシオニスト運動は、500万人を擁するアメリカ・ユダヤ社会の支持を勝ち取り、アメリカ政府へ圧力をかけられるかどうかに目標達成の成否がかかっていたのである。シオニスト運動は第二次世界大戦期のホロコーストを背景にアメリカ政府のパレスチナにおけるユダヤ人国家建設の支持を勝ち取ることに成功し、戦後のパレスチナをめぐる国際政治は、これを背景に展開していくことになる。結局複雑な過程を経て1948年5月にパレスチナ・アラブ人の国家は建設されないまま、ユダヤ人国家イスラエルのみが独立を果たすことになる。本講義では、パレスチナ問題に至る、アメリカの政治動向と政策を、圧力団体であるアメリカ・シオニスト運動に着目して検証していきたい。 |