刑事政策演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
刑事政策演習
標準年次
3・4
講義題目
犯罪現象とその周辺
開講学期
通 年
担当教員
武内 謙治(TAKEUCHI K.)
単位数
4単位
教  室
206
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
LAW-LAW3911J
Course Title
Seminar on Criminology and Criminal Policy
Course Overview
This seminar discuss and examine various theoretical and "real" issues in japanese criminal policy.
履修条件
 「QはVの胸部を刃渡り20cmの刺し身包丁で刺し、もってVを死に至らしめた。」
 「この事例に関連する問題について考えよ」といわれた場合にみなさんが考えるのは、次のようなことではないでしょうか。
(1)「Qの行為には、どのような犯罪が成立するのか(しないのか)」、「(既に法律に書かれている条文を前提として)犯罪が成立するためにはどのような要件が必要か」、「Qの行為はその要件にあてはまるか」、「そうするとどのような刑罰が科されることになるのか」。
(2)「Qを有罪と認定するためにはどのような手続によるのか」、「Qの行為を『犯罪』として認定するためにはどのような証拠を使わなければならないのか」、「反対にどのような証拠を使ってはならないのか」、「Qの裁判に誤りがある場合、どのような措置がとられるべきか」。
(3)「Qに刑罰が科されるとして、その内容はどのようなものなのか」、「その刑罰には(どのような)効果があるのか」、「それは本質的な問題の解決になっているのか」、「Qが未成年者であったり、高齢者であったり、障がいがあったりする場合、何か扱いが変わるところがあるのか」、「そもそも、なぜ犯罪は起こるのか」、「そもそも刑法とか刑罰はなぜ存在しているのか」。

(1)の問題をしっかり勉強したい人は、刑法ゼミへ。
(2)の問題をみっちり勉強したい人は、刑事訴訟法演習へ。
(3)のような問題が気になってしかたがないという人は、このゼミ(か土井ゼミ)へどうぞ。

 「刑事政策」のあり方を考えるにあたっては、「…で実際のところどーよ」ということを自分のカラダとアタマを使って確かめることがとても重要です。現時点における刑事法(学)や刑事政策(学)に関する知識の多寡は全く問いませんし、将来の進路も問いませんが、ゼミに入った後は、相応に時間をかけて学修することを求めます。やる気満々で来てください!
 この授業を受けたいという方は、春休みの間に、裁判を傍聴しておいて下さい(裁判員でもそうでなくても可。できれば複数回)。
授業の目的
このゼミの目標は、次の通りです。
(1)自分で問題を発見する能力の獲得
(2)文献調査・社会調査の遂行能力(「事実」にアクセスするための能力)の向上
(3)犯罪学・刑事政策学・刑事法学に関する基本的な知識の獲得
(4)自己表現能力(口頭発表、文章作成を論理的・説得的に行う技術と能力)の向上
授業の概要・計画
(1)授業のテーマ
 ゼミのテーマは参加者全員による話し合いで決定します。扱うテーマは、基本的には、「犯罪・非行」や「刑罰・制裁」に関連しそうな問題であれば「なんでもあり」です(刑事政策や犯罪学だけにとどまらず、刑法や刑事訴訟法を含めた刑事法全般にまで広がりのあるテーマも、当然含まれます)。そもそも「逸脱」とされる社会現象は、法律だけでなく医療や福祉など他の領域の問題にもつながっているのが普通ですので、幅広い問題関心をもっている方に参加頂ければ、お互い実りが多くなるのではないかと考えています。
 参加希望者は、春休みに自分で(裁判員)裁判を傍聴して、ゼミで踏み込んで検討したいテーマを考えてきてください!
 参考までに、過去のテーマを掲げておくと、次のようになります。

  2016年度:裁判員裁判からみる刑事政策
  2015年度:少年法の基本判例+刑事政策の最新問題
  2014年度:犯罪予防と犯罪行為者処遇の諸問題
  2013年度:刑事政策の今日的課題
  2012年度:非行・犯罪現象と刑事法的対応の再検討
  2011年度:少年法の理論と実際
  2010年度:少年事件から考える
  2009年度:刑事制裁法の再検討
  2008年度:少年非行から見た福祉と司法
  2007年度:犯罪現象への対応と刑事司法・行刑制度のあり方
  2006年度:心神喪失者等医療観察法をめぐる諸問題

(2)検討の方法
 このゼミでは、文献調査だけでなくフィールドワーク(≒「街に出る」こと)を重視しています。裁判傍聴、施設参観、当事者の方への聴き取り調査を行う他、刑事法や刑事政策に関係しそうな学外の催し物・活動・勉強会の情報も積極的に提供しています。
 こうした活動は正規の講義時間外で行うことも多くあります。また、教員主導ではなく自分たちの自発性に基づいて行ってもらうこともあります。これらの活動にも参加する意欲のある方の参加を求めます。

(3)年間計画
 詳細については、第1回目の講義の際に受講者の方と相談して決定します。
 例年、夏休みは、調査旅行に出かけています(これまでの主要な調査結果は、ゼミ論集にまとめられていますので、学生情報サロンで読んでください。概略はhttp://www.law.kyushu-u.ac.jp/~takeuchi/semi/semi.htmlでもわかると思います)。
授業の進め方
 <調査→報告→議論>を繰り返しながら問題の発見と調査を発展させていくというのが、このゼミの基本的な進め方です。
 報告担当者には、文献・社会調査に基づいて(グルーピングを行った場合には、さらにサブ・ゼミを行った上で)、予め簡潔なハンドアウトを作成して頂き、プレゼンテーションを行ってもらいます。それを軸に、参加者全員で議論を行います。議論の中で新しく出てきた疑問や関連する問題については、さらに調査を進めてもらい、報告してもらいます。
 詳細については、第1回目の授業の際に、受講者の方と相談して決定します。
教科書・参考書等
(1)論理的に話したり聴いたり書いたりする能力をつけるために必ず役立つ本
(a)NHK『論理のちから』制作班、野矢茂樹監修『論理のちから』(三笠書房、2015年)(こちらの番組を全部観るというのでも代替可能[http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/ronri/])
(b)野矢茂樹『論理トレーニング[第2版]』(産業図書、2006年)
(c)名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校国語科著(執筆協力・戸田山和久)『はじめよう、ロジカル・ライティング』(ひつじ書房、2014年)

(2)フィールドワークと質的調査に役立つ本
 岸政彦=石原丈昇=丸山里美『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』(有斐閣、2016年)
 *このゼミでは、フィールドワークを行うので、春休みの間に、必ず本書を読んでおいてください。

(3)ゼミ論文を書く能力をつけてるために必ず役立つ本
(a)戸田山和久『新版 論文の教室―レポートから卒論まで』(NHK出版、2012年)
(b)石黒圭『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』(日本実業出版社、2012年)

(4)全般的な参考書
(a)法務総合研究所『平成29年版 犯罪白書』
(b)武内謙治『少年法講義』(日本評論社、2015年)

 その他の文献は、ゼミ開始後に指示します。
成績評価の方法・基準
(要件)
・授業への出席(無断・正当な理由のない欠席があった場合には単位認定を行いません)

(基準)
・報告(調査活動も含む)(40%)
・授業の準備、議論での発言(40%)
・学年度末に予定している論文の内容(20%)
その他(質問・相談方法等)
(1)参加希望者の方は、開講前に、裁判傍聴を行っておいてください。
(2)これまでゼミに参加してくれた学生さんの約半数は、国内外の大学院進学、法科大学院進学、国家公務員(法務省矯正局、保護観察官、地方更生保護委員会、裁判所職員)など刑事法や刑事政策とかかわり深い進路をとられていますが、半数くらいは公務員として自治体に就職されていたり、民間企業で働かれています。
 このゼミでの活動が、例えば法科大学院の合格や特定の官庁・企業への就職と直結することはまず考えられません。その意味で、このゼミに短期的な効用や「ご利益」は(全く)ありません!(もっとも、年1回のOGB会を含めて、ゼミ卒業生の方と交流する機会は多い方ではないかと思います。彼女/彼らが自分たちのお仕事について色々と教えてくれることはよくあります)。が、これまでこのゼミに参加してくれた学生をみていると、「急がば回れ」といわれるように、できるだけ多くの事柄を自分で直に見聞きし、物事を自分で徹底的に調査し、自分のアタマで考え、それを文章でまとめるクセ・能力を学部段階から身に付けておくことが結局短期的な効用ももたらしているのではないかという気がしています(エビデンスはありませんが)。
(3)サブゼミでの履修や4年生時からの新規受講も、もちろん歓迎します。
(4)講義担当者から選考期間中・春休み期間中に連絡をとることがあります。「志望理由書」には、メールアドレスも記入しておいてください(はっきりと、明瞭な文字で)。
事前/事後学修