日本法制史

最終更新日:2018年3月8日

授業科目名
日本法制史
標準年次
3・4
講義題目
近世日本法制史
開講学期
前 期
担当教員
和仁 かや(WANI K.)
単位数
4単位
教  室
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
Japanese Legal History
Course Overview
Lecture on japanese legal history mainly in Edo-era, including Ryukyu.
履修条件
歴史史料に触れる意欲があること。日本史の前提知識は問いません。
授業の目的
 法システムが先行き不透明な激変の渦中に置かれている現在、却ってその原点を確認する作業は重要性を増しているといえます。現代に通ずるものと通じないもの、そしてそこから学びうるものは何かについて、江戸時代当時の法文や裁判記録等の歴史史料にも直接触れつつ考えてみたいと思います。

 以下参考までに、昨今重視されつつある「ディプロマ・ポリシー」なるものとの関連に少々触れておきますと、

1.知識・理解及び態度・志向性の観点
 単なる「知識」「情報」の類であれば各種検索手段の発達した今日いくらでも入手可能ですので、少なくともこの授業では重視しません(一般論として暗記が重要であるのは、もとより申すまでもありませんが)。「何が理解できたか」よりも「何が理解できていないのか」、ある歴史史料から何が読み取れるのかと同時に、読み取れないことは何か、すなわち対象の持つ制約と自分自身の限界とを自ら「正確に」踏まえる姿勢こそ、―自戒も込めて―みなさんに身につけていただきたいと思っています。

2.専門的・汎用的技能の観点
 むろん専門性や汎用性を一概に否定する意図は毛頭ありませんが、これを安易かつ徒に「お題目」とすることの弊害は、昨今の大学の現状が示しているといえます。虚心坦懐に歴史史料に浸る行為は、あるいはその解毒のひとつたりうるかもしれません。
授業の概要・計画
 明治時代以降のいわゆる西洋近代法継受の前提となったにもかかわらず、兎角誤解されがちな江戸時代を中心に、「法」「制度」「秩序」がどのように構想され、いとなまれていたのかを、裁判制度をひとつの柱として論じます。また比較法史的な観点からもきわめて興味深い対象である琉球法制史、そして箱崎最後の授業ということで、この地で培われた関連する学問史にも触れる予定です。

 主なトピックスは以下の通りです(順不同、なお受講者の関心等により変更の可能性もありえます)。          
(1)近世の「律系法典」─法の存在形態と継受の諸相
(2)刑事裁判手続とその位置づけ
(3)刑罰制度とその思想
(4)民事裁判手続概観
(5)「債権」をめぐる諸問題
(6)九州帝国大学における学問基盤―歴史資料の保存と活用の一例―
(7)近世琉球の法制度と裁判
授業の進め方
 基本的に通常の講義形式です。歴史史料(こちらで準備の上配付します)にある程度じっくり触れ、史料の読解を通じて当時の人々の思考を追体験する(恐らく現代の我々にとって、これはまさに一種の異文化体験といえるでしょう)ことが一つの大きな目的ですので、前近代の文章など凡そ見たくもない、あるいは直ちに結論めいたものが欲しい、という方には苦痛かもしれません。ただ、「履修条件」でも示した通り、取り組む意欲さえあれば前提知識は問いませんし、質問は大いに歓迎します。
教科書・参考書等
 指定する教科書はありません。
なお概説書・教材本の類を参照するのであれば、少なくとも本授業との関係では、まずは「前世紀に出版されたもの」(むろん玉石混淆ではありますが)に限定して下さい。

 参考書としては差し当たり以下の三冊を挙げておき、これ以外の文献は授業中に適宜紹介します。
 旧事諮問会編『旧事諮問録(上)(下)』(岩波書店、1986年)
 平松義郎『江戸の罪と罰』(平凡社、2010年(初版は1988年))
 金田平一郎『近世債権法』(法務庁資料統計局資料課、1948年/
     国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可
         http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1281220)
成績評価の方法・基準
 試験により評価します。場合によっては授業中に小レポートを書いていただくこともありえます。
 評価に際しては、「授業の目的」や「授業の進め方」で示したことと連動しますが、史料が示すような当時の思考がどれだけ自らの言葉で再構成できているか、また自分自身で追体験しようとしているかを重視します。
その他(質問・相談方法等)
講義終了後、及びオフィスアワーに受け付けます。
事前/事後学修