国際政治学演習

最終更新日:2017年11月24日

授業科目名
国際政治学演習
標準年次
3・4
講義題目
国際人権ガバナンス
開講学期
通 年
担当教員
大賀 哲(OGA T.)
単位数
4単位
教  室
三会
科目区分
入門科目
使用言語
JPN & ENG
科目コード
Course Title
International Relations Seminar
Course Overview
This seminar will discuss theories and practices of international human rights governance in the realms of international and transnational relations. The focus will be given to research and its outputs in English. Student will decide the research theme, produce a research design, conduct research, and write and present a paper.
履修条件
以下の1)〜3)をすべて満たすことを履修条件とします。

1)法学部展開科目「国際政治学T・U」を本演習と併せて履修すること(2017年度以前開講の「国際政治学」を履修済みである場合はこの限りではありません)。

2)演習にはPC持参で参加すること(「PC」とは、アプリケーションやファイル等を自由にダウンロードできる端末という意味です)。

3)前期は英語/日本語ミックスで、後期は英語で授業を行いますので、英語でゼミを行うことに抵抗のない方(現時点での英語力は問いません)。

※ サブゼミ(選択科目)としての履修を希望する場合は、2月末日までに履修を希望する理由を付して教員までメールしてください(メールアドレスは下記「その他」欄参照)。なおこのゼミでは、上記履修条件を満たす限り、学府・学部・課程の別なく履修申し込みを受け付けています。
授業の目的
このゼミの目的は、国際学会や国際セミナー等で英語で研究報告を行うこと、そのために必要なリサーチ能力、論理的思考能力、プレゼンテーション能力、議事進行能力などを修得することです。

以下、1)〜3)でこの授業の対象である国際人権ガバナンスについて、4)〜9)でこの授業の目的について詳述します。

【国際人権ガバナンス】
1)各々の主権国家が自由に国内法を定めて人権を保障するという19世紀から20世紀前半までに制度化された伝統的な人権保障とは異なり、国連システム及び関連する国際レジームの下で20世紀後半に確立された国際人権システムは、国際人権条約や国際的な監視メカニズムを与件として、国際人権基準と整合的な(又は整合的であることが期待される)国内法を通じた人権保障を模索してきました。

2)しかし、人権保障の実質的な担い手は各主権国家(国内法)であることから、普遍的な人権システムを国際的にしかも安定的に維持・運営・管理することは容易なことではなく、国際レジームやガバナンスを通じた利害調整や枠組み作りが行われてきました。国際政治学においてレジームとは、「明示的又は黙示的な原則・規範・ルール・意思決定過程の集合」(Krasner 1983)と定義され、ガバナンスとは「政府なき統治(governance without government)」、すなわち世界政府なき国際社会における国家・国際機関・その他の非国家主体(企業・NGO・市民社会)による多元的な問題解決枠組みを意味しています。したがって国際人権ガバナンスとは、人権領域における国家・国際機関・その他の非国家主体等の多元的な問題解決枠組みと、そのなかで維持・運営・管理される原則・規範・ルール・意思決定過程などを指しています。

3)英語圏における人権研究は学際的な研究分野であり、法学の一分野としての狭義の人権研究と、社会科学の方法論を用いて社会現象・社会政策として人権を考察する広義の人権研究(政治学・経済学・経営学・教育学・社会学・人類学等からのアプローチが含まれます)とが並立しています。このゼミでは両者を俯瞰しながら、政治学・国際政治学における人権研究について考察していきます。とくに国家間関係(外交)の中で人権がどのように位置づけられうるのかという「国際政治学/国際関係論」の視角、国連などの国際機関において人権ガバナンスがどのように機能しているのかという「国際機構論」の視角、企業や市民社会の、とくにその国境を越えた活動において人権問題がどのように顕在化し、問題解決が図られているのかという「トランスナショナル関係論」の視角をそれぞれ学んでいきます。

【授業の目的】
4)以上のような国際人権ガバナンスの理論と実践を対象とし、このゼミでは研究テーマごとにプロジェクトを組み、英語で研究報告をすること、及びそのための知見・技能・方法論などを修得することを目的としています。

5)研究設計→先行研究のサーベイ→研究課題の明確化→独自性の提示→リサーチ→方法論の選択→データ分析→論文執筆→研究報告(プレゼンテーション)という一連の作業は最も創造性が必要とされる活動です。個別テーマの研究報告を通じて、国際人権ガバナンスについての理解を深め、問題解決の方法を検討します。

6)最終的には国際会議や国際セミナーで研究報告することが目標です。教員側からは知見と方法論を提供し、学生はテーマごとにプロジェクトを組み研究を行うというのが基本的な流れです。

7)この目的を達成するために、プロジェクトごとのリサーチを行います。また、前期は模擬国連、後期は英語の原書講読(大学院CSPAコースとの合同授業になります)を行って、問題の理解を深めていきます。

8)ゼミ履修者の人数及び研究テーマにも拠りますが、ソウル大学(韓国)、マラヤ大学(マレーシア)、アテネオ・デ・マニラ大学(フィリッピン)、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)、国連社会開発研究所(スイス)などでの合同セミナーを予定しています。

9)福岡国際法律事務所でラギー・フレームワーク(国連・ビジネスと人権に関する指導原則)についての研究会を、基幹教育院の稲葉美由紀先生とSDGs(国連持続可能な開発目標)の勉強会を行っているので、ゼミの中でも関連した研究者・実務家の方をゲスト・スピーカーとしてお招きする予定です。またオックスフォード大学のイアン・ニアリー教授(専門は日本の部落問題)が来年度前期に九大滞在予定なので、ニアリー教授のゲスト・スピーカー回もゼミの中で企画する予定です。

【ルーブリック】
以上をルーブリックに即して言うと次のようになります。
◆知識・理解:国際人権ガバナンスの理論や事例を知識として理解していること
◆専門的技能:理論に基づいて仮説をたて分析する能力、理論命題や仮説について特定の方法を用いてその妥当性を検証する能力を得ること。
◆汎用的技能:問いを立て、仮説を立て、特定の理論や方法を用いてその妥当性を判断するなど、研究設計に基づいて分析する能力を得ること。
◆態度・志向性:研究設計に基づいて事象の分析を行うという態度(とくに仮説と根拠をもって分析を行う態度)を培うこと。
授業の概要・計画
【前期】
前期は模擬国連を行います(児童労働、国内人権機関、ビジネスと人権、の3つのテーマを取り上げます)。事前準備は日本語、資料は概ね英語、模擬国連そのものは英語で行う予定です。
1 国際人権制度についての導入
2 国際人権制度についての導入
3 国際人権制度についての導入
4 模擬国連の説明
5 模擬国連(児童労働)
6 模擬国連(児童労働)
7 模擬国連(児童労働)
8 模擬国連(国内人権機関)
9 模擬国連(国内人権機関)
10 模擬国連(国内人権機関)
11 模擬国連(ビジネスと人権)
12 模擬国連(ビジネスと人権)
13 模擬国連(ビジネスと人権)
14 リサーチ・ミーティング
15 予備日

【後期】
後期は英語の原書講読を行います(教科書欄参照)。大学院の英語コース(CSPA)との合同授業を予定しています。
1 人権と国際関係
2 国際人権基準
3 人権の理念と歴史
4 人権の国際的実現
5 人権の地域的実現
6 人権と文化的多様性
7 移行期の正義
8 人権と外交
9 人権と開発・NGO
10 人権と企業・LGBT
11〜14 リサーチ・ミーティング
15 予備日
授業の進め方
・「授業の概要・計画」で記載の通りです。リサーチ・ミーティングはプロジェクトごとの進捗報告で、基本的には2〜3名のグループでの報告を想定しています。

・原則として、授業の延長(18時10分を過ぎること)はしません。
教科書・参考書等
【前期】
・横田洋三編『国際人権入門』(法律文化社)
・阿部浩己他『テキストブック国際人権法』(日本評論社)

【後期】
・Jack Donnelly, Universal Human Rights in Theory and Practice (Cornell U.P.)
・David Forsythe, Human Rights in International Relations (Cambridge U.P.)
成績評価の方法・基準
ゼミ報告等についての総合評価。
その他(質問・相談方法等)
・その他質問等は、担当教員までメールでお問い合わせください(アドレスは @law.kyushu-u.ac.jp の前にtogaを付加)。
・教員のウェブサイトは以下です。
http://toruoga.net/
事前/事後学修