Course Title |
Seminar on Criminology and Criminal Policy |
Course Overview |
This seminar discuss and examine various theoretical and "real" issues in japanese criminal policy. |
履修条件 |
「QはVの胸部を刃渡り20cmの刺し身包丁で刺し、もってVを死に至らしめた。」 「この事例に関連する問題について考えよ」といわれた場合に、法学部生であるみなさんが考えるのは、だいたい次のようなことではないでしょうか。 (1)「Qの行為には、どのような犯罪が成立するのか(しないのか)」、「(既に法律に書かれている条文を前提として)犯罪が成立するためにはどのような要件が必要か」、「Qの行為はその要件にあてはまるか」、「そうするとどのような刑罰が科されることになるのか」。 (2)「Qを有罪と認定するためにはどのような手続によるのか」、「Qの行為を『犯罪』として認定するためにはどのような証拠を使わなければならないのか」、「反対にどのような証拠を使ってはならないのか」、「Qの裁判に誤りがある場合、どのような措置がとられるべきか」。 (3)「Qに刑罰が科されるとして、その内容はどのようなものなのか」、「その刑罰には(どのような)効果があるのか」、「それは本質的な問題の解決になっているのか」、「Qが未成年者であったり、高齢者であったり、障がいがあったりする場合、何か扱いが変わるところがあるのか」、「なぜ犯罪は起こるのか」、「そもそも刑法とか刑罰はなぜ存在しているのか」、「そもそも、刑法や刑罰は必要なのか」。
(1)の問題をしっかり勉強したい人は、刑法ゼミへ。 (2)の問題をみっちり勉強したい人は、刑事訴訟法ゼミへ。 (3)のような問題が気になってしかたがないという人は、このゼミへの参加をご検討ください。
現時点における刑事法(学)や刑事政策(学)に関する知識の多寡は全く問いませんし、将来の進路も問いません。しかし、ゼミ開始後は、積極的な参加と発言を求めます。やる気満々で来てください!そして、そのやる気が伝わるように、しっかりと演習参加志望書を書いてください。 |
授業の目的 |
このゼミの目標は、次の通りです。 (1)自分で問題を発見する能力の獲得 (2)文献調査・社会調査を通して「第一次情報」にアクセスする能力(「事実」にアクセスするための能力)の向上 (3)犯罪学・刑事政策学・刑事法学に関する基本的な知識の獲得 (4)自己表現能力(口頭発表、文章作成を論理的・説得的に行う技術と能力)の向上
なかでも、できるだけナマの社会的な事実に触れながら、(2)文献調査・社会調査を行い、「論証」を行う能力をつけてもらうことを重視します。 |
授業の概要・計画 |
(1)授業のテーマ ゼミのテーマは参加者全員による話し合いで決定します。 今年度から刑事政策と少年法の講義が隔年開講となります。本年度は講義の方で刑事政策が開講されますので、演習授業の前半は少年法や少年非行に関するテーマを中心に扱いたいと考えています。ただ、それはあくまで「軸」の話であり、扱うテーマは、「犯罪・非行」や「刑罰・制裁」に関連しそうな問題であれば「なんでもあり」です。そもそも「逸脱」とされる社会現象は、法律だけでなく医療や福祉など他の領域の問題にもつながっているのが普通ですので、幅広い問題関心をもっている方に参加頂ければ、お互い実りが多くなるのではないかと考えています。 現在腹案として考えているのは、次のようなテーマです。もちろん、これは現在の腹案にすぎませんので、代案も大歓迎です。
○少年法適用年齢は20歳まででよいか? ○「犯罪のおそれ」で国家はこどもを保護してよいか? ○刑罰と保護処分はどう違う? ○少年事件は裁判員裁判の対象とすべきか? ○家庭裁判所は、刑事裁判所から移送された事件を再度逆送することができるか?
(2)検討の方法 このゼミでは、文献調査だけでなくフィールドワーク(≒「街に出る」「人に会う」こと)を重視しています。裁判傍聴、施設参観、当事者の方への聴き取り調査を行う他、刑事法や刑事政策に関係しそうな学外の催し物・活動・勉強会の情報も積極的に提供します。 こうした活動を正規の授業時間外で行うことも多くあります。特に水曜日の午後は課外活動に充てることが多くあります。これらの活動にも参加する意欲のある方の参加を求めます。
(3)年間計画 詳細については、第1回目の講義の際に受講者の方と相談して決定します。 例年、夏休みは、調査旅行に出かけます。これまでの主要な調査結果は、ゼミ論集にまとめられていますので、学生情報サロンで読んでください。 |
授業の進め方 |
<調査→報告→議論>を繰り返しながら問題の発見と調査を発展させていくというのが、このゼミの基本的な進め方です。 報告担当者には、文献・社会調査に基づいて(グルーピングを行った場合には、さらにサブ・ゼミを行った上で)、予め簡潔なハンドアウトを作成して頂き、プレゼンテーションを行ってもらいます。それを軸に、参加者全員で議論を行います。議論の中で新しく出てきた疑問や関連する問題については、さらに調査を進めてもらい、報告してもらいます。 詳細については、第1回目の授業の際に、受講者の方と相談して決定します。 |
教科書・参考書等 |
【授業内容にかかわるもの】 (1)武内謙治『少年法講義』(日本評論社、2015年) (2)本庄武=武内謙治『刑罰制度改革の前に考えておくべきこと』(日本評論社、2017年) (3)法務総合研究所『平成29年版 犯罪白書』
【高年次ゼミ開始前までに必ず読んでおくもの】 (1)野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』(山川出版社、2017年) (2)野矢茂樹『論理トレーニング[第2版]』(産業図書、2006年) (3)名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校国語科著(執筆協力・戸田山和久)『はじめよう、ロジカル・ライティング』(ひつじ書房、2014年) *(1)〜(3)のうちどれか1冊は、春休み中に必ず読んでおいてください。 *時間がある人は、春休みに、NHK高校講座「ロンリのちから」[http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/ronri/]も観ておいてください。
【フィールドワーク・質的調査に役立つ本】 (1)岸政彦=石原丈昇=丸山里美『質的社会調査の方法』(有斐閣、2016年) (2)前田拓也=秋谷直矩=朴沙羅=木下衆『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年) *(1)(2)のうちどちらか1冊は、春休み中に必ず読んでおいてください。
【ゼミ論文を書く能力をつけるために必ず役立つ本】 (1)戸田山和久『新版 論文の教室―レポートから卒論まで』(NHK出版、2012年) (2)石黒圭『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』(日本実業出版社、2012年) |
成績評価の方法・基準 |
(要件) ・授業への参加(無断・正当な理由のない欠席があった場合には単位認定を行いません)、学期末のゼミ論文の提出
(基準) ・報告(調査活動も含む)(40%) ・授業への参加(授業の準備、議論での発言など)(40%) ・ゼミ論文(20%) |
その他(質問・相談方法等) |
(1)参加希望者の方は、開講までに、必ず裁判傍聴を行っておいてください。 (2)これまでゼミに参加してくれた学生さんの進路は、だいたい半分ほどが刑事法や刑事政策とかかわり深いもの(国内外の大学院進学、法科大学院進学[→弁護士、裁判官]、国家公務員[法務省矯正局、保護観察官、地方更生保護委員会、入国管理局、裁判所職員、法務局]など)、半分ほどが国家公務員(会計検査院)、地方公務員(福岡県、熊本県、福岡市、宮崎市、大分市、福津市、佐世保市など)、民間企業(金融業、製造業、報道機関など)です。 このゼミでの活動が、例えば法科大学院の合格や特定の官庁・企業への就職と直結することは、まぁ、まずは考えられません。その意味で、このゼミに短期的な効用は(全く)ありません!ただ、年1回のOGB会を含めて、ゼミ卒業生の方と交流する機会は多い方ではないかと思います。本ゼミのOGBのみなさんは人格者ですので、彼女/彼らが自分たちのお仕事や専門的な勉強の方法について教えてくれることはよくあります。 いずれにしても、このゼミは、参加者が、自分で第一次情報に直接触れ、自分で徹底的に調査し、自分のアタマで考え、それを文章でまとめる能力を身につけるための1つの「きっかけ」を提供できるにすぎません。重要なのは、参加自身の問題意識とやる気です。 (3)サブゼミでの履修や4年生時からの新規受講も、もちろん歓迎します。また、「メインゼミ」として参加を希望する方でも、他のゼミへのサブゼミ参加を推奨します。 (4)講義担当者から選考期間中・春休み期間中に連絡をとることがあります。「志望理由書」には、「携帯メールではない」メールアドレスも記入しておいてください(はっきりと、明瞭な文字で)。 |
事前/事後学修 |
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