EU法特殊講義

最終更新日:2019年5月31日

授業科目名
EU法特殊講義
標準年次
3・4
講義題目
EU法
開講学期
前 期
担当教員
伊藤 洋一(ITO Y.)
単位数
2単位
教  室
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
890720
Course Title
Special Lecture on European Union Law
Course Overview
This course provides an overview of the institutional law (institutional framework, source of law, courts and litigation system) of the European Union based on the Lisbon Treaty (actual version of the EU treaties), taking some actual problems such as Brexit into consideration.

履修条件
国際公法の講義を聴講しておくことが望ましい.
授業の目的
下記「授業概要・授業計画」参照.
授業の概要・計画
東西冷戦の終結とともに,ヨーロッパ連合は,安全保障をも視野にいれた広い権限を持つ地域的国際組織として,今や国際経済のみならず国際政治においても大きな意義を持つ存在となった.
また,ヨーロッパ統合の進展とともに,EC/EU法の重要性は増加の一途をたどっており,特に,EU法の基礎的知識は,EU加盟国の国内法理解に際しても今や不可欠となっている.ヨーロッパ法が,いかにして国内法においても重要性を獲得するようになってきたのかは,国際レベルにおける法の支配の確立事例としても極めて興味深い問題である.
近年のユーロ危機,移民危機,ポーランド・ハンガリーの権威主義体制化問題,更に2019年3月が期限となっているイギリスのEU脱退(Brexit)等,岐路に立つ欧州統合に関する話題には事欠かない.これらの「複合危機」を背景として,EUに関する報道は少なくないが,残念ながら,日本のマスコミ関係者でも,現実のEUにおける制度設計,法形成がどのようになされ,またどのように運用されているかにつき,正確な理解を持つ者は多くない.一方で,Brexitキャンペーンの際に,「ブリュッセル」が諸悪の根源であって,EUから脱退しさえすれば,全ての問題が解決するという,単純明快なポピュリストの主張が,しばしば報道されたことは記憶に新しい.ところが,Brexitを巡るその後のイギリス国内政治の混迷を見れば,「行き過ぎた欧州統合」を非難するだけで,「グローバル化」による相互依存関係が進んだ現在の世界における全ての問題が解決するわけでもなさそうである.EUが常に「非民主的」だと非難され,「ブリュッセル」だけが諸悪の根源だとする非難は本当に正しいのか,正しいとした場合,誰もが「民主的」だと認めるような制度は,どのようにすれば形成できるのか.それほどまでに「非民主的」な組織であるにも拘らず,なぜ加盟国は,イギリスの後を追って次々に脱退し,あるいはEUを直ちに廃止しようとしないのか,といった疑問が次々に浮ぶであろう.
一言で言えば,グローバル化の進展過程において,古典的な主権国家の枠を超える「民主的」な国際組織をどのように設計すべきかという大きな問題としても,EUの制度・運用の研究は重要な意義を持つのである.
以上のように,EC/EU法は,従来の古典的国際法とどのように異なるのか,加盟国の国内法との間にどのような影響関係があるのか,「民主的」な国際組織の設計はどのようなものであるべきかといった問題は,学問的にも重要な理論的問題を提起している.

本講では,上述のような近時の問題状況をも念頭に置きつつ,現行法たるリスボン条約を中心に講義を行う予定である.EU法の対象分野は,共同体管轄事項が拡張されてきた結果,今や多岐にわたっているが,EU組織法の理解は,個別のEU実体法理解のため不可欠の前提となる.本講では,EU法の総論部分にあたる組織法,具体的には,EUの機構,法源,争訟制度等について順次講じる予定である.
授業の進め方
講義形式.
教科書・参考書等
特定の教科書は使用しない(参考書等は開講時に紹介する).しかし、EUの基本条約(英語版)の参照は不可欠であるので,予めEU官報(Official Journal C 202,7.6.2016)
<http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:C:2016:202:TOC>
からダウンロードし,以下のEU条約/EU運営条約等(いずれもPDF版)を開講時に随時参照できるように準備しておくこと.
(1) Consolidated versions of the Treaty on European
(2) Consolidated versions of the Treaty on the Functioning of the European Union
(3) Protocols
(4) Declarations annexed to the Final Act
成績評価の方法・基準
筆記試験による.
その他(質問・相談方法等)
特になし.
事前/事後学修