国際政治学演習

最終更新日:2018年11月27日

授業科目名
国際政治学演習
標準年次
3・4
講義題目
国際人権ガバナンス
開講学期
通 年
担当教員
大賀 哲(OGA T.)
単位数
4単位
教  室
1研
科目区分
展開科目
使用言語
JPN & ENG
科目コード
Course Title
International Relations Seminar
Course Overview
This seminar will discuss theories and practices of international human rights governance in the realms of international and transnational relations. The focus will be given to research and its outputs in English. Student will decide the research theme, produce a research design, conduct research, and write and present a paper.
履修条件
1)法学部展開科目「国際政治学T・U」を履修済みであるか、本演習と併せて履修してください。
2)演習にはPC持参で参加してください。
3)この演習は大学院の英語コースと合同開講です。授業は基本的に英語で行いますので、英語でゼミを行うことに抵抗のない方(現時点での英語力は問いません)。
4)2019年度前期は担当教員が育児休業を取得するため、授業日程が変則的になります(第1クォーター(4・5月)は水曜3・4限で授業を行ない、第2クォーター(6・7月)は授業を行ないません)。なお後期は通常通りの時間割(水曜3限)で授業を行ないます。従いまして、以上ご了承いただける方。

※ サブゼミ(選択科目)としての履修を希望する場合は、2月末日までに履修を希望する理由を付して教員までメールしてください(メールアドレスは下記「その他」欄参照)。なおこのゼミでは、上記履修条件を満たす限り、学府・学部・課程の別なく履修申し込みを受け付けています。
授業の目的
このゼミの目的は、自身の研究内容について英語で研究報告を行うこと、そのために必要なリサーチ能力、論理的思考能力、プレゼンテーション能力、議事進行能力などを修得することです(概ね、英語圏の学部課程の授業・セミナー等で求められる程度のものを想定しています)。

以下、1)〜3)でこの授業の対象である国際人権ガバナンスについて、4)〜7)でこの授業の目的について詳述しています。

【国際人権ガバナンス】
1)各々の主権国家が自由に国内法を定めて人権を保障するという19世紀から20世紀前半までに制度化された伝統的な人権保障とは異なり、国連システム及び関連する国際レジームの下で20世紀後半に確立された国際人権システムは、国際人権条約や国際的な監視メカニズムを与件として、国際人権基準と整合的な(又は整合的であることが期待される)国内法を通じた人権保障を模索してきました。

2)しかし、人権保障の実質的な担い手は各主権国家(国内法)であることから、普遍的な人権システムを国際的にしかも安定的に維持・運営・管理することは容易なことではなく、国際レジームやガバナンスを通じた利害調整や枠組み作りが行われてきました。国際政治学においてレジームとは、「明示的又は黙示的な原則・規範・ルール・意思決定過程の集合」(Krasner 1983)と定義され、ガバナンスとは「政府なき統治(governance without government)」、すなわち世界政府なき国際社会における国家・国際機関・その他の非国家主体(企業・NGO・市民社会)による多元的な問題解決枠組みを意味しています。したがって国際人権ガバナンスとは、人権領域における国家・国際機関・その他の非国家主体等の多元的な問題解決枠組みと、そのなかで維持・運営・管理される原則・規範・ルール・意思決定過程などを指しています。

3)英語圏における人権研究は学際的な研究分野であり、法学の一分野としての狭義の人権研究と、社会科学の方法論を用いて社会現象・社会政策として人権を考察する広義の人権研究(政治学・経済学・経営学・教育学・社会学・人類学等からのアプローチが含まれます)とが並立しています。このゼミでは両者を俯瞰しながら、政治学・国際政治学における人権研究について考察していきます。とくに国家間関係(外交)の中で人権がどのように位置づけられうるのかという「国際政治学/国際関係論」の視角、国連などの国際機関において人権ガバナンスがどのように機能しているのかという「国際機構論」の視角、企業や市民社会の、とくにその国境を越えた活動において人権問題がどのように顕在化し、問題解決が図られているのかという「トランスナショナル関係論」の視角をそれぞれ学んでいきます。

【授業の目的】
4)以上のような国際人権ガバナンスの理論と実践を対象とし、英語で研究報告をすること、及びそのための知見・技能・方法論などを修得することを目的としています。

5)研究設計→先行研究のサーベイ→研究課題の明確化→独自性の提示→リサーチ→方法論の選択→データ分析→論文執筆→研究報告(プレゼンテーション)という一連の作業は最も創造性が必要とされる活動です。個別テーマの研究報告を通じて、国際人権ガバナンスについての理解を深め、問題解決の方法を検討します。

6)最終的にはセミナー等で研究報告することが目標です。教員側からは知見と方法論を提供し、学生はテーマごとにプロジェクトを組み研究を行うというのが基本的な流れです。

7)この目的を達成するために、前期はLiterature Review(先行研究の検討)、Parliamentary Debate、Policy Discussion、プロジェクトごとのリサーチを行います。後期は模擬国連、模擬裁判等を行なって問題の理解を深めていきます(これらの活動をこのゼミでは「アクティビティ」と呼んでいます)。

【ルーブリック】
以上をルーブリックに即して言うと次のようになります。
◆知識・理解:国際人権ガバナンスの理論や事例を知識として理解していること
◆専門的技能:理論に基づいて仮説をたて分析する能力、理論命題や仮説について特定の方法を用いてその妥当性を検証する能力を得ること。
◆汎用的技能:問いを立て、仮説を立て、特定の理論や方法を用いてその妥当性を判断するなど、研究設計に基づいて分析する能力を得ること。
◆態度・志向性:研究設計に基づいて事象の分析を行うという態度(とくに仮説と根拠をもって分析を行う態度)を培うこと。
授業の概要・計画
・授業は大学院英語コース(CSPA)との合同授業になります。
・前期はLiterature Review(先行研究の検討)とそれらを題材としたParliamentary Debateを行ないます。
・後期は引き続きParliamentary Debate、Policy Discussion、模擬国連、国際人権法・人道法に関する模擬裁判などを行ないます。
・履修条件に記載しているとおり、前期の授業日程がややイレギュラーなものとなります。そのため、春休み等にプレゼミ(日本語)を行なう可能性がありますが、これについては改めてご連絡いたします。
授業の進め方
・アクティビティごとに授業の進め方はかなり異なります。詳細はゼミのなかで説明します。
・2018年度はソウル大学(韓国)、アテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)、金沢大学(法学部・中野涼子ゼミ)などと合同セミナーを行ないました。
・2019年度はソウル大学、アテネオ・デ・マニラ大学とのセミナーは別の授業として立てるので、ゼミの対外的な交流活動としては金沢大学とのものが中心になると思います。合同ゼミ合宿(12月頃)とビデオ会議システムを用いた合同授業(年に数回程度)を予定しています。
・同様に、ビデオ会議システムを用いて国連ジュネーブ事務局、国連社会開発研究所(UNRISD)と遠隔でつないだ授業を予定しています。
・なお余力があれば、Kyushu Debate Open、九州サマーセッション(模擬国連)、日本模擬国連全日本大会、赤十字国際委員会国際人道法模擬裁判、ネルソン・マンデラ国際人権法模擬裁判などに参加したいと考えています。
教科書・参考書等
関連論文等はMoodle上で配布します。なおゼミのなかで基本書をじっくり輪読する時間はないと思うので、春休みに教科書レベルのもの(下記参照)に目を通しておくことを強くお薦めします。

- 横田洋三編『国際人権入門』(法律文化社)
- 阿部浩己他『テキストブック国際人権法』(日本評論社)
- Jack Donnelly, Universal Human Rights in Theory and Practice (Cornell U.P.)
- David Forsythe, Human Rights in International Relations (Cambridge U.P.)
成績評価の方法・基準
・各アクティビティについての総合評価(50%)
・前期末及び後期末のタームペーパー(50%)
※前期はテーマごとの関連論文についての書評(Review Essay)、後期は研究テーマについてのリサーチ・ペーパー(Research Paper)を課す予定です(概ね3000words程度)
その他(質問・相談方法等)
・その他質問等は、担当教員までメールでお問い合わせください(アドレスは @law.kyushu-u.ac.jp の前にtogaを付加)。
事前/事後学修