労働法演習

最終更新日:2018年11月12日

授業科目名
労働法演習
標準年次
3・4
講義題目
事例から考え、理解する労働法
開講学期
通 年
担当教員
山下 昇(YAMASHITA N.)
単位数
4単位
教  室
演習室4
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
Labor Law Seminar
Course Overview
We argue about cases of labor law by this seminar.
履修条件
 絶対条件ではありませんが、労働法の講義を履修する(履修していた)ことが望ましいのはいうまでもありません。労働法全体の基礎知識を身につけておくことにより、深い理解や活発な議論ができると思います。
 疑問に思ったことをゼミの場できちんと発言しようという意欲を持っていること(間違っていたり、見当違いの意見でもケッコウです)。
授業の目的
 労働紛争は頻繁に起こっており、将来、出くわす可能性は(不幸なことですが)、高いといえます。労働は、自己実現や人格形成、社会的関係の構築の上で非常に重要なものですが、何より経済的に生活の糧を得る手段でもあり、働く時間は、人生の中でかなりの割合を占めます。そこで、不当に職を奪われたり、賃金が未払いになったりすることがないように、最低限の働き方のルールを知っておくことは、社会を生き抜くための護身術といえます。
 労働法の学習は、条文だけでなく、判例を中心に学びます。労働の在り方(働き方)は時代によって大きく変わりますし、労働に従事する人々の意識も刻々と変化します。新しい問題(紛争事例)が生じた場合、労働法に具体的な定めがないときには、関連する法理や一般法理から新しい理論を構築し、判例を通じてルールを形成していくことになります。他の法領域でも、判例法は重要ですが、労働法は、それが顕著であり、そこに労働法を学ぶ難しさと魅力があります。
 本ゼミでは、労働法に関する判例例を読みながら、労働法の基礎的な知識からやや専門的知識までを学ぶことを目的とします。
授業の概要・計画
 労働法は、具体的な事例に対する紛争解決を目的とし、実践的な学問としての性質を有します(もちろん、理論的・体系的な学問でもありますが)。そして、事例問題の中から具体的な法的紛争を発見し、条文や裁判例を調べながら、解決していくことも、労働法を学ぶ方法の一つです。事例(労働判例の事実・判旨)に接する面白さを感じることができれば、労働法の学習は飛躍的に進歩します。
 前期は、「授業の進め方」に記載の通り、最高裁判決を読みながら、最近の労働問題の傾向を見たいと思います。基本的に、ゼミ受講者の報告を中心に進めますが、労働法の基本的な内容や関連判例は、教員のほうから、参考文献に挙げている『判例労働法入門(第6版)』に基づいてフォローします。前期は、労働法の基礎知識の定着を目標にします。
 後期は、夏休み中に、各自、自分の研究テーマを決めて(前期の最後にだいたいのテーマの確認をします)、例えば、いま困っている労働問題について、法学部以外の友人・知人や家族・親戚からリサーチして、当該テーマについて、後期の間に数回報告しながら、研究を進めることにします。
 また、労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)などの行政機関への訪問調査なども企画したいと思います。
授業の進め方
 毎回、ゼミ受講者に報告をしてもらい、議論します。
 前期は、比較的最近(直近5年くらい)の最高裁判決を検討しながら、労働法全般について勉強します。判例研究のやり方・作法・楽しみを学びたいと思います。具体的な裁判例は、適宜、シラバスで公開いたします。
 後期は、ゼミ受講者各自で、関心のある具体的なテーマを選択して、個別報告を行います。判例や統計データなどを駆使して、各自が関心を有するテーマについて、日本の現状を分析し、ときには、外国法の比較なども行いながら、検討してもらいます。具体的なテーマは、ゼミ受講者の希望を調整しながら、各自のテーマを設定します。2019年以降、働き方改革推進法が徐々に施行されますので、労働法も新しく動いていきます。
 
〈判例研究で検討する最高裁判例(例)〉
【労働時間】
●業務手当の時間外労働等に対する対価該当性
日本ケミカル事件・最1小判平30・7・19
●割増賃金を年俸に含める合意と使用者の割増賃金支払義務
医療法人社団康心会事件・最2小判平29・7・7
●歩合給から割増賃金相当額を控除する賃金規程の有効性
国際自動車事件・最3小判平29・2・28

【付加金】
●付加金請求に関する手数料の還付請求と付加金制度の目的
裁判手数料還付請求事件最3小決平27・5・19
●使用者の未払金支払と付加金支払命令の可否
ホッタ晴信堂薬局事件・最1小判平26・3・6

【解雇】
●うつ病罹患と休職期間満了後の解雇
東芝(うつ病・解雇)事件・最2小判平26・3・24
●解雇制限と打切補償
学校法人専修大学事件・最2小判平27・6・8

【賃金(賞与・退職金)】
●解雇期間中における業績連動型報酬の請求権の有無
クレディ・スイス証券事件・最1小判平27・3・5
●退職金を不利益に変更する就業規則への同意の有効性
山梨県民信用組合事件・最2小判平28・2・19

【有期労働契約】
●有期労働契約の更新上限を65歳とする取扱いと雇止めの有効性
日本郵便(期間雇用社員ら・雇止め)事件・最2小判平30・9・14
●有期契約の短大講師に対する雇止めの有効性
福原学園(九州女子短大)事件・最1小判平28・12・1

【マタハラ・セクハラ】
●勤務時間中の不適切な言動等を理由とする6か月の停職処分の有効性
加古川市(停職処分取消請求)事件・最三小判平30・11・6
●セクハラを理由とする30日の出勤停職処分の有効性
L館事件・最1小判平27・2・26
●勤務軽減措置を契機とする不利益取扱い
広島中央保健協同組合事件・最1小判平26・10・23
●ハラスメント相談窓口の設置とグループ会社の責任
イビデン事件・最1小判平30・2・15

【正社員・非正社員の格差】
●労契法20条の「不合理な労働条件」
ハマキョウレックス事件・最2小判平30・6・1
●継続雇用制度における「不合理な労働条件」
長澤運輸事件・最2小判平30・6・1
教科書・参考書等
 参考文献を挙げておきます。

@山下昇「労働法入門・事例から考え、理解する労働法」法学セミナー759号(2018年)44〜49頁
A野田進・柳澤武・山下昇『判例労働法入門(第6版)』(有斐閣、2019年4月刊行予定)
成績評価の方法・基準
 出席状況、報告(レポート)内容、討論参加状況等によって、総合的に評価します。演習での学習は毎回

 出席することが前提となりますので、出席状況は特に重視します(無断欠席はご法度ですので、どうしても欠席せざるを得ない場合は、事前に必ず連絡してください)。毎回、報告担当者がゼミ参加者に担当テーマを講義するつもりで、しっかり準備してください。
その他(質問・相談方法等)
@オフィスアワーの時間にご質問・ご相談をお受けいたします。オフィスアワー以外でもかまいませんが、その場合、十分に時間がとれない場合があります。メールでお問い合わせいただいても結構です。
@law.kyushu-u.ac.jpの前に、yamaをつけてください。

A2019年度のゼミ開始前の段階で必要に応じて連絡をとることがあります。「志望理由書」には、メールアドレス(通常の連絡が取れるもので、携帯のアドレス等)を丁寧に(わかるように)記入しておいてください。

B参考文献にあげた@を事前に読んでください。また、参考文献Aは、ゼミの際、使用します。なお、新4年生で、既に2018年前期の労働法を受講した方は、Aの第5版でも結構です。新3年生の方は、第6版を購入の上、せっかくなので、前期開講の労働法(新屋敷先生)の受講を強くお薦めします。

C2017年・2018年はゼミを開講していないため(なので、オープンゼミはありません)、ゼミの「先輩」はいませんので(卒業生にはいますが)、新しいゼミの雰囲気を作ってくれる受講者を歓迎します。
事前/事後学修