刑事政策演習

最終更新日:2018年12月7日

授業科目名
刑事政策演習
標準年次
3・4
講義題目
刑事政策、どうでしょう?
開講学期
通 年
担当教員
武内 謙治(TAKEUCHI K.)
単位数
4単位
教  室
演習室4
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
Seminar on Criminology and Criminal Policy
Course Overview
This seminar discuss and examine various theoretical and "real" issues in Japanese criminal policy.
履修条件
 このシラバスを読まれているみなさんは、次のように質問された場合、どのように答えるでしょうか。どちらかといえば(a)(b)どちらのタイプでしょうか。
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(1)刑法や刑事訴訟法をはじめとする法律科目は得意(または好き)ですか?:
(a)刑法や刑事訴訟法の学修が大好きだ。大好きすぎて、「犯罪」とか「刑罰」といった事柄を規範論(「〜べきである」で語られる議論)や観念世界だけに閉じ込めて考えることに限界を感じるようになってしまった。そのことで夜も寝られなくなってしまったので、どうにかしてほしい。
(b)刑法や刑事訴訟法をはじめとする法律学の授業になじめない。でも、「犯罪」とか「刑罰」とかいった社会的な現象のことについてマジメに考えてみたい。

(2)どのように学修するのが得意(または好み)ですか?:
(a)納得いくまで書物を紐解き、机に座って物事を考え続けるのが大好きだ。大好きすぎて、社会の現実にも触れてみたくなってしまった。この衝動を自分では止めることができないので、どうにかしてほしい。
(b)机に座ってずっとあたまで物事を考え続けるより、からだを動かす方が得意だ。人に会って話を聴くのも大好きだ。あたまに自信はないが体力には自信がある。

(3)どのような人生観をもっていますか?:
(a)明確な目的に向かって無駄なく最短距離で走ることこそが、人生において最も重要なことである。
(b)遠回りになるかもしれないが寄り道をしたり立ち止まったりしながら歩くことこそが、人生を豊かにすると信じてやまない。
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 (a)のような模範的な法学部生に参加していただければ授業担当者としていうことがありません。が、(b)のような人を排除するつもりはありません(し、本当のことをいえばそういう学生さんのこともキライではありません)。
 現時点における刑事法(学)や刑事政策(学)に関する知識の多寡は全く問いません。将来の進路も問いません。あたまのよさや要領のよさも求めません。しかし、ゼミ開始後は、積極的な参加を求めます。また、相応の勤勉さと協調性を求めます。
 とにかく重要なのは、やる気です!参加を希望される方は、やる気が読み手に伝わるように演習参加志望書をしっかりと書いてください!
授業の目的
 このゼミの目標は、次の通りです。
(1)自分で問題を発見する能力を獲得する
(2)文献調査・社会調査を通して「第一次情報」にアクセスする能力(「事実」にアクセスするための能力)を向上させる
(3)犯罪学・刑事政策学・刑事法学に関する基本的な知識を獲得する
(4)自己表現能力(口頭発表、文章作成を論理的・説得的に行う技術と能力)を向上させる

 とりわけ、できるだけナマの社会的な事実に触れながら、(2)文献調査・社会調査を行い、(4)「論証」を行う能力をつけてもらうことを、このゼミでは重視します。これらの能力は、将来の進路がどのようなものであれ(どのような仕事に就いても/就かなくても)、社会生活上の基本的なコミュニケーションをとったり、社会生活者として責任をもった発言を行ったりするために不可欠だからです。
授業の概要・計画
(1)授業のテーマ
 ゼミのテーマは参加者全員による話し合いで決定します。
 扱うテーマは、「犯罪・非行」や「刑罰・制裁」に関連しそうな問題であれば「なんでもあり」です。そもそも「逸脱」とされる社会現象は、法律だけでなく医療や福祉など他の領域の問題にもつながっているのが普通ですので、幅広い問題関心をもっている方に参加頂ければ、お互い実りが多くなるでしょう。
 「刑事政策」として扱われる代表的なテーマには、次のようなものがあります。

○少年の扱いは、大人の場合とどのように違っているのか?違った扱いをするのは合理的か?
○刑法上責任無能力とされた者は、どのように扱われるべきか?
○有罪とされた者は、刑事施設(刑務所)でどのような扱いを受けるべきか?
○保護観察に付された者は、どのような扱いを受けるべきか?
○そもそも「犯罪」とは何か?なぜ「犯罪」が起こるのか?

(2)検討の方法
 このゼミでは、文献調査だけでなくフィールドワーク(≒「街に出る」「人に会う」こと)を重視します。裁判傍聴、施設参観、当事者の方への聴き取り調査を行う他、刑事法や刑事政策に関係しそうな学外の催し物・活動・勉強会の情報も積極的に提供します。とりわけ伊都キャンパス移転後、街が遠くなってしまったので、学外で活動する機会をできるだけ多く設けたいと考えています。
 学外での活動を正規の授業時間外で行うことも多くあります。特に水曜日の午後は課外活動に充てることが多くあります。これらの活動にも参加する意欲のある方の参加を求めます。

(3)年間計画
 詳細については、第1回目の講義の際に受講者の方と相談して決定します。
 夏学期の間は、どちらかといえば「座学」中心で授業を進めます。授業担当者も、ややパターナリスティックに介入を行います。冬学期は、どちらかといえばフィールドワークなど「実技」中心で、テーマの設定や活動方法は参加者の自主性に委ねます。担当教員も、できるだけ介入しないようにガマンします。
 例年、夏休みは、調査旅行に出かけます。これまでの主要な調査結果は、ゼミ論集にまとめられていますので、学生情報サロンで読んでください。
授業の進め方
 <調査→報告→議論>を繰り返しながら問題の発見と調査を発展させていくというのが、このゼミの基本的な進め方です。
 報告担当者には、文献・社会調査に基づいて(グルーピングを行った場合には、さらにサブ・ゼミを行った上で)、予め簡潔なハンドアウトを作成して頂き、プレゼンテーションを行ってもらいます。それを軸に、参加者全員で議論を行います。議論の中で新しく出てきた疑問や関連する問題については、さらに調査を進めてもらい、報告してもらいます。
 詳細については、第1回目の授業の際に、受講者の方と相談して決定します。
教科書・参考書等
【授業内容にかかわるもの】
(1)武内謙治『少年法講義』(日本評論社、2015年)
(2)本庄武=武内謙治『刑罰制度改革の前に考えておくべきこと』(日本評論社、2017年)
(3)法務総合研究所『平成30年版 犯罪白書』

【春休み中に読んでおくべき一般書】
(1)堀川惠子『死刑の基準――「永山裁判」が遺したもの』(講談社文庫、2016年)
(2)堀川惠子『永山則夫――封印された鑑定記録 』(講談社文庫、2017年)
(3)堀川惠子『裁かれた命――死刑囚から届いた手紙』(講談社文庫、2015年)
(4)堀川惠子『教誨師』(講談社文庫、2018年)
(5)佐藤幹夫『十七歳の自閉症裁判――寝屋川事件の遺したもの』(岩波現代文庫、2010年)
(6)清永聡『家庭裁判所物語』(日本評論社、2018年)
*1冊以上読んでおくこと。

【春休み中に読んでおくべき論証に関する書籍】
(1)野矢茂樹『大人のための国語ゼミ[増補版]』(筑摩書房、2018年)
(2)仲島ひとみ『それゆけ!論理さん』(筑摩書房、2018年)
(3)野矢茂樹『論理トレーニング[第2版]』(産業図書、2006年)
(4)名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校国語科著(執筆協力・戸田山和久)『はじめよう、ロジカル・ライティング』(ひつじ書房、2014年)
*1冊以上、読んでおくこと。
*時間がある人は、春休みに、NHK高校講座「ロンリのちから」[http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/ronri/]も観ておくこと。

【春休み中に読んでおくべきフィールドワーク・質的調査遂行のための書籍】
(1)岸政彦=石原丈昇=丸山里美『質的社会調査の方法』(有斐閣、2016年)
(2)前田拓也=秋谷直矩=朴沙羅=木下衆『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年)
*1冊以上読んでおくこと。

【ゼミ論文を書く能力・報告を行う能力をつけるための書籍】
(1)戸田山和久『新版 論文の教室―レポートから卒論まで』(NHK出版、2012年)
(2)石黒圭『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』(日本実業出版社、2012年)
(3)大島弥生ほか『ビアで学ぶ大学生の日本語表現[第2版]』(ひつじ書房、2014年)
*1冊以上読んでおくこと。
成績評価の方法・基準
(要件)
・授業への参加(無断・正当な理由のない欠席があった場合には単位認定を行いません)、学期末のゼミ論文の提出

(基準)
・報告(調査活動も含む)(40%)
・授業への参加(授業の準備、議論での発言など)(40%)
・ゼミ論文(20%)
その他(質問・相談方法等)
(1)演習授業(ゼミ)に関する授業担当者の考え方は、法学教室454号(2018年)2-3頁(「学外活動(フィールドワーク)は、ほろ苦いコーヒーの味――書をもって街にも出よう」)に少しだけ書いたことがあります。これも併せて読んで頂けると、ミスマッチの危険性を小さくできるかもしれません。
(2)参加希望者の方は、開講日までに、裁判傍聴を行っておいてください。また、上記書籍を必ずを読んでおいてください。
(3)これまでゼミに参加してくれた学生さんの進路は、だいたい半分ほどが刑事法や刑事政策とかかわり深いもの(国内外の大学院進学[→研究者]、法科大学院進学[→弁護士、裁判官]、国家公務員[法務省矯正局、法務省保護局、保護観察官、地方更生保護委員会、入国管理局、検察事務官、裁判所職員、法務局]など)、半分ほどが国家公務員(会計検査院)、地方公務員(福岡県、熊本県、大分県、福岡市、宮崎市、大分市、福津市、佐世保市など)、民間企業(金融業、製造業、報道機関など)です。
 このゼミでの活動が、例えば法科大学院の合格や特定の官庁・企業への就職と直結することは、まず考えられません。その意味で、このゼミに短期的な効用は全くありません。ただ、年1回のOGB会を含めて、ゼミ卒業生の方と交流する機会は多い方ではないかと思います。本ゼミのOGBのみなさんは人格者ですので、彼女/彼らが自分たちのお仕事や専門的な勉強の方法について教えてくれることはよくあります。
 いずれにしても、このゼミは、参加者が、自分で第一次情報に直接触れ、自分で徹底的に調査し、自分のあたまで考え、それを文章でまとめる能力を身につけるための1つの「きっかけ」を提供できるにすぎません。重要なのは、参加自身の問題意識とやる気です。
(4)サブゼミでの履修や4年生時からの新規受講も、歓迎します。「メインゼミ」として参加を希望する方でも、他のゼミへのサブゼミ参加を推奨します。
(5)講義担当者から選考期間中・春休み期間中に連絡をとることがあります。「志望理由書」には、「携帯メールではない」メールアドレスも記入しておいてください(はっきりと読み取れるような明瞭な文字で)。
事前/事後学修