労働法演習

最終更新日:2019年11月23日

授業科目名
労働法演習
標準年次
3・4
講義題目
労働法の重要判例を極める
開講学期
通 年
担当教員
山下 昇(YAMASHITA N.)
単位数
4単位
教  室
2号館1階 E-101
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
  
Labor Law Seminar
Course Overview
  
We argue about cases of labor law by this seminar.
履修条件
 絶対条件ではありませんが、労働法の講義を履修する(履修していた)ことが望ましいのはいうまでもありません。労働法全体の基礎知識を身につけておくことにより、深い理解や活発な議論ができると思います。
 疑問に思ったことをゼミの場できちんと発言しようという意欲を持っていること。
授業の目的
 労働法の学習は、条文だけでなく、判例を中心に学びます。労働の在り方(働き方)は時代によって大きく変わりますし、労働に従事する人々の意識も刻々と変化します。新しい問題(紛争事例)が生じた場合、労働法に具体的な定めがないときには、関連する法理や一般法理から新しい理論を構築し、判例を通じてルールを形成していくことになります。他の法領域でも、判例法は重要ですが、労働法は、それが顕著であり、そこに労働法を学ぶ難しさと魅力があります。
 本ゼミでは、労働法に関する重要な最高裁判例を読みながら、労働法の基礎的な知識からや専門的知識までを学ぶことを目的とします。また、労働基準法、労働契約法、労働組合法等の労働法の全領域を対象とします。
 将来、労働関係の公務員(労働基準監督官、厚労省職員)、労働法関係の専門職(法曹、研究者、社会保険労務士)、民間企業の人事労務担当などを志望する学生さんの参加を募ります。もちろん、それ以外に純粋に労働法を勉強したい方も歓迎します。労働法のプロフェッショナルを目指そう。
授業の概要・計画
 労働法は、具体的な事例に対する紛争解決を目的とし、実践的な学問としての性質を有します(もちろん、理論的・体系的な学問でもありますが)。そして、事例問題の中から具体的な法的紛争を発見し、条文や裁判例を調べながら、解決していくことも、労働法を学ぶ方法の一つです。事例(労働判例の事実・判旨)に接する面白さを感じることができれば、労働法の学習は飛躍的に進歩します。
 「授業の進め方」に記載の通り、最高裁判決及び重要な高裁判決を読みながら、労働法の論点をひとつひとつ確認していきます。基本的に、ゼミ受講者の報告を中心に進めますが、労働法の基本的な内容や関連判例は、教員のほうから、参考文献に挙げている『判例労働法入門(第6版)』に基づいてフォローします。
 また、希望があれば、労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)などの行政機関への訪問調査なども企画したいと思います。労働法関係の新しい動きがあれば、適宜紹介します。
授業の進め方
 毎回、2つの判例を取り上げ、それぞれゼミ受講者に報告をしてもらい(順番に割り振ります)、議論します。各事件の【事実】と【判旨】をまとめ、教員が事前に示した質問事項を参考に、当該判例の論点や意義などを議論していきます。取扱う主な判例は、下記の通りです。また、適宜、新しい重要判決を追加していきます。 

〈判例研究で検討する最高裁判例(例)〉
【労働法上の労働者】
横浜南労基署長事件・最1小判平8・11・28
国・中労委(ビクターサービスエンジニアリング)事件・最3小判平23・4・12

【採用の自由と試用期間、採用内定】
三菱樹脂事件・最大判昭48・12・12
大日本印刷事件・最2小判昭54・7・20

【均等待遇、不合理な待遇の禁止】
広島中央保健生協(C生協病院)事件・最1小判平26・10・23
ハマキョウレックス事件・最2小判平30・6・1

【就業規則・労働条件の変更】
第四銀行事件・最2小判平9・2・28
山梨県民信用組合事件・最2小判平28・2・19

【賃金】
JR東日本事件・東京高判平29・12・13
小田急電鉄事件・東京高判平15・12・11

【労働時間@】
三菱重工長崎造船所事件・最1小判平12・3・9
大星ビル管理事件・最1小判平14・2・28

【労働時間A】
国際自動車事件・最3小判平29・2・28
医療法人社団康心会事件・最2小判平29・7・7

【休暇・休職】
時事通信社事件・最3小判平4・6・23
片山組事件・最1小判平10・4・9

【労働災害・安全配慮義務】
横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件・最1小判平12・7・17
電通事件・最2小判平12・3・24

【配転・出向】
ネスレ日本事件・大阪高判平18・4・14
新日本製鐵(日鐵運輸)事件・最2小判平15・4・18

【懲戒@】
国鉄札幌駅事件・最3小判昭54・10・30
ネスレ日本事件】最2小判平18・10・6

【懲戒A】
目黒電報電話局事件・最3小判昭52・12・13
海遊館事件・最1小判平27・2・26

【解雇】
東洋酸素事件・東京高判昭54・10・29
あけぼのタクシー事件・最1小判昭62・4・2

【雇止め・会社分割】
日立メディコ事件・最1小判昭61・12・4
日本アイ・ビー・エム事件・最2判平22・7・12

【労働組合】
エッソ石油事件・最1小判平5・3・25
三井倉庫港運事件・最1小判平元・12・14

【団体交渉@】
中労委(根岸病院)事件・東京高判平19・7・31
国・中労委(協和出版販売)事件・東京高判平20・3・27

【団体交渉A】
朝日放送事件・最3小判平7・2・28
国鉄事件・最三小判平3・4・23

【労働協約@】
朝日火災海上保険(石堂)事件・最1小判平9・3・27
朝日火災海上保険(高田)事件・最3小判平8・3・26

【労働協約A】
都南自動車教習所事件・最3小判平13・3・13
平尾事件・最1小判平31・4・25

【団体行動@】
御國ハイヤー事件・最2小判平4・10・2
丸島水門製作所事件・最3小判昭50・4・25

【団体行動A】
済生会中央病院事件・最2小判平元・12・11
ノースウエスト航空事件・最2小判昭62・7・17

【不当労働行為@】
中労委(西神テトラパック)事件・東京高判平11・12・22
日産自動車事件】最3小判昭60・4・23

【不当労働行為A】
第二鳩タクシー事件・最大判昭52・2・23
大阪府・大阪府労委(泉佐野市)事件・大阪高判平28・12・22
教科書・参考書等
参考文献を挙げておきます。

@山下昇「労働法入門・事例から考え、理解する労働法」法学セミナー759号(2018年)44〜49頁
A野田進・柳澤武・山下昇『判例労働法入門(第6版)』(有斐閣、2019年4月)
成績評価の方法・基準
 出席状況、報告(レポート)内容、討論参加状況等によって、総合的に評価します。演習での学習は毎回出席することが前提となりますので、出席状況は特に重視します(無断欠席はご法度ですので、どうしても欠席せざるを得ない場合は、事前に必ず連絡してください)。毎回、報告担当者がゼミ参加者に担当テーマを講義するつもりで、しっかり準備してください。
その他(質問・相談方法等)
@オフィスアワーの時間にご質問・ご相談をお受けいたします。オフィスアワー以外でもかまいませんが、その場合、十分に時間がとれない場合があります。メールでお問い合わせいただいても結構です。@law.kyushu-u.ac.jpの前に、yamaをつけてください。
A2020年度のゼミ開始前の段階で必要に応じて連絡をとることがあります。「志望理由書」には、メールアドレス(通常の連絡が取れるもので、携帯のアドレス等)を丁寧に(わかるように)記入しておいてください。
B参考文献にあげた@を事前に読んでください。また、参考文献Aは、ゼミの際、使用します。前期開講の労働法(新屋敷先生)の受講を強くお薦めします(履修済みの4年生は除く)。
事前/事後学修