Course Title |
Seminar on Criminology and Criminal Policy |
Course Overview |
This seminar discuss and examine various theoretical and "real" issues in Japanese criminal policy |
履修条件 |
【前提となる「刑事政策(学)」の超ざっくりとした説明】 ・「刑事政策」とは一体何かということ自体が(大)問題なのですが、法律学が「土俵を作ってそこに問題(対象)を引きつける」タイプの学問であるとすれば、刑事政策学は(ひとまず)「現にある世界に寄り添い、それをそのまま理解しようという」(その上で、現行の法制度に必ずしも囚われずにどうあるべきかを考える)学問であるということができそうです(ちなみに、これは筒井淳也『社会を知るためには』(筑摩書房、2020年)が経済学と対置して行っている社会学の特徴についての説明を拝借したものです)。要するに、これまで皆さんが学修してきた法律(解釈)学では社会事象を権利や義務といった概念で捉え、問題解決にあたり現在妥当している法律を前提に「どうあるべきか」を考えるわけですが、刑事政策学では「果たして現実はどうなっているのか」を確かめることが(ひとまず)重要になり、問題の解決が「どうあるべきか」を考える際にも必ずしも現在妥当している法律には囚われないところがあるということです(そのことで現在妥当している法制度の意義を本当に理解できるようになるということもよくあることです)。 ・「刑事政策」として扱われる代表的なテーマには、総論として「犯罪」とは何か、犯罪はなぜ起こるのか(犯罪原因)、犯罪にはどのように対応すればよいかの(犯罪対応)といったものがあります。各論としては、例えば、薬物の自己使用を処罰することに(どのような)意味があるのか、若年者や高齢者に刑罰を科すことにはどのような効果を見込めるのか、といった問題があります。【教科書・参考書等】の欄に掲げた文献を手にとってみると、概要はつかめるのではないかと思います。
【履修条件】 ・ということですので、現時点での刑事政策や刑事法に関する知識の多寡は全く問いません。むしろ、「まだ知らないことの多さ」を楽しめることの方がこのゼミでは大切です。法律学、とりわけ刑事法科目がどちらかというと苦手という方でも問題ありません。法律解釈学が大好きであったり、いわゆる「法学的思考」をとることが楽しいという方が法学部での生活がより充実したものになるとは思いますが、それがキライだ/苦手だという人を罵倒するようなことはありません。 ・ただ、堅固なやる気(だけ)はもってきてください。演習参加志望書はそのやる気が読み手に伝わるようにしっかりと書いてください。 |
授業の目的 |
・上記の「刑事政策(学)」の特性を踏まえたこの授業の目標は次のようなものです。 (1)「まだ知らないことの多さ」を自覚した上で、自分で問題を発見する能力を獲得する。 (2)文献調査・社会調査を通して「第一次情報」にアクセスする能力(「事実」にアクセスするための能力)を向上させる。 (3)犯罪学・刑事政策学・刑事法学に関する基本的な知識を獲得する。 (4)自己表現能力(口頭発表、文章作成を論理的・説得的に行う技術と能力)を向上させる。
「刑事政策」では、「どうあるか」という「事実」を確認することと「どうあるべきか」という「当為」を論じることが大切です。したがって、この授業では自分で「事実」に触れることと「当為」を論じることという2つの能力を身につけることが目的になります。 |
授業の概要・計画 |
(1)授業のテーマ ゼミのテーマは参加者全員による話し合いで決定します。夏学期は、どちらかといえば「座学」中心で授業を進めます。冬学期は、どちらかといえばフィールドワークなど「実技」中心で、テーマの設定や活動方法は参加者の自主性に委ねます。 「刑事政策」の守備範囲は元々広いので、幅広い問題関心をもっている方に参加頂ければ、お互い実りが多くなるでしょう。
(2)検討の方法 このゼミでは、文献調査だけでなくフィールドワーク(≒「街に出る」「人に会う」こと)を重視します。裁判傍聴、施設参観、当事者の方、実務家の方への聴き取り調査を行います。COVID-19の感染状況をみてフィールドワークが難しそうであれば、オンラインを用いて様々な人の話を聴く機会を設けたり、映像作品に触れる機会を設けたりするようにします。その他、刑事法や刑事政策に関係しそうな学外の催し物・活動・勉強会の情報も積極的に提供します。 こうした活動は、正規の授業時間外で行うことが多くあります。特に水曜日の午後を活用することが多くありますので、ご注意ください。
(3)年間計画 詳細については、第1回目の講義の際に受講者と相談して決定します。 例年、夏休みは、調査旅行に出かけています。これまでの主要な調査結果は、ゼミ論集にまとめられていますので、学生情報サロンで読んでください。 |
授業の進め方 |
<調査→報告→議論>を繰り返しながら問題の発見と調査を発展させていくというのが、このゼミの基本的な進め方です。 報告担当者には、文献・社会調査に基づいて(グルーピングを行った場合には、さらにサブ・ゼミを行った上で)、予め簡潔なハンドアウトを作成して頂き、プレゼンテーションを行ってもらいます。それを軸に、参加者全員で議論を行います。議論の中で新しく出てきた疑問や関連する問題については、さらに調査を進めてもらい、報告してもらいます。 詳細については、第1回目の授業の際に、受講者の方と相談して決定します。 |
教科書・参考書等 |
【ゼミの内容に直接かかわるもの】 (1)武内謙治=本庄武『刑事政策学』(日本評論社、2019年) (2)本庄武=武内謙治『刑罰制度改革の前に考えておくべきこと』(日本評論社、2017年) (3)武内謙治『少年法講義』(日本評論社、2015年) (4)法務総合研究所『令和2年版 犯罪白書』
【ゼミ開始前までに必ず読んでおくもの】 (1)戸田山和久『思考の教室』(NHK出版、2020年) (2)野矢茂樹『大人のための国語ゼミ[増補版]』(筑摩書房、2018年) (3)大島弥生ほか『ピアで学ぶ大学生の日本語表現[第2版]』(ひつじ書房、2014年) *1冊以上を春休み中に必ず読んでおいてください。 *時間がある人は、春休みに、NHK高校講座「ロンリのちから」[http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/ronri/]も観ておいてください。
【フィールドワーク・質的調査に役立つ本】 (1)岸政彦=石原丈昇=丸山里美『質的社会調査の方法』(有斐閣、2016年) (2)前田拓也=秋谷直矩=朴沙羅=木下衆『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年) *1冊以上を春休み中に必ず読んでおいてください。
【ゼミ論文を書く能力をつけるために必ず役立つ本】 (1)戸田山和久『新版 論文の教室―レポートから卒論まで』(NHK出版、2012年) (2)石黒圭『この1冊できちんと書ける!論文・レポートの基本』(日本実業出版社、2012年) |
成績評価の方法・基準 |
(要件) ・授業への参加(無断・正当な理由のない欠席があった場合には単位認定を行いません)
(基準) ・報告(調査活動も含む)(40%) ・授業への参加(授業の準備、議論での発言など)(40%) ・ゼミ論文(20%) |
その他(質問・相談方法等) |
(1)演習授業(ゼミ)についての武内の考え方は、法学教室454号(2018年)2-3頁(「学外活動(フィールドワーク)は、ほろ苦いコーヒーの味――書をもって街にも出よう」)にも書いていますので、これも併せて読まれてみると、ミスマッチが少なくなるかもしれません。 (2)これまでこのゼミに参加してくれた学生さんの進路は、だいたい半分ほどが刑事政策とかかわり深いもの(国内外の大学院進学[→研究者]、法科大学院進学[→弁護士、裁判官]、国家公務員[法務省矯正局、法務省保護局、保護観察官、地方更生保護委員会、入国管理局、検察事務官、裁判所職員、法務局]など)、半分ほどがその他の国家公務員(会計検査院)、地方公務員(福岡県、熊本県、大分県、福岡市、北九州市、宮崎市、大分市、福津市、佐世保市など)、民間企業(金融業、製造業、報道機関など)です。 この演習授業(ゼミ)に参加したこと自体が何か就職に役立つことはありませんが、OGとOBは人格者揃いなので親切に各種アドバイスをしてくれます。 (3)サブゼミでの履修や新4年生の新規受講も歓迎します。「メインのゼミ」として参加を希望する方でも、他のゼミへのサブゼミ参加を推奨します。九州大学法学部では、少人数で行うゼミが数多く開講されています。多様なゼミで多様な教員と学友に接しないまま卒業することほどもったいないことはありませんので、是非色々なゼミに参加してください。 (4)講義担当者から選考期間中・春休み期間中に連絡をとることがあります。「志望理由書」には、「携帯メールではない」メールアドレスも記入しておいてください(はっきりと、明瞭な文字で)。 |
事前/事後学修 |
教科書の該当箇所の読み込みと授業後の復習。各回4時間相当。 |