民事判決読解特殊講義I

最終更新日:2021年2月25日

授業科目名
民事判決読解特殊講義I
標準年次
2・3・4
講義題目
民事判決読解
開講学期
前 期
担当教員
寺本  振透(TERAMOTO S.)
単位数
2単位
教  室
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
Civil Case - Practical Training I
Course Overview
Students are requested to read and analyze a very simple civil case during each class. The finding of facts claimed by the relevant plaintiff according to the requirements provided by the provisions of the law, as well as the practice of proving such facts, should be emphasized in the course of the analysis. This is to achieve one of the objectives of the class, namely, “to provide students with the opportunity to train themselves to master the practice of applying the requirements defined in each provision of the law.”
The lecture plan is shown in this syllabus in Japanese. However, it will be adjusted from time to time depending on the progress of learning of students.
  
履修条件
なし。

なお、e-Gov法令検索(http://elaws.e-
gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/)、最高裁判所の裁判例情(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1)、および、
LEX/DBインターネット [TKC](九州大学法学部ウェブサイトにリンクあり)を使いこなせるようになっていることが望ましい。
授業の目的
本授業の目的は、将来、職業的法律家となることを志望する学生に対して、
(1) 民事系の法律実務の基本である「要件事実」を実戦的に使いこなすトレーニングの機会を提供すること、
(2) 継続的に学習する習慣を定着させること、である。より具体的には、下記ルーブリックを参照されたい。

(ルーブリック)
【知識:理解】
A:探索された条文が利用された裁判例を、判例データベースを用いて探索し、これを、目前の問題の解決のために利用できる。
B:「請求の趣旨」を実現できる条文を探索して特定できる。
C:仮想的な依頼者の欲求を「請求の趣旨」として表現できる。これは、仮想的な依頼者の欲求のうち、現行の法律が充足可能な部分を知る、ということである。
D:仮想的な依頼者の欲求を文書化できる。
F:仮想的な依頼者の欲求を文書化できない。
【専門的技能】
A:ある事実が、法律の条文にかかれている要件に該当するかどうかを、説得力あるかたちで、議論することができる。
B:「請求の原因」に示した個々の事実を立証するために必要または適切な証拠を用意することができる。
C:具体的な事案を与えられたときに、法律の条文が定める個々の要件にあてはまる事実を漏れなく掲げて、「請求の原因」を書くことができる。
D:法律の条文に書かれている要件と効果を、明確に区別することができる。具体的には、法律の条文が定める要件を、一つずつ区分して、列挙することができる。
F:法律の条文に書かれている要件と効果を、明確に区別することができない。例えば、ある条文に書かれている効果を、要件を含んだ表現のまま、説明してしまう。
【汎用的技能】
A:存否が議論の対象となっている事実について、それが存在「しなかった」ことを説得的に説明する方略を設計することができる。
B:存否が議論の対象となっている事実について、それが存在したことを説得的に説明する方略を設計することができる。
C:存否が議論される可能性がある事実のうち、議論する実益が無いものを、理由を示して、特定することができる。
D:利害が対立する者同士の論争において、存否が議論される可能性がある事実を列挙することができる。
F:利害が対立する者同士の論争において、事実の存否に関する議論と、事実の存否に関わらない単なる意見の相違とを区別できない。
【態度・志向性】
A:相手方との論争において、「事実の存否に関する」意見の相違と、存在することには争いがない「事実の意味付けに関する」意見の相違とを区別して、対話をすることができる。
B:相手方と論争を始める前に、相手方と意見に相違がない事実を整理する習慣づけができている。
C:個々の事実の存否について、論争の相手方が認否を示しやすいように、ブレイクダウンして、事実を記述することができる。
D:論点の所在を決める前に、事実を整理して記述することができる。
F:事実を整理する前に、論点の所在を決めつけてしまう。
授業の概要・計画
“民事系の法律実務の基本である、要件事実を実戦的に使いこなすトレーニングの機会を提供すること” を達成するために、毎回、なるべくシンプルな裁判例を素材にして、要件事実と立証を中心に、分析を行う。
一つのテーマの裁判例について,授業二回ないし四回で,読解を完成させる予定である。


民事判決読解特殊講義 I のみ受講,II のみ受講,または,I および II 双方とも受講,の何れを選んでもよい。
授業の進め方
【授業形態】当面,Zoom を用いた遠隔(オンライン)授業とします。Zoom のミーティングID等は,Moodle に示します。
【指導者】授業の目的を効果的に達成するために、弁護士としての豊富な実務経験を有する教員が指導を行う。
【PC等の活用】学生は、法令データベース、裁判例データベース、事典等にアクセスできるように、PCまたはタブレットを用意すること。
【課題】学生は、毎回(ただし,ガイダンスのみを行う回を除く)、
与えられた課題に対する成果物を提出すること。
【口頭でのプレゼンテーション】毎回,裁判例を整理して,教員および複数の学生の前で発表し,質疑応答を行う訓練を行う。
【ディスカッション】毎回,裁判例の整理の方法および内容につい
て,教員および複数の学生と,口頭でディスカッションを行う訓練を行う。
教科書・参考書等
【授業の資料】あらかじめ、Moodleに資料をアップロードしておく。マニュアルは、(http://lac.kyushu-u.ac.jp/m2b/index.html)にある。

【参考書】下記の参考書をおすすめする。
岡口 基一『要件事実マニュアル 第1巻 総論・民法1』 第5版(ぎょうせい、2016年)ISBN:9784324101667
岡口 基一『要件事実マニュアル 第2巻 民法2 』 第5版 (ぎょうせい、2016年)ISBN:9784324101674
岡口 基一 『要件事実マニュアル 第3巻 商事・手形・執行・破産・保険・金融・知的財産』第5版(ぎょうせい、2017年)ISBN:9784324101681
成績評価の方法・基準
【毎回の授業での成果物の提出】25%

【発表】25%

【授業への貢献度】25%
以上3つの方法については、ルーブリックに記載の,知識・理解、専門的技能、汎用的技能、および、態度・志向性それぞれの項目に記載するスキルをどれだけ身につけることができたか,という観点から評価する。授業中の問答は,それぞれの学生が,各スキルを開発するとともに,そのスキルの定着の度合いのアセスメントを教員がで行えるようにデザインされたものとなる。

【出席】25%
出席状況については、態度・志向性の観点から評価する。

すべての学生が、互いに協力して、法律実務家となるための知識とスキルを身につけることをめざす。相対評価ではなく、絶対評価を行う。
その他(質問・相談方法等)
【質問・相談方法等】

教員に電子メールで連絡して、種々の相談のための面談の予約をすることができる。
欠席するときは、事前に(やむを得ない場合は、事後、なるべく早く)教員に電子メールで連絡すること。

【授業以外での学習,課題の準備の仕方】授業以外でも、また,課題の準備においても,チームを組み、(授業で取り扱うもの
も、それ以外のものも含め)判決書を用いて、次のような学習を行うことを、おすすめする。
判決書を音読する。
判決書を書き写す。手書きでも、ワードプロセッサを用いてもよい。
「事実」の部分を読んで、原告の「請求の趣旨」を起案し、実際の「請求の趣旨」と比較する。
「請求の趣旨」を達成できる条文を発見する。その条文については、音読し、書き写す。
その条文が定める要件事実を整理する。
さらに、「請求の原因」を起案して、実際の「請求の原因」と比較する。
個々の請求原因事実について、被告による認否を想像し、実際の認否と比較する。
被告が否認する請求原因事実について、どのような証拠を用いて立証するか、計画を立てる。
被告の否認が、「確かに原告が主張するような事実は存在したかもしれないが、その事実は、条文が定める要件には、あてはまらない」というタイプの場合には、「その事実が、条文が定める要件にあてはまる」ことを説得的に説明するための計画を立てる。
事前/事後学修 各回,事前に,Moodle で配信された裁判例を読み,Moodle で指定された課題に対する解答を準備するとともに(予習),事後に,授業でなされた指導に従って解答の修正を行うこと(復習)。これらに要する時間は,各回の復習と次の回の予習に要する時間は,4時間相当である。