法文化学基礎

最終更新日:2021年3月1日

授業科目名
法文化学基礎
標準年次
2
講義題目
法文化学への誘い(法・科学技術・倫理のトリロジー)
開講学期
前 期
担当教員
江口 厚仁(EGUCHI A.)
単位数
2単位
教  室
大講2
科目区分
基盤科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
Introduction to Legal Culture
Course Overview
Think about Interrelation between Law, Ethics, Science and Technology - Social/Legal System Approach.
履修条件
対面形式で実施します。

登録に際して、特段の条件はありません。

 法学部専攻教育カリキュラム上は法学部2年生を対象とする「基盤科目」ですが、高年次基幹教育科目「法文化学入門」として登録することも可能です。どちらで登録するかは、学生さん個々人の履修計画に即して自由に判断してください(学期末になってから登録の切り替えをすることはできませんので、よく考えて登録してください)。こうした科目の位置づけをふまえて、法律学=実定法解釈学についての知識がない(たとえば他学部の)学生さんでも特に支障のない内容にしています。
 ただし、その代わりに原理的な(理論的抽象度の高い)議論を中心に講義をしますので、授業に「即効的な実用性」や「暗記的情報量の増加」を期待される方には不向きです。この点には十分にご留意下さい。

 なお、この科目は「隔年開講」です。来年度は開講されませんのでご注意下さい。
授業の目的
 この講義は、法学部3・4年生に向けて開講される基礎法学系の「展開科目」(なかでも法理学・法社会学・紛争管理論などの「現代法システムの基礎理論」を主題とする科目群)の導入編となることを目的としています。

 みなさんの法学部での学びは「実定法解釈学」を中心としたものになりますが、本講はそれとは異なる手法を用いて現代法システムを理論的に(言葉の真の意味で「ラディカル」に)分析するための方法論=アプローチについて論じます。こうした方法論には、さまざまなタイプのものが存在します。本講義は、いわゆる「社会システム理論」に軸足を置きつつも、多様な法理論/現代社会理論の諸潮流を概観し、それらが現代社会を生きる私たちにとって、実際にどのような意義/示唆を与えてくれるのかを、なるだけ具体的な事例を手掛かりにしながらあれこれ考えていきます。

 とはいえ、この講義はあくまでも法学部高年次専攻科目に向けたイントロダクションです。それゆえ、あまり細かな論点(それは3年生以降に履修する「展開科目」群をつうじて提供されることになるはずです)に立ち入るのは避け、「先端科学技術」をめぐる現代社会のリアルな法的・倫理的争点や理論動向を、なるだけ「骨太な描線」でスケッチしていくことで、基礎法学的な思考のスタイルの大枠を提示したいと考えています。

法学部ディプロマポリシーとの関連では・・・

A.知識・専門的能力の観点からは、現代法システムを観察/分析する実定法解釈学とは異質な「理論フレイム」が多数存在し、その各々が固有の知見をもたらしてくれることについて、ざっくりとした理解をしていただければ、さしあたりそれで十分です。細かな暗記情報の蓄積は特に求めません。より詳細な学びは、皆さんの関心に即して選択する3年次以降の展開科目群を履修することで達成されるはずです。

B.汎用的能力・志向性の観点からは、「柔軟で批判的・創造的な思考力の涵養」という点を重視します。学問的な「分析フレイム」の学びは、みなさん自身の実生活の中で、実際に活用/応用できるものにならなくては意味がありません。いきなりそれらを「自在に使いこなせる」境地に達することは、まずありえませんが、自分なりにテーマを定め、少しずつでも試行/トレーニングしてみることは可能です。まずは、そうした構え(思考態度)を身につけていただけることを期待します。

 この講義を聴いて、「基礎法学」系の他の専攻科目を履修してみるのも面白そう、もっと突っ込んだ議論も聴いてみたいな、という気になっていただけたなら、それで本講義の目的は、ほぼ達成されたことになるでしょう。
授業の概要・計画
おおむね、以下のようなテーマを扱います。

1.先端科学技術の進展と現代社会の行方−−その光と陰
2.先端科学技術と法/倫理がぶつかるとき
3.事例研究(生殖医療、電脳社会、リスク対策など)
4.現代正義論−−法的規制の可能性とその射程
5.リスク社会を生きる技法
6.先端科学技術との上手な折り合い方

より具体的な講義計画は、授業の進行を通じて適宜示します。
授業の進め方
 講義用「レジュメ」「資料」を配布し、おおむねそれに沿って講義します。

 なるだけ「1テーマ、1コマ完結型」の形で授業を進めていく予定でいますが、その時々の勢いで話がすぐに脱線し、めったに予定通りには進行しないのが悩みの種です。実は、話し手/聞き手の双方にとって、話が脱線している時間の方がずっと楽しい(かもしれない)という点が、ネックになっているのかもしれませんが…。

 なお、この授業では、みなさんが記憶すべき「情報量の多寡」はあまり重視いたしません。難解そうに見える専門用語をたくさん暗記することで「お利口さんになった気分」を味わいたい人は、きっと「がっかり」しますので、あらかじめ履修登録を避けていただくのが賢明でしょう(「必修科目」ではありませんので、学期の最後になって苦情を言われても困ります。ミスマッチの選択責任は皆さん方自身にあるとお考えください)。

 この授業のテーマは、衝突する異質な思考モードを媒介し、複眼的に問題を検討していくための「多元的な思考の形式」を鍛えることにあります。何かを暗記するのではなく、みなさんが自分自身の頭で何かを考え抜くための手がかりを提供すること、この点が本講義のポイントです。

 ですので、講義内容も「ああでもない、こうでもない」と堂々巡りの様相を呈します。レディメイドの「スッキリ明解な結論に安易に飛びつかない」ための「正しい悩み方」を模索することがポイントですから、そのコンセプトに忠実に、講義自体も右往左往しながら進行します。ですので、ある程度は集中力を持って聴講していただかないと、話の流れがつかめなくなり、話の断片だけをとらえて判ったような気になる、という「最悪の結果」に陥る可能性すらあります。そうはならないための思考のトレーニングが、正反対の効果を生んでしまうのは「悪い冗談」ですね。この点、どうぞご注意下さい! 
教科書・参考書等
 テキスト・参考書は特に指定しません。関連する文献・資料については、講義の中でその都度紹介します。

 時間的/精神的に余力のある人は、
坂口光一編『感性・こころ−自分らしい自分をつくる・もうひとつの知をひらく』(2008年・亜紀書房)第3章−1「迷い抜く倫理学 − 互いを認め合い、違いにこだわる」(江口担当)
江口・吉岡・林田編『境界線上の法/主体 −屈託のある正義へ』(2018年、ナカニシヤ出版)
などを一読していただけると、講義全体のイメージをつかみやすくなるかもしれません。頑張って図書館に潜ってみてください。
成績評価の方法・基準
 定期試験(コロナ状況次第では、これに代わる期末レポート)により評価します。具体的な方法は開講初日にプリントを配布して口頭で詳しく説明しますので、お聞き逃しのなきようお願いいたします。

 法学部ディプロマポリシーとの関連では・・・

A.知識・専門的能力の観点では、細かな暗記情報の蓄積は特に求めないと宣言していますので、暗記的情報量の多寡を評価の対象とすることはありません。答案/レポート作成のポイントは、「多様な思考スタイルどう使って問題を分析するか」にありますので、いわゆる「一夜漬け的試験勉強法」は役に立ちません。定期試験直前になって慌ててもあとの祭りですので、この点についてはくれぐれもご注意下さい。

B.汎用的能力・志向性の観点からは、「柔軟で批判的・創造的な思考力の涵養」という点に鑑み、自分自身が選び取った「分析フレイム」を自覚的に活用しながら、特定のテーマについて思考を展開していく力を評価したいと思います。これは常日頃からの「分析的思考シミュレーション(仮想的思考実験)」の蓄積がモノをいいますので、そうした思考態度を日常的に心掛けておいていただければと思います。

 いずれにせよ、皆さん自身が自由に選んだテーマについて、理論的/分析的に考察したレポートを提出していただく機会を持ちたいと考えています。詳細は講義中に説明しますので、ご自身のテーマ設定やレポート資料の収集など、早めの準備に怠りなきようお願いいたします。
その他(質問・相談方法等)
 オフィスアワーは特に設定しませんので、質問等は、授業時間後を含め適宜受け付けます。
事前/事後学修  レジュメ資料の該当箇所の読み込みと授業後の復習を、各回4時間相当の時間をかけて実施してください。