西日本新聞特殊講義U

最終更新日:2021年2月22日

授業科目名
西日本新聞特殊講義U
標準年次
3・4
講義題目
現代社会論
開講学期
後 期
担当教員
 
単位数
2単位
教  室
D103
科目区分
展開科目
使用言語
Japanese
科目コード
Course Title
Modern day issues in society
Course Overview
This lecture focuses on strengthening our overview towards society.By widening your knowledge, improving thinking abilities and developing global senses, I look forward to high intellectual performances.
履修条件
特にありません。下記の授業目的やこれまでの授業評価アンケート、学生間での噂話、自らの推測、勘などをもって履修の判断をしてください。

なお、本授業は一つの専門分野について深く深く掘り下げていくという手法ではなく、大学生として知っておいておかれた方がよかろうというテーマや素材をランダムに詰め込んでいく、いわば「幕の内弁当」(うまいかどうかは分かりません)のような方式を採ります。よって鋭角的な探求を志向される方には不向きです。

最終的には筆記試験の実施、もしくは新型コロナの影響によってはレポートの提出を求めますが、その解答は毎回の授業ごとに書いてもらう感想文と皆さんの頭の中にしかありません。別の言い方をすれば、ネット上にも、ましてや高額な学術書の中にも答えはないのです。答えがネット上にあるなら、学術書の中にあるのなら「それば見とけばよかろうもん」という浅学非才ならではの思い込みと、「自分の頭で考えないでどないすんねん」との突っ込み混じりの価値観があるからです。

よって出席された方が単位獲得の近道となります。昨今、新自由主義とやらが大学の教育現場にも浸透し、効率重視(つまり最少の出席で最大の成績獲得)が幅を利かせております。教室が何らかの工業製品の工場であるならばそれも「アリ」でしょうが、基本的には新聞記者で、教育の門外漢である私から見れば教育と効率重視は極めて親和性が低い。もっと言えば、効率のフィルターには引っかからない「無駄話」の中に、何かの気付きがあったりするかもしれませんね。

無論、現代社会の諸課題を提示し、考えてもらうのがこの授業の本道です。聞き飽きているでしょうが、大学時代は様々な経験をし、知識を詰め込む最後のチャンスです。超高速化する時代の流れを踏まえれば、その重要性は極めて高いといえるでしょう。大らかで構わなかった平成初期ではあるまいし、「テキトーに出席して単位獲得」なんて姿勢は時代遅れで、「ダサッ」と私は思います。皆さんも諸事情があられるでしょうから「1回も休むな」なんて、それこそダサイことは言いませんが、履修を希望される方は、この出席の観点にも十分ご留意ください。
授業の目的
正直に胸の内を語れば、「就活で他の名門大学生に競り勝って希望した仕事に就き、必ずや直面するであろうくだらない組織内の人間関係を右にいなし、左にいなす術を学び、活躍の場をグローバルに広げ、ハッピーな人生を送れるような」学生諸君の養成というなんとも小学生チックな表現になってしまうのですが、そのために知のウイングを広げ、時代のベクトルを敏感に嗅ぎ取り、先人の経験談に耳を傾け、国際感覚をわがものにするというのが、なんとも欲張りな本授業の目的です。

その著書が大学入試にたびたび使われることから、皆さんも多少の痛みを感じつつよくご存じであろう元大阪大学総長の鷲田清一氏は、現代社会を評して「『生きる』より『生き延びる』という言葉の方がリアリティがある」と記述しています。この言葉から皆さんが連想するのは、皆さんに押し付けられそうな国の大借金であり、血まみれな社会保障制度であり、不安定な東アジア情勢であり、情報技術を軸とした企業間の世界的な競争激化でしょう。コロナで日本の脆弱性が露になり、この言葉が凄みを持った感さえします。

旧帝大の権威におもねるつもりはさらさらないのですが、国内外の「現場」で地べたを這いずり回ってきたわが身の米粒ほどの職業体験からしても、鷲田氏の時代認識は「仰る通り」と思えるのです。

「幕の内弁当」のパーツは下記の授業概要・計画の通りですが、様々な分野の「現実」「現場」を提示しますので、「へぇー」という感想と、「ならば自分はどうする?」と自問してもらえば幸いです。
以下、シラバスの書き方に従って補足すると

【知識・理解の観点から】
ご自身の専門領域を深める一方で、知の地平を広げてみたらどうでしょう。たまたま今まで知らなかったことを知るのは単純に面白いし、それが皆さんの「刺激」となって少しでも「プラス」になれば望外の喜びです。なお授業では、関連する映像を多用します。これまで丸6年の客員教員としての経験を踏まえ、「授業中にスマホを触りたい」「隠れながら他の授業の宿題をやりたい」という誘惑を断ち切ってもらうには、映像使用はかなり効果的との結論に至ったためです。

【国際性の観点から】
コロナが大きく立ち塞がっているという事実はあるものの、「可能なら留学してきたら」というのが担当教員の口癖です。さほど英語ができなくともなんとかなるのはわが身で実証済み。ワシントン支局長時代の星の数ほどある失敗談を折に触れて話しますが、「自力でなんとかしなければならない状況にわが身を追い込む」ことが留学の醍醐味でもあります。ただ、留学でなくとも国際感覚を磨くことの重要性は上記に記述した通りです。

【人間性・社会性の観点から】
「何それ?」と思われるでしょうが、上記の「くだらない組織内の人間関係を右にいなし、左にいなす術」というのは組織人にとっては欠かせない能力です。「新卒の30%は3年以内に辞める」という事実は、この能力の欠如が一因とも言えるでしょう。何より、大半の方はご存じないと思いますが、九大の教育憲章には「秀でた人間性、社会性を有する人材を育成する」と明記してあり、教室で大手を振って語ってもよいテーマ、のはずです。

【職業感覚の観点から】
進路は決まったでしょうか、業種はいかがでしょう。場合によっては大学合格を目指したあの頃の情熱は薄れ、没頭するものが見つからずやきもきしている人がいるかもしれません。別に猛烈サラリーマンを生み出そうとしているのではなく、皆さんが「仕事」というものを具体的にイメージしやすいように、様々な事例を現代社会論という枠組みの中で紹介します。
授業の概要・計画
映像資料+口述解説で授業を進めます。

ちなみにラインナップ(当然、前期とはかぶりません)は
@2030年は「未来」への分岐点
A資本主義と気候変動
B女性雑誌編集長に見る働き方
C人工知能との付き合い方
D無罪判決14件の弁護士
E火山列島の地下に潜むリスク
F大廃業時代
などを取り上げる予定です。

なお、「旬」な話を取り上げるため、内容の変更が予想されます。その点、ご理解ください。
授業の進め方
授業形態は「対面」を原則としますが、コロナ次第で遠隔または併用の形を取ります。


この授業の性格上、予備知識がなければ理解できなかったり、ノートに書き写すことに追いまくられるなどといったことはほぼないと思われます。遠慮がちな方が多いですが、授業中、テーマを通じて皆さんとでき得る限り対話したいものです。

また、その日に学んだことや感じたことなどを記述し、提出してもらいます。論文チックに書く必要性は全くありませんが、成績評価の判断材料になることを承知しておいてください。
教科書・参考書等
教科書は特にありません。
必要があればその都度、参考図書を紹介します。
成績評価の方法・基準
この授業はほぼ「一話完結」型です。しかし、縦軸が上記「授業の目的」であることは言うまでもありません。成績評価は定期試験と各回ごとの提出文(感想文)を1対1の比率で判断しますが、授業目的と連動するかたちで、

@現代社会が直面する諸問題を的確に理解しているか
Aそれを自分の近未来にどう生かそうとするのか
B地球を俯瞰する素養を持てたか
などを重点的に評価することとします。

なお、定期試験の際、英語での解答には一定の点数を加点します。九大教育憲章で「国際性」を重視しているための措置です。
その他(質問・相談方法等)
適宜、質問やご相談には応じます。メールアドレスはtabata.yoshinari.640@m.kyushu-u.ac.jpです。
4階に研究室がありますので、そちらへもどうぞ。
事前/事後学修 各回4時間相当