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中国法特講第一 Chinese Law,Advanced Lecture T

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
中国法特講第一 Chinese Law,Advanced Lecture T
履修コース
研・専
講義題目
中国人の行動原理と「法」
授業区分
通年
担当教員
西 英昭 (NISHI H.)
単位数
4単位
教 室
科目区分
修士課程
履修条件
 自己の研究テーマが中国法・東洋法制史と密接な関係を有するもの。
 特にありません(中国語はできなくて全く構いません。勿論できればなお良し、です)。
 留学生の方の参加は排除しませんが、ゼミの発表や討論に耐える十分な日本語能力を身につけておいてください。
 受講希望者は4月11日(月)までに志望理由書(A4一枚程度)をメールにて担当教員に送付し、許可を得ること。無許可での参加、ゼミ初日当日の飛び入り参加は認めませんのでご注意ください。
授業の目的
中国に関するニュースが何かと多い今日この頃、それらを注意深く見ていると、どうも彼らの「法」に対するスタンスが我々とかなり違いそうだ、ということに気づくと思います。ある時には「法」を持ち出し、ある時には「法」を無視し、その場に応じて千変万化の行動を繰り出してくる様を見ると、一体この人たちは「法」というものをどう考えているのだろう?と疑問に思うことも少なくないと思います。実際のところ、「普遍的な正義」とか「法の支配」といった我々が通常想定するような世界ではなく、あたかも「法」の上に立ち、「法」を道具としてしか見ないような、そのようなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
 そうなると、どうやら「法」の中身だけ見ていたのでは一向に埒が開かないということになりそうです。むしろそれをも含めた、その外にある原理を捕まえないことには、つまりは彼らの行動原理全体の中で「法」がどのような位置を占めるのかに、について考えないことにはどうしようもない、ということになりそうです。
 例えば皆さんは「計略」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか?「狡猾」「悪徳」「無法」といったところでしょうか?あまり係わり合いになりたくないと思うかもしれませんが、実際にある程度そういうものが世の中に存在することは事実ですし、逆に「そんな手にひっかかるようじゃあ」と思うような陳腐なパターンもあるでしょう。いずれにせよ、ある意味で計略というのは「人間関係あるある」であり、それを熟知しないで世に出るとまさに「世間知らず」といわれてしまうことになってしまうかもしれません。
 清朝末期で既に4億、現在では13億超の人口を抱える中国に展開した人間関係の数を想像すると気が遠くなりそうですが、であればこそ、様々な人間関係に対してどのように行動すればいいのかということについても多くの知見が蓄えられたはずです。
 その中に「法」も一定の位置を占めてきたわけですが、今回のゼミではこの「法」の外に展開した原理と、「法」がそれにどのような関係を持って展開したのか、ということについて、古代から現代まで、様々な例を取り上げながら、考えて行きたいと思います。
授業の概要・授業計画
 壮大なテーマを掲げてしまったわけですが、ひとまずは法学者の目からこのテーマを見た場合にどうなるかという観点から、過去に法学者がこのテーマを扱った文献を中心に輪読してゆくことにしたいと思います。
 ハロー・フォン・センゲル氏はスイスを代表する中国法研究者ですが、その著『兵法三十六計』は世界で40万部を売り上げた大ベストセラーであるにも関わらず日本ではほとんど知られていません(もうその段階で我々は出遅れていますね)。本来中国法を扱う筆者が何故わざわざ「法」の外にある話を取り上げたのか、三十六計を味わいながら読んでみたいと思います。
 また黒田健二氏は黒田法律事務所で長年弁護士実務に携わり、まさに中国法務の第一線で活動してきた弁護士です。その目には中国がどのように映るのか、また「法」はそこでどのようなものとして展開しているのか、まさに現場からの生の声を聞きながら考えてみたいと思います。
 ただ、これらの本を鵜呑みにするということではなく、縦横ナナメに、批判的に読んでゆくこととします。「本当に?」「それはどうかな?」「いや、ヌルイだろ」といった皆さんからの積極的な「ツッコミ」をもとに議論をして行きたいと思います。
 他方で「だから中国人は云々」といったような短絡的な理解もなるべく遠ざけるようにします。短絡的な決め付けではなく、むしろかの国の多様性を楽しみながら、議論して行きたいと思います。
 後期は、これらの議論から得たインスピレーションに基づく形でも結構ですし、他のテーマでも構いませんが、個人報告をお願いし、皆さんと議論してゆくことにします。
 院生ですので英語ないし中国語書籍・論文を基本とした報告をお願いする形になります。通常の報告でも学部生の見本となるような水準の報告をお願いしますし、学部生の発表への積極的かつ高水準の講評をお願いしますので、負担はかなり大きいと思われます。
The main purpose of this seminar is to learn some basic research methods for the study of Chinese law. This is basically an undergraduate seminar, but the severe academic requirements of graduate students will be imposed. (Because you are the ‘Senpai (senior)’ in the School!). This year, we read some books which discusses some vital issues of Chinese legal culture. The seminar will be held in Japanese.
授業の進め方
 前期は関連文献(下記教科書及び参考図書等の欄を参照)を輪読し、皆で自由に議論したいと思います。ですので、報告担当者は決めません。皆が文献を読んできた上で自分の疑問や議論したいことを述べ、追加で調べることができた場合は改めて調べた上で持ち寄り、それらに基づいて議論を行います。なので、文献1つあたり何回かかけて議論を深める形になると思います。積極的にゼミに関与したいという皆さんの気持ちが重要です。
 後期は各自興味を持ったテーマ(前期の議論の中で見つけたテーマでもよいですし、全く関係のないテーマでも構いません。ただし広い意味で「中国」に関連するものであることは必要条件です。)について発表していただき、皆で議論する形にします。
教科書及び参考図書等
 現在のところ、
ハロー・フォン・センゲル『兵法三十六計』(ダイヤモンド社・2008年)
黒田健二『人治国家中国のリアル』(幻冬舎・2011年)
松原邦久『チャイナハラスメント』(新潮新書・2015年)
を予定しています。各自入手しておいてください。(古本でもよければ安価に入手できるでしょうし、生協にもいくらか入荷をお願いする予定です。)これ以外の文献については皆さんの希望により調整したいと思います。
成績評価の方法・基準
 ゼミですので基本的に毎回出席してください。病気等止むを得ない理由で欠席する際には、必ず教員あてメールするか、友人や学生係を通じて連絡を入れるなど、無断欠席のないようにお願いします。
 評価は毎回の議論へ積極的に参加しているかどうかといった平常の貢献度と、ゼミの最後に提出していただくゼミ論文の内容を合わせて評価します。
その他(質問・相談方法等)
 質問は随時受け付けます。ただ、突如研究室へ来て頂いても会議等で不在の場合もあるので、研究室を訪問して相談されたい場合は前もってメールでアポをとってください。メールはh-nishiのあとに@law.kyushu-u.ac.jpです。
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