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教育内容・方法

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シラバス

科目名
  • 授業科目名ジェンダーと法
  • 授業科目名(英語)Gender Equality and Law
  • 標準学年2・3年次
  • 必修・選択の区別選択
  • 単位数2単位
教員名 柏熊 志薫 ( KASHIKUMA Shinobu )
時限 金 , IV ( 14:50~16:20 )
授業の目的 ジェンダーとは、社会的・文化的に作り上げられた性差ないし性別をいいます。私たちは固定観念や偏見(バイアス)にとらわれ、この性差を無意識無批判に受容していることが少なくありません。
憲法では男女平等が謳われていますが、果たして法学や司法の分野において平等な中立性を実現できているでしょうか。残念ながら、判例・学説や法曹実務家の意識の中にもジェンダーバイアスが存在します。法曹実務においてジェンダーバイアスが克服されていなければ、ジェンダーにより差別を受けた者が司法的救済を受けようとしても、二次的被害を受けて救済を受けられないおそれがあります。これでは、司法が本来機能して実現されるはずの法の正義が実現できません
講義では、まず、社会及び司法におけるジェンダーバイアスの存在を認識し、これを法律実務の場に持ち込むことの危険性についての理解を深めていきます。そして、学生が学ぶ法律、法解釈と経験している日常生活から、ジェンダーバイアスの存在を認識できる視点を養成し、ジェンダーバイアスにとらわれない法曹養成を目指します。
履修条件
到達目標 カリキュラムマップ、到達目標科目対応表及び学修ロードマップを参照のこと。
授業の概要 法曹が日常業務の中で接する生の事実、法的手続、法制度、法解釈を題材として、
⑴ジェンダーの視点でどのような問題があるか
⑵問題解決のために、従来の法制度や法解釈の枠組みをどのように再構築すべきか
を中心として、法曹の「常識」の中にあるジェンダーバイアスの認識と解消を目指します。
授業の概要(英語) This course examines gender bias among laws and practical cases.
授業計画 第1回 イントロダクション
   ・講義の進め方
   ・ジェンダーチェック 
   ・ジェンダー法学の基礎知識
   ・日本の現状(国際社会の動向を踏まえて)
第2回 「法の下の平等」は本当か? 
   ・日本国憲法の平等原則
   ・性差別の違憲審査基準
   ・法制度上の諸問題(総論)
第3回 労働分野におけるジェンダーバイアス(1)雇用における差別
   ・男女雇用機会均等法
   ・男女同一賃金、間接差別
   ・多様な働き方
第4回 労働分野におけるジェンダーバイアス(2)
   ・ワーク・ライフ・バランス
   ・アンペイドワーク
   ・震災とジェンダー
   ・コロナ禍とジェンダー
第5回 セクシュアル・ハラスメント
   ・背景と現状
   ・日本における法理論の展開(福岡セクハラ訴訟ほか)
   ・キャンパス・セクハラとアカデミック・ハラスメント
第6回 性の多様性(LGBTQ+/SOGI)
   ・基礎知識
   ・司法の課題(同性カップル、親子関係等)
第7回 家族法分野におけるジェンダーバイアス
   ・家族のあり方の多様化
   ・夫婦の氏の問題
   ・離婚における諸問題とジェンダー
第8回 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
   ・社会現象としての非婚・少子化を考える。
   ・リプロダクティブヘルス/ライツの現状と課題
     「産む権利」「産まない権利」「子を持つ権利」、生殖補助医療の利用と課題
第9回 親密圏における暴力(DV・ストーカー規制法)
   ・DVの現状と構造(発生のメカニズム)
   ・DV被害者を保護する法制度(DV防止法)
   ・デートDV
   ・ストーカー規制法
第10回 性暴力(1)
   ・性暴力の現状とジェンダーバイアス
   ・刑法改正に関する議論
   ・最近の裁判例検討
第11回 性暴力(2)、福祉・社会保障・税の分野におけるジェンダー
   ・性的自己決定権(セックスワーカー論、子どもの性をめぐる問題)
   ・「女性の貧困化」の問題
   ・社会保障及び税金年金とジェンダー
   ・養育費の問題
第12回 事例検討・レポート作成
第13回 政治及び指導的地位への参画におけるジェンダー
   ・政治参画および政策・方針決定過程における女性の参画
   ・指導的地位における女性の比率の現状と課題
第14回 事例検討・討論
第15回 まとめ(法曹としての心構え)
   ・各法分野の「司法におけるジェンダーバイアス」の振り返り。
   ・法曹としての心構えを最終確認する。
授業の進め方 各回のテーマに関して、統計資料等を用いながら現状や法制度を俯瞰し、法的課題等の討論、関連する判例検討を行います。また、第12回の事例検討ではレポートを作成してもらいます。実務社会の中で実際に起きている出来事や事件を数多く取り入れるので、活発な議論を期待しています。
教科書及び参考図書等 教科書は指定しません。
参考図書として、「概説ジェンダーと法」(辻村みよ子著・信山社)、「ジェンダーと法1巻〜4巻」(ジェンダー法学会編、日本加除出版)。その他、各テーマごとに参考資料や文献を随時紹介します。
試験・成績評価等 「ジェンダーと法」は本来、法曹が倫理的に身につけておくべき科目であり、個々の受講者ごとに、自らの中にいかなるジェンダーバイアスがあるかを認識し、授業を通じて、その解消を図ろうとする努力過程が中心となります。この過程には個人差が存在し、ある一時点での試験による評価になじみません。よって試験は実施しません。
成績は、一定の水準の素養が身についたかを評価するため、授業中に実施するレポートの内容(30%)と、出席状況及びテーマに関する授業中の意見発表や質疑に対する応答など受講態度(70%)によって、総合的に判断します。
事前学習 次の授業内容を事前に告知するので、そのテーマについて自分はどんな考えを持っているか考えてきてください。また、判例検討においては、予習として事前に該当する裁判例を各自読み、問題点や疑問点をあらかじめ整理しておくと理解がさらに深まります。
課題レポート等 授業内で事例検討を行い、レポート作成を求めることを予定しています。
オフィスアワー 授業終了後、17:40まで(オンライン授業の場合はZOOM)。
その他 対面授業またはZOOMによるオンライン授業もしくはその併用。
ミーティングID等はTKCに掲載。