九州大学 法学部 2024 Faculty of Law Kyushu University

KYUSHU UNIVERSITY 2024 INTRODUCTION TO FACULTY OF LAW CONTENTS

学部長挨拶 カリキュラム ゼミ紹介 九大法学部とは? 講義紹介 教員紹介 「九州大学法科大学院」の紹介 法科大学院連携プログラム GVプログラム 国際交流 就職・進学について 「九州大学大学院法学府」の紹介 LPセミナー アクセス・教員近著

編集・発行:九州大学法学部学務委員会・広報委員会 広報委員会学生スタッフ

九州大学法学部長 德本 穰

九州大学法学部へのご招待

 九州大学法学部は、法学・政治学教育を通じて、地域社会、日本社会、国際社会でリーダーシップを発揮しうる創造性豊かな人材の養成を目指しています。
 そもそも九州大学法学部で学ぶ法学・政治学とはどのような学問でしょうか。人間は社会的動物であり、社会あるところに法あり、ともいわれます。わたしたちが社会生活を営むうえで、何らかのルールを必要としていることは否定できないでしょう。ルールがあれば、他者の行動もある程度予測することができ、比較的安心して日常生活を営むことができます。また社会生活上のトラブルも未然に防ぐことも可能でしょう。仮にトラブルが生じたとしても、ルールに従って解決できます。
 法は、社会生活におけるルールの1つです。法学・政治学は、このようなルールがどのようにして作られるのか、作られたルールがどのように維持され、改正されるのか、また、そのルールが社会生活においてどのように理解され、受容されているのか、さらにはどのような歴史を有しているのか、しかもどのようなルールが適正で、どのように運用されるべきなのか等について研究する学問といえます。
 近年では社会のグローバル化によって、より多くの日本人や日本の企業が国際社会において活動しています。また世界中の地域の人や企業が日本社会において活動しています。こうしたグローバル化の現象は地域社会でも見受けられます。グローバル化した社会では、多様な文化や価値観を持った人たちと共に仕事をし、生活をしていかなければなりません。その多様な文化や価値観のなかで共生していくためにも、皆が従うべきルールを形成し、解釈し、適用していくことが必要となります。その際、多様な文化や価値観を持った人たちが合意できる価値評価基準は何かが、まさに今問われています。この問題を扱うのが法学・政治学であり、これらの学問的重要性はさらに強まっているといえます。
 九州大学法学部では、法学・政治学に関する多くの科目を提供しています。法学関係では、法律学の基本となる「憲法」・「民法」・「刑法」をはじめ、会社法を中心とする「商法」、行政活動を規律する「行政法」、裁判の手続きについて定めている「民事訴訟法」・「刑事訴訟法」のほか、「国際法」や「知的財産法」等を提供しています。

また、法の歴史に関する「法制史」、法とは何かを原理的に追究する「法哲学」、法が実際に社会においてどのように運用されているのかを問題にする「法社会学」もあります。政治学については、政治の原理や理論を検討する「政治学」や政治思想の歴史を扱う「政治学史」のほか、政治・外交の歴史を扱う「政治史」・「外交史」や国際政治や国際関係を分析対象とする「国際政治学」などがあります。
 グローバル化時代の要請に応えるために、法学部では2015年度から、「GV(Global Vantage)プログラム」という英語教育にも重点を置いた学部・大学院の一貫教育を実施しています。そこでは1994年に他大学に先駆けて大学院に開設した、英語のみで教育をする国際ビジネスコースでの経験を活かした教育をおこなっています。また2018年度からは、文系4学部(法学部・文学部・経済学部・教育学部)と協力して、学際的な科目や他学部の科目を履修できる「文系4学部副専攻プログラム」を全国に先駆けて導入しました。このプログラムでは法学部の学生は、文系4学部が提供する科目を広く体系的に学ぶことができます。副専攻プログラムの修了要件を満たした学生には、卒業時に法学部の学位(法学士)に加え、本プログラムの修了証が授与されます。因みに2022年度には文系4学部全体で20名の学生が本プログラムを修了いたしました。さらに2020年度から法学部・法科大学院5年一貫型教育による「法曹コース」を開始しています。
 これらの科目やプログラムを履修することによって、九州大学法学部では、ルールの形成、解釈、適用に関する基礎的な知識をしっかりと身につけ、日本や外国の法や政治に関する自らの意見を国内外の社会に向けて積極的に発信できる、地域社会、日本社会、国際社会をリードする人材を養成していきたいと思っています。
 九州大学法学部は、法曹(裁判官・検察官・弁護士)、公務員、企業・団体の職員、国際機関やNGOの職員、大学等の研究者などを養成し、社会に送り出してきました。2022年度の卒業生192名のうち、法科大学院等の大学院への進学が30名、国家・地方公務員等が55名、民間企業が69名、その他が38名です。法曹や公務員は言うまでもなく、民間企業でも、契約を中心とした取引先とのトラブルに関する法律、企業の買収や合併に関する法律、銀行・証券・保険などの金融に関する法律、公正かつ自由な競争に関する法律、特許権などの知的財産に関する法律、労働法など、いろいろな場面において法律の知識が必要とされます。
 法学部は、1924年9月に九州帝国大学法文学部として創設され、1949年5月に新制九州大学発足に伴い法学部となりました。2024年には法文学部創設100周年を迎えます。これまでに1万8千人に及ぶ卒業生を輩出し、国内外の多様な分野でリーダーとして活躍しています。また法学部同窓会をはじめ、多くの卒業生からは、様々な形で大学での教育及び卒業後の活動を支援していただいております。九州大学法学部は、高い志をもって法学・政治学を主体的に学ぼうとされる皆さんを心から歓迎します。

1ページ

法学部カリキュラムのしくみ

学生のニーズに応じた積み上げ学習を保障する総合教育

法学部の専攻教育科目 基幹教育科目(48単位以上)

 九州大学法学部の授業科目は、勉学の中心となる法学部の「専攻教育科目」と、「基幹教育科目」を二本柱としています。「基幹教育科目」は、九州大学が文系・理系のあらゆる学問領域をカバーする総合大学であることから、法学部学生の皆さんにも、この特質を十分に活用して、いわゆる教養教育にとどまらない学際的な学習を期待するものです。社会の高度化・複雑化が進行する今日、法と政治を学ぶ者にとって、外国語科目・情報処理科目等の履修、さらには、経済学・歴史学・哲学・生命科学・工学などの他の専門科目の履修が不可欠であることは、自明とさえいえるからです。これらの科目群は、九州大学全学の教員の協力により実施され、入学後最初の1年間は、主として「基幹教育科目」を履修することになります。

刑事政策(武内教授)

 法学部の「専攻教育科目」は、法学部の教員が担当する法学・政治学の専門科目群です。それぞれ学界等で中心的に活躍中の教授陣が、各自の研究活動を踏まえ、長年の実績・知見からそれぞれに工夫を凝らした教育活動を実践します。九州大学法学部の擁する教授陣には、外国人教員や弁護士など、多彩な顔ぶれが含まれ、日常的に、多様な教育活動が展開されていることも特筆に値します。
 入学当初の1年間は、「基幹教育科目」を通じて「大学での学び」に必要な基礎的スキルと知的基礎体力を身につけ、2年次以降の法学・政治学の専攻教育では、積み上げ型に配置された入門・基盤・展開科目を、学生各人のニーズに即して、段階的・体系的に履修することができるのです。
 また、2019年には、法科大学院の既修者コースの教育内容と一貫した体系的教育を行う「法科大学院連携プログラム」を開設しました(本パンフレット21頁「法科大学院連携プログラム(法曹コース)の紹介」を参照)。

外交史(中島准教授)

2ページ

5つのグループからなる法学部専攻教育科目

 九州大学法学部の提供する専攻教育科目は、大きく以下の5つのグループにわけることができます。これらのグループからバランス良く、あるいは必要とあればどれかに重点を置いて学べるように、時間割の配置などで工夫がされています(なお、主な授業科目は年度によって変更されることもあります)。

1. 基礎法学

 憲法、民法、刑法といった現行の法律を中心に学ぶ実定法学と異なり、基礎法学は、法の歴史・思想や外国の法律を含めて、より広い視点から法の様々な側面を考察する学問です。現行の法制度を学ぶうえで、こうした視点からの広く深い理解は不可欠で、九大法学部では基礎法学教育を重視しています。
(主な授業科目)
法哲学、日本法制史、西洋法制史、東洋法制史、ローマ法、法社会学、比較法、中国法、情報法、紛争管理論など

2. 公法・社会法学

 公法学・社会法学の課題は、国家と市民に焦点をあてた「社会認識」を深めること、および「人権の尊重」や「公共性の実現」が法を通じていかにして可能かを探ることにあります。社会における公正・平等の実現や、市民の主体的参画を可能とする法システムを構想することを学びます。
(主な授業科目)
憲法、行政法、租税法、行政学、労働法、社会保障法、経済法など

九大法

労働法(新屋敷准教授)

国際私法・国際文化遺産法ゼミ(八並准教授)

3. 民刑事法学

 交通事故、医療ミス、傷害・窃盗事件、不法侵入、名誉毀損、少年犯罪…。隣人との紛争、商品や土地の購入、借金、会社の設立…。さらには離婚や遺産相続などなど。このような私たちにとって「身近な」ことがらを法的に検討するのが民事法学や刑事法学です。
(主な授業科目)
民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、少年法、刑事政策など

4. 国際関係法学

 現代において、国際関係の舞台に登場する様々な問題は、私たちの日常生活と密接につながっています。パンデミック対策と出入国管理、環境汚染対策、フィンテック・AI・自動運転技術の社会実装等、日々のニュースで耳にする国際的な諸問題を、法的立場から分析するのが国際関係法学です。
(主な授業科目)
国際公法、国際私法、国際取引法、知的財産法など

5. 政治学

 私たちには、選挙をはじめ様々な場面で国や自冶体、あるいは世界の進路について、市民として、あるいは政治家や公務員としてなど、多様な立場から「政策」の決定にかかわることが求められています。政治学は、これらの判断や活動の基盤をなすものの見方を学ぶものです。
(主な授業科目)
政治学、政治学史、政治史、国際政治学、比較政治学、外交史など

少人数ゼミナールの重視

 九州大学法学部における教育手法の特色の一つに、大正13年の創立時以来、少人数教育の場としてゼミナール(ゼミ)を重視してきたことが挙げられます。現在も各種のゼミを多数配置し、ことに、3年次・4年次の「高年次ゼミ」は、必修科目として位置づけられ、法学部の教員が各自特色のあるゼミを担当しています。ゼミという場における、教員と学生、学生相互間の活発な討議・研究は、人間的な連繋を深め、まさに主体的に学ぶことの意義を体得しうる絶好の機会といえます。加えて、ゼミ単位でのスポーツ活動、休暇中の合宿、旅行等も盛んに実施されています(本パンフレット10頁、11頁をご覧ください)。

憲法ゼミ(赤坂教授、高橋准教授)

3ページ

法学部1年生

講義紹介 法学入門

南野 森 先生

 法学部に入ったからといって、九大では、― 東大や京大も同じですが― 法学の授業がすぐに毎日始まるわけではありません。法学は「大人の学問」とも言われますが、きちんと理解するのが難しいところがあり、いきなり1年生から法学にどっぷり浸かるよりは、最初の半年や1年、歴史学、哲学、論理学などの一般教養(と外国語)の勉学に費やした方が有効だという考えからです。また、せっかく総合大学(University)に入ったのに最初から最後まで専門の勉強のみというのは、もったいないとも言えるでしょう。とはいえ、法学部に入ったのに法学の授業がゼロではそれもまた面白くない…。そこで九大法学部では、1年生の前期に講義科目「法学入門」と「政治学入門」を提供しています。
 この講義では、1年生全員が入る大教室で、教員が90分間、延々と一方的に話し続けます。このような授業スタイルには、高校の授業に

比べれば約2倍の長さがあるし、先生は教室の前の方でマイクで喋っているし、板書もほとんどないし、出席確認も宿題もない…と戸惑うだろうと思います。板書やプリントの無いなかで、学生は集中して先生の講義を聞き、何が重要で何が重要でないかを即座に判断し、ノートにまとめていかなくてはならないわけですから、90分講義が終わると多くの学生はヘトヘトになります。しかしこういう努力を続けることによって、他人の難しい(退屈な?)話を聞き、考え、まとめるという、将来どのような分野に進むことになっても必要になる能力を身につけなくてはならないのです。法学部は昔から「潰しがきく」などと言われ、実際さまざまな分野への進路が存在しています(決して全員が司法試験を目指すわけではありません!)が、実はそれは、このような法学教育の(一見すると退屈そうな)スタイルが様々な分野で活躍できる「強い頭」を育ててきたからかもしれません。
 法学の勉強は、一に読むこと、二に読むことです。教員が薦めるさまざまな本や論文を読み、考えること(さらに自分の考えたことを友人と議論すること)が法学部では不可欠です。そしてそもそも法律とは、社会を良くするための道具です。したがって、読書好きで、日本や世界の様々な問題に関心がある(=日頃から新聞をきちんと読んでいるような)高校生は、法学部にとくに向いているでしょう。退屈そうに見える講義でも、聞き続け、考え続け、そして家や図書館で読み続けると、あるとき突然面白くなってくるはずですよ。いかにも昔ながらの大学らしい「法学入門」の講義、どうぞお楽しみに!

講義紹介 政治学入門

岡㟢 晴輝 先生

 皆さんの多くは、法学部では「法」について学ぶことができる、と考えていることでしょう。もちろん、間違いではありません。しかし法学部では、法学だけでなく政治学も学ぶことができます。法学部が法曹養成だけでなく公務員養成という社会的役割を担ってきたため、法学と政治学という二本立てになっているのです。しかし、それだけではありません。二本立てになっているのは、そもそも法と政治が密接不可分であるからでもあります。法は「政治の世界」で制定され、時に解釈・運用されています。他方、政治は「法の支配」という理念の下で行われています。法学と政治学という二本立てになっているのには、こうした実際的・本質的理由があるのです。
 さて、皆さんが九州大学法学部に入学すると、他の基幹教育科目に加えて、さっそく法学入門と政治学入門を受講することになります。政治学入門では、90分×15回の授業を通じて、日本政治に関する基礎知識を学んでいきます。特に工夫しているのは、次の二点です。まず、可能なかぎり一次資料に基づいて、日本政治の実態を理解するように心掛けています。たとえば、政治にカネ(政治資金)がかかると言われますが、そのことを一般的知識として学ぶのではなく、首相の政治資金収支報告書を分析することを通じて具体的に学ぶようにしています。一次資料を記載した詳細なレジュメを配布しているのは、そのためです。
 もう一つ工夫しているのは、討論の機会を設けるようにしているこ

とです。いうまでもなく、異なる意見を持つ市民同士が討論し、時に自分の意見を変える勇気を持つことが、民主政治においては決定的に重要です。それを学ぶ機会は、しかし、決して多くはありません。そこで政治学入門では、「住民投票は是か非か」、「衆議院にふさわしいのは小選挙区制か比例代表制か」といった論点をめぐって、主要な論拠を検討し、受講生同士で討論した後、Moodle で投票する、ということを試みています。写真は、法学部1年生が選挙制度をめぐって討論している姿を写したものです。
 政治学入門の授業評価は、法学入門の授業評価と同じく、インターネットで公開されています(九大法HP →在学生→法学部生→時間割・シラバス等)。授業の雰囲気を知るためにも、ぜひご覧になってください。

4ページ

法学部2年生

講義紹介 憲法

高橋 雅人 先生

高橋 雅人 先生

「憲法学」とはどんな学問ですか?

 一般的には、憲法9条をどう考えるのか、といった特定の条文や論点が取り上げられがちですが、「憲法学」は、端的に、憲法という対象を観察することです。憲法は、「最高法規」とされるように、国内の法の最上位に位置づけられています。したがって、「すべての法は憲法に通ずる」とでも言いましょうか、憲法の研究をしていると、ほかのさまざまな法分野を見ることができます。
 皆さんは、アサガオの観察をしたことはありますか。どの視点に着目して、どのように観察するのかによって、発芽時期や様子、葉脈の展開、花のつく時間などいろんな研究結果が出ますよね。憲法学もこれに似ています。憲法はどのようにできたのか、そもそもなぜ憲法があるのか、いま憲法がどのように機能しているのか、憲法と他の法との関係はどのようになっているのか、他の国の憲法はどうなっているのか(比較憲法)、などなど多角的な「理論的な研究」が行われています。また、「実践的な研究」も多々あります。憲法の定める国の仕組みの根幹にかかわる政治や行政の改革に対する分析や評価、また感染症対策のように政策により人の自由が制限される場合の人権保障の問題への取組みなど、憲法の文言や趣旨をいかに実現するか、日々研究が重ねられています。

法学部で養われる力とはどんなものですか?

 まずは、論理的思考力です。事件を法的に解決するには、法解釈を通じて、事件の事実(物を壊した)に法(器物損壊罪という刑法や、損害賠償を定めた民法)を当てはめて解決します。このとき、事実の整理と当てはめる法の解釈を通じて結論を導き出す訓練は、論理的思考力の向上に役立つでしょう。

また、議論の力です。議論の際に、相手の主張との争点を抽出する力と、論拠をもって反論する力もつくでしょう。意外なところでは、法概念の厳密さに触れ、言葉づかいに敏感になるように思っています。

先生がご専門にされている分野があれば教えて下さい。

 憲法のなかでも、主に「行政権の統制」を研究対象としています。今日の行政権には、「集中」と「分業」の二面性があります。例えば、首相の権限強化という中央への権力集中が指摘できる一方、もともと行政権がしていた仕事を民間事業者などに任せる民営化や、コロナ対策でも見たように、専門家の見解に委ねざるを得ない専門特化も現代の特徴です。これらは、何も日本に限らず、世界的な現象です。とりわけ、ドイツでは、これらを法律や裁判によって統制しようと取り組んでおり、法律や裁判で十分に規律していない日本からすれば大変参考になるため、ドイツの憲法学との比較研究をしています。とはいえ、テロや戦争、はたまた感染症などへの対応に迫られると、こうした法的統制がないがしろにされる恐れがあり、そうした事態での権限行使の統制の仕組みも必要だと考えています。

高校生に一言お願いします。

 法学部(法律学・政治学)は、多様な問題関心を受けとめることのできる器の大きな学部だと思います。現に私は、高校生のとき、哲学に関心がありましたが、法学部ではその関心を深めることもできました。大学で何ができるかではなく、何がしたいか、が大事ではないでしょうか。社会に出ていかに活躍するかを見据えて進路選択をするもよし、純粋に学問的関心から飛び込むのもよし、いずれにせよ、自ら選んだ道は、いつか自らをも満たす花となるのではないでしょうか。

講義紹介 刑法

高橋 雅人 先生

高橋 雅人 先生

刑法とはどのような法律ですか?

 刑法は、何をすれば犯罪となるのか、どのような刑罰で処罰されるのか、を定めた法律です。この法律では、いろんな面でバランスをとることが大事になってきます。人の利益を守るためには積極的な処罰が必要となると考える反面、刑罰によって人の自由を制約するものであるのだから消極的に罰さなければならないとも考えなければなりません。また、あらゆる個別的な事情に条文を当てはめるため柔軟性が必要となる一方で、ルールとしての役割があるから安定性も必要になります。このような正反対の性質を常に考えなければならないのが刑法です。

刑法学の魅力とは何ですか?

 刑法学は、実践的な学問でありながら哲学的な学問でもあるという特徴があります。犯罪を行う人がいる以上、刑法には実用性が求められます。しかし条文を適用するには、解釈が必要となり、そこでは多くの難題に遭遇します。殺人罪を例にとって考えてみましょう。「人を殺す」という行為が殺人罪に当たるのですが、「人」とは何か(胎児や脳死状態の患者は?)、そもそも「殺す」とはどのような行為なのか(道端で急病状態の人や自殺しそうな人を放置した場合は?)など、条文を現実の事案に適用するためには、多くの問題を明らかにしなければなりません。このように刑法は実用性を求め、突き詰めていくと哲学的な物事の根本的な問いに行きつくのです。

法学部ではどんなことを学びますか?

 法学部では主に法律や政治学について専門的に学びます。法律と一言でまとめられていますが、目的によって様々な法律があり、国によってその中身も多種多様です。それらの法律を過去の裁判所の判決や学者の方の体系書などを読み解きながら理解していきます。そしてこれらを通してリーガルマインドというものを身に付けていきます。論理的に考える「思考力」、裁判所の判例などを読み解く「理解力」、議論の中で自分の意見を伝える「コミュニケーション能力」など様々な能力がこれに含まれます。この能力は法学の分野に限らず多くの分野で必ず役に立つはずです。

冨川先生のゼミはどのような活動をされていますか?

 私のゼミでは特定のテーマに絞り、それに関する判例調査を行っています。特に現在は、どこから未遂犯になるのかというテーマを何週間もかけて取り組んでいます。みなさんの高校での学修や法学部の講義の授業はいろんなテーマを広く浅く学んでいくのでかなり異なる学修だと思います。少人数で長期間、一つのテーマにとことん取り組んでいくと、今までの学修では考えられなかった新たな発見があります。

高校生に向けてメッセージをお願いします。

 法学部だからこそ出来ることは法律に触れることです。そして法律を扱うためにはあらゆる分野の様々な知識が必要となってきます。九州大学法学部に興味を持たれたみなさんは知的好奇心のある方が多いと思われますので、きっと法学に楽しさを見いだせるはずです。そして法学を学んでいく中で養われていくリーガルマインドが、みなさんの将来にきっと役に立つはずです。

5ページ

講義紹介 民法

高岡 大輔 先生

高岡 大輔 先生

民法とはどのような学問ですか?

 一言でいえば「普通の人」どうしの間の権利や義務の関係を扱う法です。このような法を私法というのですが、民法はその中でも一番基本的なところを扱います。土地の所有権が誰にあるか、契約が有効かどうか、事故の事後処理をどうするか、などといったことですね。もちろん家族法も民法に含まれます。人の生活に近いところにある法ですから、早くから発展してきました。だから、今の法学というものができあがっていくときにも、民法学はその母体のような役割を果たしたのですよ。

民訴など他の法律や学問との違いはどのような点だとお思いですか?

 民事訴訟法のような手続法は、権利を実際に実現するにはどういう手続を踏むのか、ということを定めています。民法は、どんな場合にどんな権利や義務があるのか、ということを決める実体法です。その中でも細かい規定が必要なときは特別な法律を作って個別に定めるのですが、民法は基本法ですから、大原則のようなことがたくさん書かれています。私法の土台を支えるということです。

先生が民法の研究をしようと決めた理由を教えてください。

 分野の点では、当事者間は対等で上下も強弱もないという理想が当時の私の性に合ったのかなと思います。企業法務の弁護士にも興味があって迷ったのですが、東京の大きな弁護士事務所でエクスターンシップをしたときに、研究の方が自分のやりたいことに近いのかなと思うようになりました。

先生のゼミではどのような事を行っていますか?

 基本的には、各自で選んだ民法上の争点について担当の回を決めて報告してもらいます。選び方は任せているので、漁師町の出身だから漁業入会権を扱いたいなど、あまり教科書では扱われていないようなテーマを選ぶ人もいますね。年に1回、他の大学の知り合いの民法の先生のゼミと一緒に三つくらいのゼミで合同ゼミをやっています。普段知らない人から評価されるのは刺激になるようです。

法学部ではどのようなことを学ぶのですか?

 法律を適用するとはどういうことなのか、それぞれのルールはどうしてそう決められているのか、どういう場合にどういうルールが必要になるのか、といったことを勉強してもらうことが重要だと思っています。法律を使う仕事に就かなくても、全く法律に関係のない生活をするということはありませんから、活かし方はいろいろあります。

先生が学生に求める力はどのような力ですか?

 日本語の文章を読む力をつけて欲しいと思います。理屈を読むのは小説を読むのとは少し違いますから、文字が読めるだけではなくて、こう書いてあるということは、こういう問題意識だな、こういう主張だな、こういうことを根拠にしているのだな、ということが読み取れないといけません。そうしてきちんとした組み立てかたを理解することは、次に自分の主張を書けるようになるためにも必要なのです。

最後に高校生へ一言お願いします。

 みなさんにはやりたいことはいろいろあると思いますが、勉強については何がやりたいか分からないという人もいると思います。法学部だといろいろな進路で学んだ内容を活用することができるので、そういう人にもおすすめできます。伊都キャンパスは静かで勉強するにはよいところです。大学でお会いできることを楽しみにしています。

講義紹介 政治学

出水 薫 先生

出水 薫 先生

先生が専攻されている「政治学」とはどのような学問ですか?

 学問としては、もっとも古い歴史のある分野です。人間は集団的に共同してしか生きられません。そこでの集団的意思決定や、力関係を考えることが不可避だから発展した分野だと考えられます。今では、「政府」を中心的な対象にしつつも、政治過程論や比較政治学など、かなり細分化された分野が多数あります。

「政治学」の魅力はなんですか?

 人間と社会をめぐる学問だということが、まず第一でしょう。また「床屋政談」という言葉がありますが、政治については、時間つぶしの対象として誰でも語ることができるということを示しています。ただ、印象論を超えて、分析として、あるいは規範的な観点で、政治を語るには、それなりの知識や経験などが要ります。その意味で、誰にも語れるようで、「玄人」としての語りには専門性が要るということも、面白味かもしれません。

先生が特にご専門にされている分野があれば教えてください。

 博士論文は、韓国の現代政治でした。高校生のときに韓国で発生した光州民主化運動に衝撃を受け、その頃から韓国に興味がありました。博士課程のときには、外務省の専門調査員として、釜山総領事館に勤務したこともあります。九大に就職してからは、日本の自治体をめぐる政治過程に研究対象がシフトしています。

講座やゼミではどのようなことをしていますか?

 主に2年生向けの科目として、「政治学Ⅰ・Ⅱ」という講座を担当しています。この講座では、受講する学生に、自由民主主義国家の中で生活する市民として、あるいは有権者として、政治に向き合うことの重要性について認識してもらうことを目的としています。また、ゼミでは、「書を持って街に出る」をポリシーに、大学での議論のみならず、大学外での活動として過疎地域の自治体を巡ったり、社会的な取組みを行っている人に会ったりと、抽象的な理論と具体的な実情を結びつけて理解することに重点を置いています。昨年は、対馬市の地元の人々と共同で、廃校となった小学校の活用について検討するといった活動をしました。

九大法学部で学ぶことの意義について、どのようにお考えですか?

 九大法学部の出発は、「大正デモクラシー」の時期であり、官僚養成機関としてつくられた先発の法学部とは異なる伝統があります。あえて言えば、市民社会や地域から、国を牽制する役割を担う人々を排出してきたといえるかもしれません。他の大規模総合大学の法学部と異なり、少人数演習が、手厚く準備されているのも、特色です。もちろん空間的に近隣のアジア諸国と近く、アジアに関しては、あらゆる分野が充実していることも特徴です。法学や政治学を学ぶにしても、国や東京からの目線とは異なる観点を、距離の近い教員と学生との関係の中で獲得することが期待できるでしょう。

高校生に一言お願いします。

 受験勉強としてではなく、世界や社会に関心を向けてください。岩波ジュニア新書というシリーズは、大抵の高校図書館にあるはずです。3年間の高校時代に50冊は読破してほしいところです。また、特に近代以降の歴史について学んでくることは、入学後の学習を助けると思います。

6ページ

法学部3・4年生

 3・4年次は専攻教育科目の履修をつうじて、学生各自が自分自身の問題関心に沿った学びを深める期間です。 法学部教育の共通インフラとも言うべき「基盤科目」の履修をふまえて、より多種多彩な「展開科目」群の中から各自のニーズに応じて自由に科目選択を行い、卒業後の進路を見据えた自前の学修計画を立てることができます。また、3年次から始まる高年次ゼミナールは、少人数クラスの濃密な議論をつうじて高度な専門性を育む法学部教育のコアであり、ゼミナール担当教員は活発で個性豊かなゼミナール運営に特に力を注いでいます。3・4年次の目標は、学生一人ひとりが自分なりの明確な目的意識をもって専門性を高め、大学での学びを実りあるものにすることです。法学部教員スタッフは、みなさんの目標達成に向けた学びを強力にサポートします。

講義紹介 東洋法制史・中国法

西 英昭 先生

西 英昭 先生

東洋法制史・中国法とはどのような学問なのでしょうか?

 東洋法制史は中国を中心とした東アジア諸国の法の歴史を学ぶ学問です。中国法は現代中国における法律について学ぶ学問です。

なぜそれを学ぼうと思ったのですか?

 直接のきっかけは、僕が学部4年生の頃に出たゼミです。現代中国法のゼミだったのですが、そこで学ぶ法律が今まで習ってきた日本の法律とは全く異なっていて、そして全く違う社会がそこにあり、中国人たちはそこで普通に暮らしているという、全く自分達とは異なる社会のあり方にまず驚きました。逆に今まで学んできた日本の法律の概念や体系は、気持ちいいほど音を立てて崩れていきましたね。そのカルチャーショックが一番惹かれた理由です。その時のゼミは必要に応じて歴史もやるという形式だったので、東洋法制史についても並行して学んでいました。

現在研究されて何年くらい経つのでしょうか?

 大学に入ったのが1993年ですから、もう20年以上経ちますね。大学院に入ったのは98年、ちょうど25年前ですね。

25年たった今でも熱は冷めないですか?

 熱が冷めないというか。飽きないですね。あの国には常に何かあるので(笑)。話題には事欠かないというか、ネタには事欠かないですね!

日本と中国の法律に似通っている部分はありますか?

 中国の今の法律は、特にここ20年程の間に日本や欧米などの制度をかなり取り入れたので、だいぶ共通している部分があります。けれどもベースにはやはり社会主義という制度がありますし、中国の伝統的な考え方も存在するので、それらと新たな要素とのせめぎあいが生じます。

法律があれば全くそれ通りに社会が動いているかというと、そうは言えないのですね。そういうあたりを研究していくっていうのも一つ面白い点なんですよね。

大学に入学される際は法律に興味を持たれて法学部に進学されたんですか?

 と言えればかっこいいんだけど、むしろ全然法律には興味がなくてですね。どちらかと言えば歴史が好きだったので、まあ今でも歴史をやっているわけですが(笑)。だからまあ、大学っていうのは法学部だったり文学部だったり枠組みっていうのはあるんですけれど、その枠組みも絶対的なものではないので。別に法学部に入って歴史をやってもいいわけですし。経済学部に入って法律やったっていいわけです。そこはむしろ、自分で自由にデザインする、それぐらいの勢いで大学で活躍してもらえると僕は嬉しいですね。

高校生に向けてアドバイスをお願いします。

 とりあえずいろんなものに目を向けて、まずは体験してほしいですね。どの分野でもいいです。とりあえず何か凝り固まった一つのあり方だけを求めるんじゃなくて、常に世の中は多種多様なので、自分とは違ったあり方に目を向けて、多様性というものにまず敏感になってもらいたいです。ひょっとしたら現在の我々とは違うあり方があるかもしれない。いろんなものを健全な目で疑って、いろんなあり方というものを体験してほしいです、そこを高校生には一番期待したいですね。また、高校だったら嫌っていうほど宿題やらテストやらが黙っていても降ってくるわけですけれど、大学は自分から獲りに行かないと何にも得るものがないんですね。積極的に何かを“獲りに行く”という自発的な姿勢が求められるわけです。なるべくそういう態度を高校生のうちに身につけておけば、大学生になっても困らないと思います。遠慮は要りません。自分なりに何か引っかかるものを感じたのであれば、そこには必ず何かがあります。自分がふと気になったこと、これを瑣末なことと片付けずにむしろ大事にして、それを手がかりに貪欲に追求してもらえればと思います。

法学関連所蔵図書資料(中央図書館・記録資料館管理) 憲法発布式御出門の図

明治文庫

『戦争と平和の法 De jure belli ac pacis』の初版本

7ページ

講義紹介 刑事訴訟法

豊崎 七絵 先生

豊崎 七絵 先生

刑事訴訟法とはどのような法律ですか、刑法との違いも含めて教えてください。

 刑法は、犯罪と刑罰を定めた法律です。この犯罪と刑罰をめぐる様々な問題を考察する学問が、刑法学です。
 これに対し、刑事訴訟法とは、刑事事件の手続を定めた法律です。刑事訴訟法学では、捜査にはじまり、検察官による事件処理(起訴・不起訴)、公判(裁判)、救済手続(上訴・再審)、そして裁判の執行に至る、刑事手続のあり方を考察します。
 X が警察官に犯罪の嫌疑をかけられた、さらにXは検察官によって起訴されたといっても、その人が犯人であるとは決まっていません。
 近代以降の国家においては、「手続きなくして刑罰なし」という格言の通り、A を裁判なしに犯人であると決めつけ、処罰することはできません。国家の持つ権力の中でも、刑罰権というのは大変峻厳であり、慎重に手続きを進めなければならないからです。

ゼミや講義ではどのようなことを教えてるのでしょうか?

 ゼミの内容については、毎年異なっています。各人が自由にテーマを選んで報告する、著名な刑事事件をひとつ取り上げて、その事件の手続上の問題点を深く掘り下げてゆく、新しい立法について検討する、最高裁の判例を読解・検証する、などなどです。
 ゼミでは、ゼミ生同士で、ディスカッションをします。「最高裁が言っているから正しい」といった、権威に頼るだけで中身のない発言をする人はまずいないですね。仮にそういう発言をすれば、「なぜ正しいか、説明(論証)して」と誰かに突っ込まれることでしょう。自分の頭でとことん考えて、自分の言葉で表現できる学生は、伸びますね。
 その他、他大学との合同ゼミを開いたり、沖縄や壱岐などでゼミ合宿をしたりすることもあります。

 講義では、捜査から始まる手続の流れにしたがって、その概要を解説してゆきます。その際には、現在の日本の判例・実務や学説を説明するだけでなく、歴史、諸外国の刑事手続、国際準則にも触れながら、日本の刑事手続が「当たり前」のものではないという相対化の視点をもってもらうことを心がけています。
 加えて講義の一環として、年に一回ゲストの方を呼んで、講演会を開いています。ゲストの方は、弁護士や事件の当事者の方が多いですね。現状をよく知る方のお話を聴いて、「生きている刑事訴訟法」を知ってほしい、というのが狙いです。もともとは民事しか関心がなかったけれど、講演会をきっかけに問題意識を深め、刑事事件に携わる裁判官になった卒業生もいます。

刑事訴訟法を研究するようになった理由はなんですか?

 学部生の頃、憲法や法律で定められている原理や原則がなぜ存在しているか、あるいはその原理や原則の内容として学説や判例が説明していることを「当たり前」として受け取っていいのか、ということがとても気になりました。また刑事手続に関していえば、理念と現実とのギャップが大きいことに大変ショックを受けました。特に、誤った有罪判決(冤罪)が現に存在するということを知って、その原因や防止策、また救済のあり方を総合的に考えてみたいと思いました。
 研究のスタイルは人によって様々ですが、私の場合、物事の根源まで考えたいという哲学的な関心を持つ一方、大学の外に出て、実務家と共同研究する機会も多いです。

高校生に一言お願いします。

 「公務員になりたい」、「弁護士になりたい」といった、どの職業に就きたいかというよりも、漠然としていてもよいので、社会でどのような役割を果たしたいか、何をしたいかということをよく考え、その「初心」を大切にしてください。そこにブレがなければ、どのような道(職業)を選択しても、後悔することはないのではないでしょうか。

講義紹介 国際私法・国際取引法

八並 廉 先生

八並 廉 先生

国際私法・国際取引法とはどんな法律ですか?

 皆様の中には、大学に入って海外留学をしたい方もいらっしゃるでしょう。安心な渡航計画にするためには、海外旅行保険や留学保険の検討も大切です。それらのパンフレットをいくつか読んでみると、渡航先で「法律上の賠償責任」を負った場合にも保険金が支払われるという内容の説明が書かれていることがあります。これは、留学中に間違えて他人のものを壊してしまったこと等を理由として高額な賠償請求に対応する必要が生じた場合の備えになる項目です。ところで、この「法律上の賠償責任」という表現にでてくる「法律」というのは、「日本の法律」のことでしょうか?それとも「留学先の国の法律」を指しているのでしょうか?
 このように海外のことが関わってくる法律問題について理解するために必要になるのが、国際私法や国際取引法です。そこで学ぶ知識や考え方は、将来どのような生き方を選んでも役に立つはずです。

国際私法・国際取引法の魅力について教えてください。

 国際私法・国際取引法の勉強を進めていくと、必然的に、諸国の法の間にみられる相違点や共通点に気づくようになります。それぞれの国の法に反映されているその国の文化や歴史について理解を深めるきっかけになるのも、この分野の勉強をしていて楽しいところです。

九州大学法学部で学ぶことの意義はなんですか?

 世界に開かれた学びの環境が魅力の1つだと思います。国際ワークショップ・講演会・インターンシップ等、海外の大学や国際機関の方々と交流できる機会を充実させることに力を注いでいますので、学生の皆様に活用してほしいと思います。また、留学を希望する場合のサポート体制も整っていますので、このパンフレットのGV プログラムや国際交流・国際教育に関するページもぜひ読んでみてください。

大学外ではどのような活動をされているのですか?

 文化財の国際取引規制や返還問題に関するユネスコ(UNESCO)の諸会議に出席しています。また、ユネスコの諮問機関であるイコモス(ICOMOS)でも、法律問題等を扱う委員会(ICLAFI)に所属しています。難しい問題の連続で色々な課題を抱えていますが、学生の頃から興味を持っていた分野なのでやりがいを感じています。

高校生へ一言お願いします。

 九州大学法学部で皆様にお会いできるのを心から楽しみにしています。勉強に疲れた日には、映画『グリーンブック』もおすすめです。作品として好きなのが一番のおすすめ理由ですが、SDGs 目標10(「人や国の不平等をなくそう」)等、法学部で学ぶ色々なことに繋がりのある映画です。

8ページ

講義紹介 政治学史

木村 俊道 先生

木村 俊道 先生

政治学史とはどのような分野ですか?

 他の大学では「政治思想史」とも言われる分野で、古くはプラトンやアリストテレスなどの古代ギリシャの思想から、20世紀の思想までの2500年にも及ぶ政治学の歴史を追いかける分野です。具体的には、個々の政治思想家や、デモクラシーや自由、国家などの政治的概念の歴史的な展開について研究しています。

講義ではどのようなことをやるのでしょうか?

 基本は時代順で、プラトンやマキャベリ、ホッブズなどのそれぞれの時代を代表する人物と古典を中心に見ていく講義です。高校の授業では著者とその著作をセットで覚えるというところまでに留まっていたと思われますが、この講義ではそれらの作者が、政治や国家などについて具体的にどのようなことを考えているか、またテクストの中でどのようなことが論じられているか、といったことまで踏み込んでいきます。

古典を研究対象とした理由はなんでしょう?

 いくつかあるのですが、大きなものとして今の時代の基礎となっている近代ヨーロッパの正体を探ってみたいというのがあります。言い換えると、今現在の私たちの価値や規範、あるいは政治や国家などの正体とは何かということを解き明かしたい、というような感じです。さらに、そのような考えを持つようなきっかけとして、高校時代に、世の中の規準や仕組みにふと疑問を抱いたことがありました。

一見当たり前のように見える所与の世界が本当に正しいのか、あるいはそれらがどのように作り出されたのかという疑問、それが近代の正体を探るということに繋がっていったというわけです。

高校生へのメッセージをお願いします。

 図書館などを利用して、興味を持った本は積極的に読んでみてください。先ほども言いましたが、私が政治学史という分野に興味を持ったのは高校時代の一冊の新書との出会いがきっかけでした。受験勉強に追われながら自分の時間を確保するというのはなかなか困難かもしれませんが、ぜひ良い本と出会ってください。ふと手に取った本が自分の興味を引き出してくれることもあるのです。そうすることで自分の周りの世界が全く違うものに見えてくるかもしれません。

伊都キャンパス・椎木講堂

講義紹介 情報法

成原 慧 先生

成原 慧 先生

情報法とはどのような法律ですか?

 情報法とはインターネットやメディアなどを通じて流通する情報に関する法的問題について研究する分野です。例えば、身近なところでいえば、インターネットで海賊版サイトから漫画をダウンロードして読むことは(なぜ)違法ではないのか、ツイッターに自分の写真が勝手に掲載されることはプライバシーの侵害にあたるのかなど、情報の流通に関する様々な法的問題について考えていきます。

情報法を学ぶ意義としてどのようなことがあるのですか?

 まず、今日の情報技術が発展している社会では、情報に関する法的問題が身近になっているため、社会生活を送る上でこの分野の知識が不可欠のものとなっているということです。日々暮らす中でも私たちはスマートフォンなどを通じてインターネットから情報を得て、SNS 上で友人とコミュニケーションをとり、また電車に乗るとIC カードを通じて情報が収集され、コンビニでお茶を買うだけでもポイントカードにより購買履歴が収集されています。こう考えると私たちは情報と無縁で生きることができませんが、そうした時に個人情報の保護や表現の自由など様々な法的問題が絡んできます。
 また、情報技術の発達にともない、自由や民主主義など近代社会の根本的な価値が問い直されるようになっています。例えば、最近ではフェイクニュースによって選挙結果が歪められるリスクが懸念されていますが、これは、自由な個人が多様な情報を吟味して理性的に判断し、政治のプロセスに関わることで民主主義が実現されていく、という近代社会の前提が問い直される問題でもあります。また、A(I 人工知能)はマイノリティーに対して不公平な判断をする傾向があると言われていますが、このことは翻って、そもそも従来の社会において人はマイノリティーに対して公平な判断をしてきたのかを問い直すことにもつながります。情報法は、情報技術の発展に伴う最先端の問題を追うだけでなく、自由、平等、民主主義など近代社会の基本原理・価値がそもそも何だったのかということを、情報技術が投げかける問題をきっかけに問い直していく学問でもあるのです。

情報法を研究するようになったきっかけは何ですか?

 元々、法哲学や政治哲学、その中でも特に自由論や権力論に関心があり、個人が自由に選択するとはどういうことか、私たちはどのように権力の影響を受けて行動しているのかということに興味がありました。そんな時にローレンス・レッシグというアメリカの情報法学者の『CODE』という本が2000年代初めごろ日本に紹介され、日本でもそれを受けて社会学者や法哲学者らが情報社会における自由の行方について議論するようになっていたのですが、彼らの議論を読んでいく中で、自由や権力の在り方が情報技術の発展によって根本的に変わってくるのではないか、そうであれば情報技術がもたらす具体的な問題を踏まえ自由の保障のあり方を考えなおす必要があるのではないかと考え、情報法を学んでみようと思いました。
 従来は、法律や道徳などにより私たちの自由は制約されていましたが、今日ではアーキテクチャと呼ばれる、物理的・技術的な手段によって私たちの自由は制約されるようになっています。例えば、スマートフォンにフィルタリング設定がされている場合、自分が興味のあるウェブサイトを見ようと思ってもブロックされることがあります。従来は、校則や親の言いつけなどで自由が制約されていたとしても、こっそりと破ることができ、また禁止されている行為であっても様々な事情から正当化される余地がありました。しかし、技術的に行為の可能性があらかじめ制約されてしまうと、逆らうことができなくなり、また、本当は正当化される行為であったものでも制約を争う余地がなくなり、見えないうちにあらかじめ私たちの自由が奪われていきます。ここには、個人の自由にとって根本的な問題が潜んでいるのではないかと思ったことが、研究の原点です。

高校生へのメッセージをお願いします。

 法学部を目指す高校生の皆さんには、法律の専門知識を今から勉強する必要はありませんが、哲学や歴史など人間や社会に関する問題について扱った本を幅広く読んだり、友だちと話したりして、関心を広めてもらいたいと思います。大学に入ってからも、これは何か違和感があるなと思ったことや、これって何だか面白いなと思ったことなど、自分の中の小さな疑問や好奇心を大切にして学び続けてほしいと思います。

9ページ

丸谷浩介ゼミ 社会保障法

1 社会保障法とは

 社会保障法とは、年金や医療保険、生活保護、障害者や高齢者、そして子どもの福祉について、法律学で考える学問体系です。憲法はもちろん、労働法や行政法などに関係ある分野で、時には経済学や金融の知識を学ぶこともあります。

2 ゼミの雰囲気

 各学年10人ずつ、男子12人、女子8人の計20人で構成されています。発表の際に作られるグループはランダムで、いろいろな人と話す機会があります。月に一回程度ゼミ内のコンパ、夏にはゼミ合宿があり、仲良く活動しています。

3 グループ発表

 毎週あるグループ発表では、決められたトピックについて発表を行います。グループは基本的に4年生1人と3年生3人で構成されており、4年生は3年生のフォローをしながら進めていきます。発表1週間前には先生との打ち合わせで発表の方向性を決め、その後レジュメの作成•発表割の決定を行います。発表準備では何に焦点を当てて発表するか、グループメンバーと相談することが1番大変ですが、やりがいがあります。
 発表後には、発表を踏まえてグループ内で話し合いをし、発表者とその他のグループで質疑応答をします。他にも、厚生労働省年金局の方から年金財政について詳しい話を伺ったり、障害者福祉や生活保護の裁判を扱った弁護士さんから事件について講義をいただくこともあります。
 他にも、主張が対立するトピックの時にはディスカッションをすることもあります。
 前期は年金保険法、後期は障害法を扱っており、各分野についての学びを深めています。

4 ゼミ活動を通して

 社会保障について学習することで、社会に出てからも使える知識を身に付けることができます。また、発表やグループ討論を行うことから、人前で自分の意見を発信することに慣れることができます。卒業生は国家公務員や地方公務員になった方が多いですが、金融、メーカー、ITなどの民間企業のほか、法科大学院などに進学して活躍されておられます。

5 先生からの言葉

 社会保障法は私たちの暮らしに身近であるだけでなく、政治的にも大きな分野です。少子高齢化だけでなく人の生き方、誰が誰を助けるべきか、助けるべきではないか、いつも意見が対立します。学生にはいろいろなものを見聞きして、一人でしっかり考え、立場が異なる人と論理的に議論が出来る様になって欲しいと思っています。

丸谷ゼミ―ゼミ風景写真

10ページ

德本穰ゼミ 企業法

1 その分野を研究しようと思ったきっかけ

 このゼミは、企業法を対象としたゼミで、そこでは、企業法をめぐる今日的課題について、考察しています。
 それでは、企業法とは、どのような法律なのでしょうか。企業法とは、実質的にみますと、広く、企業の組織や活動等に関わる法律のことで、形式的にみますと、商法、会社法、金融商品取引法等の法律が含まれますが、それだけにとどまるものではありません。
 私が、この分野に興味を持ったのは、九州大学法学部の学部生の頃に、その当時、日本では非常にまれであった敵対的企業買収の事例に接したことが、ひとつのきっかけとなりました。
 敵対的企業買収の事例は、当時米国では頻繁に発生していましたが、なぜ日本ではまれなのか、敵対的企業買収に反対する対象会社はどのように行動すればよいのか等、当時の日本では数多くの未知の課題がありました。
 そういう未知の課題を考えてみたいということが、ひとつのきっかけとなり、後に、九州大学大学院法学研究科(当時:現九州大学大学院法学府)に進学し、また、米国の大学院にも留学して、研究の道に進むことになりました。
 企業法の分野は、今でも、日々新しい問題が現れ、また、企業活動の国際化に伴い、ダイナミックに展開し、数多くの未知の課題が発生し続けています。

2 その分野を研究してよかったこと

 大学の教員になりましてから、縁がありまして、企業法の分野における興味深い課題に、具体的に関わらせていただく機会に恵まれてきました。
 時系列的にみますと、これまでに、経済特区に企業が進出するには、どのような法規制が関わってくるのか、とりわけ、外国の企業の場合には、どうなるのかという課題や、敵対的企業買収に対する対抗措置や防衛策について、企業価値を毀損するような敵対的企業買収は抑制し、企業価値を向上させるような敵対的企業買収を促進するには、どのようなソフトローが望ましいのかという課題や、商法等の法制度が異なる外国に対して、その整備支援にあたり、どのように関わり、どのような内容の法制度案を提言することが適切なのかという課題等に、深く関わらせていただいてきました。
 このような経験を通して、企業法の理論が、現実の世界にどのように応用され、その結果、現実の世界がどのように展開してゆくのかを、垣間見ることができたことに、大変ありがたく深く感謝しています。
 このゼミでも、参考文献や裁判例等だけではなく、現在発生している企業法をめぐる国内外のニュース等についても採りあげながら、考察を行っています。

3 課外活動ではどのようなことを行っているか

 このゼミでは、課外活動を重視しています。これまでの約3年間は、コロナ禍の影響により、残念ながら、十分な課外活動を行うことができませんでしたが、その間も、例えば、法学部東京同窓会の方々の御協力を得て、オンラインによります研修・旅行を実施したりしました。また、コロナ禍前やコロナ禍が落ち着いてきてからは、学外からゲスト・スピーカーの方(企業の方、法務省の方、官公庁の方等)をお招きして御講演をいただいたり、ゼミのみんなで懇親会を行ったりしてきました。
 今後は、さらに、課外活動を広げて、ゼミのOB・OG会を実施したり、企業や官公庁や法律事務所や会計士事務所等を視察させていただいたり、他大学のゼミとの合同ゼミを行ったり、合宿をしたり等もしてゆきたいと考えています。
 私は、「よく学びよく遊べ」という言葉が好きですが、企業法の理論について共に学びながら、課外活動も共にし、みんなで親睦を深めてゆけるような、そのようなゼミにしてゆきたいと思っています。

德本ゼミーゼミ風景写真

11ページ

九大法学部生の生活をご紹介‼

4年 山口 佳乃

私は法学部での学業以外に、教員免許取得を目指して勉強しています(時間割の青色部分は、教職課程です。なお、「日本国憲法」は、教職課程の学生向けの必修科目であり、法学部では他にも多数の憲法科目が開講されています)。勉強は正直大変ですが(笑)、学生生活は後悔なく過ごしたいもの。今のうちにやれることはやっちゃおう精神なのです。環境が整った九大法学部は、みなさんの「やりたいこと」が実現できる場所ですよ!

● 時間割を紹介!

1 年後期

3 年前期

Q&Aコーナー‼

Q休み.の日は何をしていますか?

A.バイトもない休日は、お出かけすることが多いです。姪浜や天神・博多まで行き、友達や先輩・後輩と買い物をしたり映画を見たりご飯を食べたり、……ただ歩いたりしています。
また、長期休みの際は北九州や佐賀・長崎まで行くこともあります。(九州大学のある福岡は、「自然と都市が調和する街」です。その時の気分に合わせてお出かけしています。)

能古島

Q九大法学部生だからできることはありますか?

A.私は、「地域と深く関われること」だと感じています。大学に入って一番驚いたのは、地域の組織や現場と深い関りをお持ちの先生がとても多いことです。私が所属するゼミは太宰府市の五条地区と関りがあり、太宰府天満宮の注連縄づくりや餅つき大会に参加しています。大学の外でしか聞けない声をたくさん聞けるのは、九大法学部の強みではないでしょうか。

太宰府天満宮にて

12ページ

  • 1年 臧西 受験では「自分」を知ろう!

    1年 臧西  受験生活を送る中で私は特に「自分をよく知ること」を意識しました。私の場合、「少し努力すれば達成する計画」は結局達成できないことが多いため、勉強をコンスタントに進めるために、必ず達成できる程度の比較的少量のタスクをこなしていました。また、学校の教室や自習室などを使って演習をする時は人の目が多い場所を選びました。私は人に見られていないところで努力をすることが苦手だったからです。このように自分を客観的に見つめ直し、時期ごとに最適な方法を常に取り入れることが合格につながったと考えています。
     九州大学に入学して、学部一年生となってからは毎日が新しいことの連続です。大学は自由だとよく言われますが、本当に高校と比べかなり自由になったと身をもって実感しました。興味のある基幹教育科目を選択し、難しい話を唸りながらもなんとか理解しつつ、忙しくも充実した日々を送っています。サークルは放送研究会に所属し、番組作りに挑戦しています。今まで頭の中でこのような企画を行いたいと考えてはいるものの、形にできる機会がありませんでした。自分のアイデアなどを他人に説明し、客観的な目線のチェックを入れてもらうという初めての経験を積み重ねつつ、リスナーが楽しめる番組を目指しています。

  • 2年 山﨑優太 サークルもバイトも本気!

    2年 山﨑優太  私は毎週土曜日に九大祭実行委員会のメンバーとして活動しています。九大祭とは毎年秋に伊都キャンパスで開催される学園祭です。コロナの影響で去年は4年ぶりの対面開催でしたが、2日間でおよそ2万人が訪れました。九大祭の運営はほとんど学生主体で、会場設営や企業から協賛をいただいたり、当日芸能人を呼んだりすることもすべて学生で行います。九大祭は大学の施設を借りて行うイベントである以上、出店してくれる団体に安全面等で一定の規制をかける必要があり、時には利害対立が生じます。そこで、いかに折衷案を見出して学祭全体の利益を目指すかが重要になります。これらは、ここでしか得られない経験です。さて、2023年の九大祭は11月4日(土)・5日(日)に開催されます。興味のある方はぜひいらしてください。
     また、放課後は天神で塾講師としてバイトをしており、高校生と中学生に英語や数学を教えています。塾講師は自分の受験経験を活かせるよい仕事です。生徒の多くは、自分とは異なる学習経験や将来の目標を持っており、刺激をもらうことが多いです。また、挨拶や社員の方とのメールのやりとりを通して、マナーなどの社会経験を得ることができます。

  • 2年 山本啓太 仲間との勉強は有意義です!

    2年 山本啓太  1年生の授業とは大きく異なり、法律・政治学の専門的な授業(国際公法・政治学Ⅰ・外国法律書講読など)が始まります。現在は、前期末テストに向けて、授業の予習・復習を中心に勉強しています。忙しくはありますが、放課後に友人と議論を交えつつ協力しながらする勉強は私にとって新鮮なもので、楽しく、充実した日々を送っています。
     加えて、2年生からは、法政基礎演習も始まります。発表の仕方や、資料の作り方など、これからの授業で使える技術を少人数のクラスで教わることはとても有意義だと感じています。私は刑事訴訟法のクラスに参加しています。このクラスでは、刑事裁判で使われる「証拠」に関連する問題が争点となっている判例を読み、それについての発表を通して議論を深めます。
     私は、科学的証拠(DNA型鑑定)が持つ問題点について発表しました。DNA鑑定と聞くと、絶対的な証拠のように考えていましたが、証拠の保管方法や、鑑定方法に不備がある場合、誤った結果に判定されてしまう場合があるという事実に驚かされました。
     また、判例を読んで分析するのは初めての経験であったこともあり、検討が足りていない点もありました。不足している点に対する適切なフィードバックをもらえることも大きな魅力だと感じます。

  • 3年 吉田響 学問はどんどん奥深く…

    3年 吉田響  私は専攻科目を中心に週17コマ受講しています。3年生からは週に1回のゼミ(演習)が始まり、私は最新の憲法判例や議論を中心に発表や討議を行っています。具体的には、旧優生保護法やマイナンバーをめぐる訴訟の最新判例を読み込み、多様な学説の対立に触れてきました。ゼミの準備は大変ではありますが、準備、発表そして議論という一連のプロセスの中で、自分の考えを深めることができるほか、他の人の発言から新しい発見が生まれるのも良い刺激となっています。講義では、これまで養ってきた基盤科目(憲法、民法、刑法等)の知見を基礎に、展開科目が開講されます。なかでも、「外交史」では、文書や史料にみる戦後外交の舞台で活躍した政治家や官僚の言葉を通して、教科書的な説明に留まらない外交交渉の深遠に触れることができます。また、今まで学習してきた日本史や憲法論的考察が有機的に結合し、一つの学問としての面白さを感じる講義です。
     また、私は並行して就職活動を始め、現在は土日に説明会への参加やインターンシップの選考を受けているほか、旅行を通して九州の自然や文化、美味しい食べ物に触れ、とても充実した日々を送っています。法学部は司法試験から民間企業への就職、公務員試験と進路が幅広いですが、皆自分の目標を設定して、早くから努力する人が多く、常に切磋琢磨できる環境が魅力的です。

13ページ

  • 九大でともに学び考えよう
  • 赤坂 幸一
  • 浅野 雄太
  • 荒  達也
  • 五十君麻里子
  • 出水  薫
  • 井上 宜裕
  • 入江 秀晃
  • 上田 竹志
  • 江口 厚仁
  • 遠藤  歩
  • 大賀  哲
  • 大脇 成昭
  • 岡﨑 晴輝
  • 笠原 武朗

14ページ

  • 川﨑 邦宏
  • 川島  翔
  • 木村 俊道
  • 熊野 直樹
  • 小池  泰
  • 小島  立
  • 七戸 克彦
  • 嶋田 暁文
  • 新屋敷恵美子
  • 鈴木 崇弘
  • スティーヴン・ヴァンアーツル
  • 高岡 大輔
  • 高橋 雅人
  • 武内 謙治
  • 田中 孝男
  • 田中 教雄

15ページ

  • 田淵 浩二
  • 寺本 振透
  • 德本  穣
  • 冨川 雅満
  • 豊崎 七絵
  • 中島 琢磨
  • 成原  慧
  • 西  英昭
  • 西村 友海
  • 野澤  充
  • 蓮見 二郎
  • 韓  相熙
  • 福原 明雄
  • 堀野  出
  • マーク・フェニック
  • 松井 仁

16ページ

  • 丸谷 浩介
  • 南野  森
  • 八並  廉
  • 山口 道弘
  • 山下  昇
  • 柳 愛林
  • 香山 高広

左上:イースト1号館、大講義室Ⅱ、イースト2号館 右上:中央図書館 左下:イースト1号館よりセンターゾーンを望む 右下:イースト1号館

イーストゾーンの自然

17ページ

「九州大学大学院法学府」の紹介

 九州大学には、法曹(裁判官、検察官、弁護士)を養成するための大学院法務学府(法科大学院)だけでなく、法学・政治学の研究者や高度専門職業人を養成するための大学院法学府が設置されています。法曹を目指す人は、大学卒業後、大学院法務学府に進学することになりますが、法学・政治学の研究者を志す人や、法学・政治学の専門知識を活かした職業に就くことを考えている人は、大学院法学府に進学することになります。
 大学院法学府では、演習(ゼミナール)への参加や論文の執筆を通じて、法学・政治学のさらなる研鑽を積むことができます。長い伝統を誇る大学院法学府(旧・法学研究科)は、大学・研究所だけでなく、社会のいたるところで活躍する数多くの修了生を輩出しています。
 2年間の修士課程には、後述する「国際コース」のほか、法学・政治学の高度な専門知識を習得し、社会で活躍する人材を養成する「専修コース」と、法学・政治学の研究者を養成する「研究者コース」があります。いずれのコースでも、少人数の演習に参加し、法学・政治学の専門書を読み、議論を闘わせることになります。こうしたコースワークに加えて、2人の指導教員の助言を受けつつ、自分の選んだテーマに関する修士論文を書くことになります。コースワークを終え、修士論文の審査に合格すると「修士(法学)」の学位が授与されます。
 修士課程修了後、「専修コース」の学生は、民間企業や政府機関などで法学・政治学の専門知識を活かした仕事に就くことが想定されていますが、「研究者コース」の学生は、さらに3年間の博士後期課程に進学することになります。博士後期課程でも、コースワークはありますが、中心になるのは、なんといっても博士論文の執筆です。
膨大な文献を渉猟し、それらを乗り越える新知見を示す博士論文を書くのです。博士論文の審査に合格すると、はれて「博士(法学)」の学位が授与されます。博士後期課程修了後は、大学・研究所などで教育・研究に従事することが想定されており、実際、数多くの修了生が全国各地の大学で教鞭をとっています。
 なお、大学院法学府には、英語で授業を行い国際的に活躍する人材を養成する「国際コース」も設置されており、さまざまな国からの留学生が英語による授業を受けています。もちろん、日本人学生も「国際コース」に入学することが可能です。
 皆さんのなかには、すでに大学院進学を考えている人もいるかもしれません。そうした人にとっては、大学院大学に入学することは、たいへん有益でしょう。すでに学部段階で、大学院進学を見越したプログラムが組まれているからです。とりわけ、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語で書かれた文献を読む授業の充実ぶりは、大学院大学ならではです。また、日本語だけでなくさまざまな言語で書かれた膨大な専門書(約400万冊)が所蔵されているため、いちはやく法学・政治学の専門的研究に取り組むことも可能です。さらに、多くの大学院生と接する機会が多いことも見逃せません。修士課程・博士後期課程で学んでいる先輩たちと日常的に接することは皆さんの知的刺激となり、学問への意欲をさらに高めてくれるでしょう。
 法学・政治学を学ぼうとしている皆さん。ぜひ大学院進学まで視野に入れたうえで、学部を選択してみてください。

18ページ

大学院生インタビュー

松崎 太地

松崎 太地

どんな研究をしていますか?

 私は、行政学を専攻しています。行政学は、行政を観察・分析の対象にして、私たちの生活と密接に関係する事柄を扱う学問です。私たちの生活には様々に「行政」が関わっています。たとえば、皆さんは朝起きて歯を磨くと思いますが、そこで必要な水を提供しているのは、基本的には自治体(行政機関)です。また、私たちが安全に暮らせるように歯磨き粉には行政によって様々な規制がかけられています(行政活動)。行政学では、なぜ、どのようにこれらの行政活動が行われているのか、行政機関の仕組みや実態はどうなっているのかなどを考察していきます。
 私は、このような行政学の観点から、「消防行政の意思決定過程」というテーマで研究しています。元来消防はヒエラルキー構造が強く、意思決定の場面において、上職の意向の強さが指摘されてきましたが、他方で近年の災害の場などでは現地の知見を活かして柔軟に活動している例が多数みられます。このような緊張関係を秘めた構図の中で、どのように意思決定を行っているのかということについて研究しています。

大学院を目指したきっかけは何ですか?

 学問の奥深さに魅了され大学院を目指しました。学部3年のころ、所属ゼミの関係からなんとなく行政学の著名な本を読んでみたことをきっかけに学問の奥深さに魅了されていきました。現在の知が先人たちの格闘の上に成り立っているということにどこか神秘的なものを感じるとともに、世の中の事象には必ずと言ってよいほど何かしらで学問が結びついていることに気づき、もう少しその世界を覗いてみたいと思うようになりました。

高校生へ一言お願いします!

 皆さんは、日々勉強や部活に追われ、慌ただしく過ごされているかと思います。そんな生活の中では、自分の将来について考える余裕もなく、とりあえず大学に合格することが目標になっているのではないでしょうか。しかしながら大事なのは、その大学に入って何をしたいのかです。大学時代は、様々な人に出会い、様々なことに挑戦できるかけがえのない時間です。ぜひ皆さんには、悔いのない大学・学部選びをしてほしいと思います。

平尾 遼海

平尾 遼海

どんな研究をしていますか?

 私は犯罪行為者の主観面に関して研究をしております。犯罪において重要となるのは、例えば、他人の物を盗る、他人を殴る、あるいは殺害する、といった外に現れた客観面だけではありません。むしろ、行為者の主観面も犯罪において重要な影響力を持っております。犯罪における主観面とは、行為者がその犯罪行為をわざと行ったのか、うっかり行ってしまったのか、どのようなつもりで犯罪行為に及んだのか、どのような目的や動機を持っていたのか、といった行為者の内心面に関する事柄です。私が取り組んでいるのは、まさにこのような主観面が、なぜ犯罪成立や刑の重さの決定において重要であるのか、どのような目的や動機が犯罪において重要となるのか、という問題です。

刑法の研究を深めたいと思ったきっかけは?

 私は法律に加えてドイツ語も力を入れて勉強しておりました。昨今、国際化する社会において、他国の文化に対する理解を示すことは非常に重要なことであり、このことは法学部で勉強をする際にも重要となってきます。

それゆえ、九大法学部では外国語の勉強も強く推奨されており、英語だけでなく、様々な言語を学ぶ機会に充実しております。その中でも私はドイツの文化に興味がありましたので、ドイツ語を学びました。そして、せっかく法律とドイツ語を学んだのであるから、その学習成果を活かすことのできる進路を考えました。その結果、日本の刑法がとりわけドイツ法の強い影響を受けて誕生したもので、現在も刑法学ではドイツ法との比較研究が盛んに行われていることから、刑法学の研究に強い魅力を感じて、刑法の研究者となる道を進みました。

高校生へ一言お願いします!

 九州大学だけでなく、どこの大学であれ、進学するためにはしっかり勉強することが必要になります。しかし、皆様は一度は、高校の勉強が何の役に立つのか、と疑問に思ったことがあると思います。最近とりわけ古典や数学といった特定の教科に対して、人生において何の役にも立たない、という批判が向けられております。ところが、私は高校の時に周りの友人や先生方などに支えられながら、これらの教科を懸命に勉強した経験が、現在の自分の研究活動を支えていると思います。少なくとも、高校の勉強は頭を鍛えてくれます。高校生の皆様は、ぜひ安心して目の前にある予習や復習、課題、テスト勉強といった「今やるべきこと」に専念してください。このことは、将来どのような職業に就くにしても、決して無駄になることはありません。

19ページ

「九州大学法科大学院」の紹介

 裁判官・検察官・弁護士のことを「法曹」と呼びます。いずれも、高度の専門知識を駆使して社会正義の実現に貢献する、大変やりがいのある職業です。法曹になるためには、司法試験に合格する必要があります。
 2004(平成16)年、司法制度改革の一環として、法曹養成制度の改革が行われ、法科大学院(ロースクール)制度が発足しました。司法試験を受験するためには、原則として、法科大学院を修了しなければなりません。法科大学院は、2年間(法学既修者コース)ないし3年間(法学未修者コース)で、法曹としての基本的な能力を身につけるための教育機関です。修了者には「法務博士(専門職)」という学位が与えられます。
 九州大学法科大学院は、2004(平成16)年4月、法科大学院制度の発足と同時に設立されました。西日本を代表する法科大学院であり、これまで539名の司法試験合格者を輩出しています(2023年4月現在)。
 九州大学法科大学院は、司法制度改革の理念を実現するため、高度化・複雑化・グローバル化した21世紀の社会で求められる新たな法曹像を追求しつつ、人間に対する温かいまなざしをもった、「社会生活上の医師」としての法曹を養成することを教育理念としています。
 教育プログラムの点では、法律学の基礎となる科目(法律基本科目)はもちろん、実務法曹にとって不可欠な技能を修得するための科目(法律実務基礎科目)、幅広い素養を身につけるための科目(基礎法学・隣接科目)、最新の社会問題に取り組むための科目(展開・先端科目)を豊富にそろえており、非常に充実した教育システムを提供しています。
 教育スタッフとしては、学界の最先端で活躍する多数の研究者教員に加え、経験豊富で優秀な現役の裁判官・検察官・弁護士が熱心に指導にあたっており、「理論と実務の架橋」という法科大学院制度の理念にふさわしい充実した陣容を誇っています。
 また、九州大学法科大学院は、学生の自学自修を支援するため、行き届いた学修環境を整備しています。1人1席の専用机を備えた学修室、個人用ロッカー、専用図書室、インターネットによる学修支援システム、専任教員によるチューター(担任)制度、修了生のための法務研究員制度などです。
 2022年度からは、法曹コース修了者を受け入れ、法学部3年間(早期卒業)、法科大学院2年間(既修者コース)の5年一貫の教育連携を行うことにより、早期の法曹資格取得を目指します。現在、九州大学法学部等と法曹養成連携協定を締結しています。「法学部に入学して、法曹資格を取得する」というルートを確立し、法学部の学生の皆さんが「法曹になる」という目標を実現するために、ともに努力していきたいと思います。
 法曹をめざす皆さんは、九州大学法学部で基礎的な法学の素養を身につけた上で、是非とも九州大学法科大学院に入学してください。正義と公正に対する感受性に富み、公的な利益や他者のために献身的に取り組むことができる、意欲ある皆さんの挑戦を期待しています。
https://www.law.kyushu-u.ac.jp/lawschool/

20ページ

法科大学院連携プログラム(法曹コース)の紹介

 法学部には、法科大学院の既修者コース(法学をひと通り学んでいると認められる人を対象とする2年間のコース)の教育内容と一貫した体系的な教育を行う「法科大学院連携プログラム」という履修プログラム制度があります。他大学にも同様の制度があり、一般に「法曹コース」と呼ばれています。

 各大学の法曹コースの学生(法曹コース生)は、さまざまな法科大学院が実施する特別な入試(特別選抜)を受験することができます。特別選抜では、学部での成績を考慮して合否が判定されますので、学部成績が良好であれば、よりスムーズに法科大学院に入学できます。また、法科大学院の既修者コースでは、一般に、司法試験の必修科目(憲法・民法・刑法・行政法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)をひと通り学んでいることを前提に教育が行われますが、法曹コースの出身者については、それ以外の科目の一部についても学部の段階で学習済みだとして扱うことが認められています。さらに、法曹コース生が法科大学院の科目の一部をあらかじめ履修しておくことも認められています。つまり、法曹コース生は、本来は法科大学院で行うことになっている学習の一部を学部の段階で先取りすることができるわけです。

 法曹コース、特別選抜、学習の先取りの具体的な内容は、各大学の法学部や法科大学院によってさまざまです。また、法学部と法科大学院が「連携協定」を締結しているかによっても違います。九州大学法学部は九州大学法科大学院と連携協定を締結していますので、以下では、九州大学法学部の法曹コースを経て特別選抜により九州大学法科大学院に入学する場合について説明します。

 九州大学法学部では、2年生の前期の終了時に希望者を募って法曹コース生とします。希望者が多い場合には、それまでの成績により選抜を行います。
法曹コース生の卒業要件はほかの学生と同じですが、法科大学院教育との接続を図るために指定された一定の科目を履修し、一定以上の成績を修めた上で卒業すれば、法学士の学位に加えて、法曹コース修了者の資格を得られます。さらに、法曹コース生が4年生になる前に卒業と法曹コース修了に必要な単位を優秀な成績で修得し、かつ、いずれかの法科大学院の特別選抜に合格した場合には、3年生の終了時に卒業することもできます(早期卒業制度)。2023年度からは法科大学院の修了を待たずに既修者コースの2年目から司法試験を受験できるようになりましたので、最短で、学部入学から法科大学院の卒業まで5年間の在学の後、ただちに司法修習に入ることができることになります。
 法曹コース生は九州大学法科大学院の一部の科目を履修でき、その単位を一定以上の成績で修得して同法科大学院に入学すれば、そのまま修得済みの単位として認められます。また、同法科大学院では、法や法学の基礎を探求する科目や、より深く法学を理解するのに役立つ法学以外の分野の科目について一定数以上の単位の修得が求められますが、法曹コース生がそれらの科目に対応する学部科目について優秀な成績を修めた上で同法科大学院に入学した場合には、それらの科目についてはすでに単位を修得しているものとして扱われます。
 九州大学法科大学院は、九州大学法学部をはじめとする連携先の法曹コース生を対象とする、学部成績と口述試験だけで既修者コースへの合否を判定する特別選抜(募集人員9名)と、連携の有無を問わず法曹コース生を対象とする、学部成績と3科目の専門科目の筆記試験の成績で合否を判定する特別選抜(募集人員6名)という2つの特別選抜を行います。いずれの選抜でも学部成績が重視されます。なお、法曹コース生であっても、7科目の専門科目の筆記試験が行われる一般選抜を受験することはできます。したがって、法曹を目指す人が法曹コース生となることに特段の不利益はありません。

21ページ

Global Vantage Program

―グローバル人材の育成を目指して―

 九州大学法学部は、2015年度から、日本人学生を対象に、グローバル人材の育成を目指して、英語による教育を重視した学士・修士一貫国際ビジネス法プログラム「GV(Global Vantage)プログラム」を設置しました。
 GVプログラムは、法学部プラス修士課程(LL.M.)の実質5年間で、「グローバル・ローヤー」を育成します。ここでいう「グローバル・ローヤー」とは、「各国の法律家に互して、英語で交渉し、契約書を起草し、各国での法適合性を調査し、国際ルールの策定に参加するなど、国際ビジネスの最先端で活躍する人材」です。

22ページ

GVプログラムから LL.M.に進学した学生の声

木村 真琴 木村 真琴  「英語だけでは国際社会に通用しない!法律の専門性を身につけたい」という思いから九州大学法学部 GVプログラムに入学しました。GVプログラムでは、大学1年次より英語で法律を運用する力を磨くため、英語授業や高年次法学ゼミ、短期留学派遣などの数多くのチャンスがあります。私自身も、教授の方々や先輩たちの手厚い指導を受けながら、模擬裁判に参加したり、海外の学生と模擬世界遺産委員会に参加したりと普通の法学部生ではできない贅沢な経験をさせていただきました。大学3年次には、ロンドン大学東洋アフリカ研究院 (SOAS)に1年間の留学を行い、英国の契約法や東南アジアの国際関係学について、現地の学生と肩を並べて勉強に励み、GVプログラムでの学びが生かされている事を強く実感しました。
 英国現地の法律事務所で2 ヶ月間インターンを行った私は、国際取引を担う法律家となるため、さらに高度な英語力と法律の知識を蓄えたいと考えるようになり、九州大学法学府国際コース LL.M.への進学を決めました。LL.M.コースは、留学時代を思い出すほど多様な国々の学生たちが集まっており、日本では稀有な学習環境にあると実感しています。既に裁判官や弁護士といった法実務家として海外で活躍されている学生との交流を深め、私の修論テーマである「国際仲裁」についても貴重な意見をもらうことができました。また国際取引だけでなく、学部時代に学習したことのなかった国際法、企業犯罪、フィンテック、競争法、ハーグ条約なども履修し、これからの学習の視野が広がった1年間でした。何より、学習以上に LL.M. でかけがえのない友人たちと出会えたことに感謝しています。

山本 龍矢 山本 龍矢  大学入学後、英語を用いて法律を学べる GVプログラムがあると知り、2年次に編入しました。編入後すぐにフィリピンでの模擬世界遺産委員会への参加、ドイツでの学会発表に参加し、苦戦しつつも自分を一つ成長させることができました。また、学部3年次に長期留学を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、あえなく断念することになりました。そこで私はパンデミック収束の目処が立たない中で留学を目指すのは難しいと考え、早期卒業して日本にいながら国際的な環境に身を置くことのできる LL.M.への進学にシフトしました。
 LL.M.では学部の授業と比べ、法律という側面だけではなく、経済や技術等、他分野が絡んだ問題についての授業が多く、知的好奇心を刺激します。また、ほとんどの授業でプレゼンを行うのも特徴的です。LL.M. の前期は他国の学生が日本になかなか入国することができず、オンライン乃至ハイブリッドでの授業が中心となっていました。私は授業と同時並行で就職活動を行なっていたため、場所を気にすることなく受けることができるオンライン授業はとてもありがたかったです。そして後期には全ての学生が来日し、授業も対面で行われるようになってからは、授業外での交流が増え、すでに裁判官や弁護士、企業法務や政府機関で活躍されている学生と交流を深めることができました。
 LL.M.進学前後で GVプログラムに入ってよかったなと思う場面は沢山ありました。英語で法律を学ぶということに対する慣れの側面はもちろん、修士論文のテーマや、構造を考えるにあたって TA の補助が受けられます。また、GVには高い志を持つ仲間、LL.M. では各国で活躍する実務家からさまざまな刺激を得ることができます。学士と修士合わせて4年半、周囲とは違った刺激的で質の高い濃密な時間を過ごせる環境が GV プログラムにはあります。

上原 朔也 上原 朔也  高校留学で身につけた英語力を活かして新たに専門性を身につけたいと思い、GVプログラムの5期生として入学しました。入学してすぐ、夏にフィリピンでの模擬世界遺産委員会、冬にドイツでのシンポジウムにそれぞれ参加し、英語でのプレゼンおよびディスカッションを経験しました。パンデミックの影響で海外での活動はこれが最後となってしまいましたが、1年生のうちから複数回海外に行くことができ、英語を使って学ぶことができるのはGVプログラムの強みだと思います。
 コロナ禍で海外に行けないまま残りのGVプログラムでの生活を送る中で、入学時に志した、英語を使って専門性を磨くという目標を達成するには、LL.M.で学ぶことが必要だと考えたので、GVプログラムを3年半で早期卒業し、LL.M.に入学しました。
 LL.M.は1年間のプログラムで、授業を受けながら修士論文を執筆します。クラスメイトは様々な国から留学してきた弁護士、裁判官、官僚などの実務家の方達で、彼らと一緒に議論を交わし、学んでいくことは非常に刺激的です。授業は普通の法学部の授業とは異なって、各法分野の最先端の議論を取り上げ、法律がどう関わっていくべきか、法的リスクはどこにあるのかなど、より実務的で未来志向な議論が多いことが特徴的です。また、ほとんどの授業でプレゼンやグループワークを行うのも印象的です。GVプログラムでの海外研修の経験が、ここで活きていると感じています。同時に、自分が関心を持っている分野、疑問に思っている論点を選んで、これについて研究し、論文を書きます。研究テーマは入学前に決めなければなりませんが、テーマの決め方から議論の構成の仕方まで、GVプログラム専属のティーチング・アソシエイツによる手厚いサポートが受けられます。私は授業と同時並行で就職活動も行っていましたが、LL.M.での経験から多くの学びを得たことで、自分の専門性に自信を持って面接に臨むことができたと感じています。
 勉強面以外でも、LL.M.に入ってたくさんの友人ができ、非常に充実した学生生活を送ることができています。LL.M.での活動がここまで楽しめているのも、GVプログラムで高い志を持った同期や先輩たちに出会い、大きな刺激を受けながら、英語で法律を学ぶという経験があったからだと確信しています。GVプログラム、そしてLL.M.で学ぶことで、グローバルローヤーへの道が大きく開けます。

23ページ

国際交流と国際教育

 グローバル化した世界において、日本の大学でも国際化がどんどん進行しています。九州大学は、スーパーグローバル大学創成支援トップ型「世界大学ランキングトップ100を目指す力のある、世界レベルの教育研究を行う大学」のひとつに選ばれて、全学的に国際化をさらに進展させています。
 その九州大学においても、法学部の国際化は他をリードするさまざまな取り組みを行っています。

交流協定と交換留学

 九州大学法学部・法学府(大学院)は、独自の交流協定を世界の大学・高等教育機関と結んでいます(表)。法学部の学生は、大学間協定校に加えて法学部の交流協定校への交換留学ができます。また、これらの協定校から法学部へ毎年、交換留学生がやってきて一緒に勉強し、大学生活を送っています。

法学部の交換留学パートナー校

留学生との交流

 現在、法学府(大学院)と法学部では合わせて20カ国以上の国から100名近くの留学生が学んでいます。この多様な留学生を生活や学習の面からサポートするのがサポートチームです。サポートチームは多くの留学生が最初に出会う日本人の友人でもあります。また、サポーターをすることで、日本にいながらにしてさまざまな国のあり方の一片に触れることができ、異なる背景を超えたコミュニケーション能力を磨く機会ともなります。

九大法学部で世界を広げましょう!

国際教育

 法学府(大学院)には日英両語による修士課程(BiP)、英語のみによる法律系(LL.M)と政治学系(CSPA)の3つの国際修士課程と、法律系の国際博士課程(LL.D)があります。もちろん日本人学生も受験できます。これらの国際コースは、学部教育の国際化にも一役買っています。
 「留学はしたいけどなんだか不安だ」という人は、まず九州大学で提供されている英語による授業に参加することをお勧めします。一般教養科目には留学生センターで実施されているJapan in Today’s World(JTW), Asia in Today’s World(ATW)やASEAN in Today’s World(ASTW)があります。必修の英語課目は多様なレベルと内容で、法学部学生それぞれのニーズと関心に応えられるように工夫されています。専門課程に進んだら、法学府国際コースの授業を聴講してみましょう。英語力を磨きながら留学の心構えをすることができます。
 このようにそれぞれの段階で提供されている国際教育をうまく活用して交換留学を経験し、ひいては国際コースへの進学も進路選択のひとつとすることもできるでしょう。
 国際コースでは授業のほかにも、その時々のトピックスを取り上げた講演会やシンポジウムなどが数多く英語で開催されていて、法学部学生の参加も大歓迎です。

いろいろな支援

 留学をするには国際的に認められている語学能力試験の結果を提出することが求められるのが一般的です。たとえば英語であれば、TOEFLやIELTSなどです。こうした語学能力試験の受験を応援するために、法学部は、受験料の一部または全部を補助する制度を提供しています。このような語学能力試験の結果は、留学だけではなく、就職や社会活動にも活用できるものです。
 また、いざ交換留学が決まれば、航空運賃の一部補助を受けられる制度もあります。

24ページ

留学体験記

【留学先】ドイツ、ライプニッツ大学(ハノーファー大学)武丸 奈月(2023年3月GVプログラム卒業)

 私は学部4年の9月から、法学部の学部間留学協定校である、Leibniz Universität Hannover( ハノーファー大学)で半年間の留学生活を送りました。島国の日本とは異なり、他国と隣接していたり、移動が自由であったりするヨーロッパでの留学生活では、数多くのことを学ぶことができました。
ドイツ語集中講義のクラスメイトととの集合写  この留学の目的は大きく3つありました。1つ目は、旅行では得ることができない留学先の文化や宗教、その国ならではの慣習を知ることです。最も驚いた慣習を1つあげるとするならば、日曜日に掃除機をかけたり、洗濯機をまわしたりすると、警察に通報されうるということです。実際に現地で過ごすことで、様々な側面において日本と比較し、日本を客観視する機会が得られました。特に、お互いの文化や生活様式について友人と話すことで異なる価値観を得られて面白かったです。こういった経験を通して、物事を多面的に見る力が大きく向上したと思います。また、多様な方々と交流する中で、自分とは異なる意見も一度聞き入れてみる、といった柔軟性が身についたと思います。
 2つ目は、ヨーロッパで法律を学びたかったからです。比較法の授業をとっていたのですが、講義に参加している十数カ国の国籍の学生達と各国の法律について比較できたのは、留学ならではの経験でした。また、グローバルクラスというアメリカやトルコ、ヨーロッパの国々の大学が参加するコロキウムがあり、受講しました。毎回異なるトピックについて、欧米の法律を比較し議論するというものでした。初めは、海外の学生の活発な議論に圧倒されてしまいました。しかし、発言するために毎回予習を入念に行い、回を重ねるごとに発言数を増やすことができたことは、自信につながりました。
大学主催イベント・インターナショナルディナーにて  3つ目は、語学力向上です。ドイツ語を全く学んだことのなかった私でしたが、せっかくドイツにきたのだからと思い、ドイツ語に挑戦してみました。はじめに、Leibniz Universität Hannoverに留学する方がいたらぜひおすすめしたいインテンシブコースを受講しました。これは、セメスターが始まる前に開講されるのですが、1か月間毎日ドイツ語を学ぶプログラムです。ここでたくさんの友人ができましたし、セメスターが始まる前にドイツでの生活に慣れることができました。セメスターがはじまってからもドイツ語学習を続け、はじめてレストランで注文ができたときの嬉しさを鮮明に覚えています。講義外では、言語交換活動であるタンデムに参加し、言語を教えあうだけでなく、ドイツビールをのみにつれていってもらったり、一緒に日本料理をつくったりと文化も共有しました。
ドイツ語集中講義のクラスメイトととの集合写  この留学で得ることができたすべての経験は私にとってかけがえのない宝物です。貴重な経験をさせてくれた友人、家族、そして、この交換留学プログラムに感謝の気持ちでいっぱいです。

【留学先】シンガポール、シンガポール国立大学 藤原 涼(法学部3年、留学期間2022年8月~ 2023年5月)

 私は昨年8月より大学間交換留学としてシンガポール国立大学(以 下NUS)へ1年間ほど留学しました。留学を行うことで自身の視野が 広がり多くの学びを得ることが出来たと確信しております。授業と寮 生活の二つに分けてお話します。
寮内スポーツイベント  まず授業についてです。 NUSは世界有数の大学で最 新の世界ランキングだとアジ ア1位、世界第8位となってお ります。留学生の割合も非常 に多く、ヨーロッパをはじめ 世界各国から学生の集まる 国際色豊かなキャンパスでし た。授業の形式はLecture(教授からの説明を聞く授業)とTutoria(l 教 授やTA、学生とディスカッションやグループワークを行う双方向の授 業)の二つがセットとなっております。Tutorialでは、英語力の無い私 にとって、ディスカッションやグループワークで意見を求められ発言 することは大変でした。しかし、自分の意見を英語で伝え相手の意見 を英語で聞くのは貴重な経験となりました。また「日本人」として現代 日本の政治や文化問題を聞かれることが日本にいるとあまりない為、 聞かれた際は自分がいかに日本に対して無知であるかと同時に日本 人であるという意識が希薄であったかを痛感させられました。授業で は、シンガポールについて多様な視点から学びました。文化、政治、経 済、民族、歴史など一国を多様な視点から学ぶことによってその国を 立体的に捉えることができ、知識の体系化を行うことが出来ました。
キャンパスの様子  寮生活も非常に実りある体験となりました。私はシンガポール人の 多い大学内の寮に住んでいました。日本の寮との大きな違いは、寮で のイベントの多さと寮のコ ミュニティが強いことです。学 生が自主的にイベントを主催 しており、スポーツ大会やコ ンサート、クッキー作り体験 など様々なイベントが寮単位 で行われております。更に寮 内でもいくつかのグループに 分かれておりそのグループご とでもイベントが行われておりました(ハリーポッターの寮生活をイ メージされると分かりやすいかと思います)。寮のおかげで友人も沢 山でき疎外感を感じることが無かった為、寮生活が送れて本当に良 かったと思います。
 最後に留学を行った感想を軽く述べて締めたいと思います。留学を 行うことは非常に物理的、精神的に大変であることは否めません。特 に日本人にとって言語的ハードルが大きいことは事実です。しかし、 留学を行って後悔したと言っている人を私は聞いたことがありませ ん。私も留学生活は大変なこともありましたが楽しい思い出ばかりで 忘れられない一年となりました。九州大学では様々な行先、プランが 整っています。大学生になったら是非挑戦してみてください。それでは 大学でお会いする日を楽しみにしております。

日本人学生主催の現地学生と日本人学生の交流会

25ページ

就職・進学について

進学状況ならびに支援体制

 近年、法科大学院(ロースクール)へ進学し、法曹を目指す人たちが多くなっています。ロースクールは「専門職大学院」で、修了後は「法務博士」の称号を得ることができます。入学試験から、入学後の勉強、さらに「司法試験」、また合格後も司法研修所での修養と、長期にわたる勉強が必要ですが、法学部ではロースクール進学を見据えたサポートを低学年時より行っています(また、2019年には「法科大学院連携プログラム」を開催しました)。多くの先輩が現にロースクールへと進学し、法曹資格を取得しています。さらに研究を志す人には、研究大学院修士課程、博士後期課程への進学のため、ゼミや勉強会を中心としたサポートを行っています。

就職状況ならびに支援体制

 就職を希望する学生は、九州内外を問わず、有力民間企業に就職したり、あるいは国家公務員・地方公務員となる人が多いです。法学部では、就職相談から、就職ガイダンス、就職支援講演会、あるいは学修支援など、多くのチャンスを提供しています。また、法学部にキャリアデザイン専門の部署を設置し、学部として全面的にバックアップしています。ゼミの先生を中心に教職員一同、みなさん一人ひとりのサポートを行っています。小さなことでも分からないことはどしどし尋ねて、是非こうしたシステムを積極活用してください。

就活体験記

2023年法学部卒 宮守 泰斗(就職先:福岡市役所)

宮守 泰斗  私は今年の春、福岡市役所に入庁しました。
 大学3年時から行政法ゼミを選択し、行政法分野を深く濃密に学んでいく中で、私人と行政の関係性や行政の役割などに興味が湧きました。そこで私人との関わりが深く、よりアグレッシブに動くことのできる政令市たる福岡市を第一志望に公務員を目指して就職活動を行いました。
 公務員試験の対策には大学生協の講座を利用しました。試験対策だけでなく面接対策も並行して行う必要があり、大変なことも多かったですが、同じ公務員を志す法学部の仲間たちとともに励まし合いながら最後まで走り切ることができました。
 入庁してまだ数ヶ月ですが、法学部で培った論理的思考力や文章力が、業務において活きていることを実感しています。
 九州大学法学部の卒業生は、公務員だけでなく、進学や民間就職など多数の分野でも活躍しています。皆さんには、法学部の優しくあたたかい先生方やかけがけのない仲間たちとともに、日々アンテナを広げながら様々な経験を積んで欲しいと思います。その経験が将来の様々な道を切り開く鍵となってくれるはずです。皆さんのご活躍を心から願っています。

2023年法学部卒 穴井 希実(就職先:日本生命保険相互会社)

穴井 希実  今年の4月に、日本生命保険相互会社に就職しました。大学では行政学ゼミに所属し、毎週様々なテーマに対して発表・議論する中で、論理的思考力を養う訓練ができたと感じています。
 就職活動では、公務員・民間企業問わず様々な業種に幅広く応募し、自分の将来について真剣に考えました。最終的に、自分の中で大きなご縁を感じた日本生命保険相互会社に就職を決めました。就職活動時には、ゼミのOBの方をはじめとする九州大学の先輩方に相談させていただくことも多く、お忙しい中とても親身になって相談に乗ってくださったことで、壁をひとつひとつ乗り越えていくことができました。公務員や、法曹や研究者を目指すための進学など、法学部の同級生は様々な進路に進んでおり、九州大学法学部で4年間学ぶことで、皆さんの将来は大きく広がると思います。大学周辺や学研都市駅の開発も進んでおり、大学生活はますます充実したものになるのではないでしょうか。皆さんが希望の進路を勝ち取ることができるよう、応援しています。

2023年法学部卒 大塚 もえ(就職先:トヨタ自動車)

大塚 もえ  私は今年の春から縁あってトヨタ自動車に就職させていただきました。海外に興味があり、コロナ禍で留学は叶わなかったのですが、海外で働くことに興味がありました。
 また、世界で通ずる日本のモノづくりに関わりたいと考えていました。両親もメーカーで働いていたこともあり、仕事が目に見えるかたちで社会に貢献できるところからグローバル、モノづくりの視点で就職活動をしていました。
 私が入社を決めたトヨタ自動車は、世界中で認められている車づくりの会社です。実際にタイや台湾、アメリカに旅行に行った際にも日本の車メーカーは選ばれて、安全で丈夫な車として評価を受けています。
 何よりも入社することにした決め手は、就職活動時に出会った先輩社員の方々でした。仕事は平日はとても忙しそうでしたが、プライベートにも全力で、海外で働く夢を楽しそうにお話される姿に私はとても惹かれました。
 私は業務内容も大事ですが、就職活動時に出会う「ひと」も就職先を選ぶ一つの大きな基準だと思います。1日の大半を、もしかしたら家族よりも長い時間を過ごすことになる職場で、一緒に切磋琢磨する同僚や先輩を就職活動時に見極めてください。
 大学での学びは、必ず社会人でも役に立つはずです。私は、行政学ゼミで、嶋田先生に何度も繰り返し言われた「他者意識」が仕事に活きています。仕事は、多くの関係部署、そして多くの関係する会社様によって成り立ちます。相手の立場に立って、お願いをしたり、頼まれた仕事をしたりすることは信頼を得ることにつながります。大学生活での学びが、皆さんの社会人生活の基礎となるはずです。大学生活を思いっきり楽しみ、周りにいる優秀な先生方や先輩、同期、後輩からたくさん学んでください。就職活動はつらいと思う瞬間があると思いますが、後輩の皆様が納得のいく決断のできるように応援しています。

26ページ

卒業生就職先と進学者数

■就職先(2020▶2022年度)

■進学(2020▶2022年度)

27ページ

LP セミナー(ロー・アンド・プラクティス・セミナー)

法曹(裁判官・検察官・弁護士)と共に「生きた法」を学ぼう。

 九州大学法学部の教員と学生からなる『九州大学法政学会』では、毎年、裁判官・検察官・弁護士等を講師として招いて、「ロー・アンド・プラクティス・セミナー(略称LPセミナー)」を開催しています。プラクティスとは、(法の)実践を意味する言葉ですが、学生の皆さんにとっては、現役の法律実務家の実体験に基づいた講義を聴き、「生きた法」を学ぶ絶好の機会と言うことができます。また、このセミナーは、20年あまりの実績をもち、他の大学にはない九大法独自の試みとして、高く評価されています。
 講義の終わりには、その締めくくりとして、法律実務家と手造りの模擬裁判という企画も準備しています。
 学生の皆さんは、このセミナーに参加することによって、法の実際の運用や法律家の仕事の面白さに触れることができます。また、将来、法科大学院への進学を考えている学生にとっても、主体的な参加を通じて有益な示唆が得られることと思います。

模擬裁判を経験して(参加した法学部1年生のアンケートより)

  • ●裁判官チーム:セミナーを通して、法学とは何か、どう使われているのかを身をもって学ぶことができたと思う。講師の方々の話はどれも面白く、ケーススタディをしながら時には持論を時には一般論をまじえて話してくださったのが個人的には法律というものにどう臨んでいくべきなのかを示してくれているようで面白かった。自分は裁判官になりたいと思っており、模擬裁判でも裁判官チームに所属した。裁判の中で論点になったのは金銭のやり取りがあったか、その金銭には返還義務が伴っていたかであった。結果として、書証が全ての判決基準になったがそれでもギリギリまで判決が下すことができないほどに原告側・被告側の主張はどちらも筋が通っていた。素晴らしい裁判をしてくださった各グループの皆さん、学部の先生方、講師の先生方、本当にありがとうございました。
  • ●原告チーム:私は模擬裁判を通して、本当の裁判とは何か考えることができました。実際に貸金はなかったにも関わらず、証拠と尋問に基づいて原告勝訴の判決が出たということから、裁判は「証拠に基づいて判断する」もので、事実と異なることも有り得ることに衝撃を受けました。私は法曹になるために勉強していく中で、やはり覚えること、考えることも多く諦めようと思ったこともありました。ですが今回の模擬裁判を通して実務家になりたいという思いが一層強くなりました。弁護士の先生、原告チームの仲間と準備を重ね、当日勝訴できるように何度も訴状や準備書面を見て検討し、結果勝訴することができて、こんなにもわくわくすることが世の中にあるのかと思いました。実際の現場とは異なる点もあったかとは思いますが、私は本気で法曹になりたいと改めて実感しました。また、大学生になって、中学や高校のときよりも他の人との交流が減るなかで、模擬裁判は法学部の仲間と交流できた非常にいい機会でした。当日裁判官チーム、被告チームに比べて原告チームの人数が非常に少なかったことは原告チーム代表であった私の責任であると痛感しておりますが、間違いなく、大学生活においてかけがえのない経験になりました。担当してくださった弁護士の先生やチームのみんなには感謝しかありません。このような機会を設けていただいていること、本当にありがとうございました。
  • ●被告チーム:やはりまずは勝てなかったことに対する悔しさがあります。本人役として、演技、返答内容共に原告に及ばなかったという自覚があり、本番までにもっとできることがあったのではないか、と後悔しています。
     しかし、今回の模擬裁判への参加は、私に多くの貴重な経験をもたらしてくれました。特に、事実の確定作業では、利害関係の対立する両陣営の要望、主張を聞いて、うまく折り合いをつけていく難しさを知ることが出来ました。
     準備はとても大変でしたが、仲間と協力して何かをする楽しさを再確認できました。特にリーダー、反対尋問リーダーには大変世話になりました。2人とも私には無い能力を持っていると実感し、自分ももっと精進しようと思いました。
     参加してよかったです。ありがとうございました。

28ページ

アクセスマップ

お問い合わせ先
九大法
九大法学部教員の主な近著
  • 德本教授【商法】
  • 岡﨑教授【比較政治学】
  • 成原准教授【情報法】
  • 赤坂教授【憲法】

九大法学部1年生用の教科書

  • 小島教授【知的財産法】
  • 五十君教授【ローマ法】
  • 石川真澄=山口二郎

29ページ

九州大学 法学部 2024 Faculty of Law Kyushu University