法政基礎演習

最終更新日:2017年8月21日

授業科目名
法政基礎演習
標準年次
2
講義題目
環境問題に学ぶ行政法・環境法入門
開講学期
前 期
担当教員
張栄紅  
単位数
2単位
教  室
 
科目区分
入門科目
履修条件
 特にありません。行政法や環境法に興味のある方、あるいは環境問題について考えてみたい方を歓迎します。学部の講義を受ける前から行政法の内容の一部に触れますので、熱意とやる気を持っている方の参加を期待します。
 なお、中国の環境問題について興味のある方も大歓迎します。
授業の目的
●法政基礎演習の共通目標
 この授業科目は、少人数のゼミ形式により、これから本格的に始まるより高度な学習へ向けての橋渡しの教育を行う目的で開講されるものです。具体的には、(1)リサーチ・分析能力、(2)ディスカッション・プレゼンテーション能力、(3)レポート・論文作成能力、という、将来どのような進路をとっても必ず要求される能力を身につけることができます。

●本演習の到達目標
 本演習では、私たちの日常生活に影響を与えており、自治体行政の現場や裁判の場面でよくみられる環境問題を素材として、(A)行政法・環境法の基礎的概念や基本的な考え方を理解します。これらの基礎的概念や基本的な考え方を踏まえて、具体的な環境問題に対しては、何が問題であるのか、どのような解決策が学説・判例によって示されているか、学説や判例に問題があるのか、どのように批判できるのかなどを考えて、(B)自らの見解を論理的に組み立てることができます。
 法政基礎演習の共通目標とされる知的生産方法をゼミの活動の中で体得し身につけます。具体的には、課題の発見→情報収集→考察・分析→プレゼンテーション→議論→文章化のそれぞれの段階で必要なスキルを、ゼミの活動の中で習得し、(C)議論状況をわかりやすく整理し、どこに問題があるのか、それに対して自分はどう考えたのかを、わかりやすくプレゼンテーションできるとともに、(D)議論に積極的に参加します。
授業の概要・計画
【授業の概要】
 上記の目的を達成するために、以下の視点の下で環境問題を考えていきたいと思います。
 なぜ環境問題が起きたのか?この問題について、「企業が悪いからです」と考える人が少なくないでしょう。しかし、そう簡単にいえるのでしょうか。そもそも企業等の違法行為を規制する行政が権限を発動しなかった場合が多く見られます。また、最近の環境問題としては、従来の公害病と異なり、不確実な環境リスクによるものが多くなっています。こうした環境リスクには、そもそも立法者が規制していないものが多くあります。さらに、環境問題によって自己の権利利益が侵害された(侵害されるおそれのある)市民が裁判所に訴えたとしても、裁判所は、なかなかそういった侵害を認めません。また、とりわけ自然環境や生態系の破壊に関しては、そもそも市民が裁判所に訴えることができるかといったような問題も多く含んでいます。このように、環境問題がなぜ発生したのかを、異なる立場に立って考えることが必要不可欠です。これは、本演習の第1の視点です。
 環境問題がなぜ起きたのかについて一定程度把握することがまずスタートになります。この問題について「法律や法理論がどうなっているのか」、「なぜそうなっているのか」、「実際にはどのように運用されているのか」、「より望ましい状態をするにはどのようにしたら法的に可能なのか」といったように、複眼的に環境問題を考えることが本演習の第2の視点です。
 環境法や行政法をまだ履修していないみなさんにとっては、いきなり上記の視点で環境問題を考えることが難しいと思います。そのため、本演習の前半では、下記のテキストを使って、環境問題を考える上で必要な基礎的な知識を習得していただきます。この段階では、グループ報告の形式をとります。そうして、グループのメンバー同士の相互学習・議論・レジュメ作成活動を通じて、知的生産の方法を一定程度身につけることも目指します。
 本演習の後半は、グループ報告の段階で習得した知識と技術を踏まえて、自ら興味のある環境問題について、課題の発見から報告まですべて自己の責任にする個人報告の形式を採用します。個人報告をすることによって、細かい点までごまかさずに深く理解する姿勢を身につけます。参加者がこの段階で単なる感想や印象論的なコメントを超えて、具体的な根拠に基づいた発言を提出することも目指します。
 最後に、個人報告をもとに、5000字以上のレポートを作成してもらいます。レポートの作成を通じて、自己の主張を論理的に組み立てる能力を高めてほしいと考えています。

【授業の計画】
 以下のとおり計画していますが、みなさんの意見を聞きながら、柔軟に対応していきます。
第1回 自己紹介、演習内容に関する説明、報告担当者決め
第2回 文献の調べ方、報告の仕方、テキストを読む上で最低限必要な行政法の基礎的な知識についての説明
〔第3回〜第6回 グループ報告〕
第3回 水質保全[テキスト第W章]
第4回 産業廃棄物[テキスト第X章]
第5回 自然保護・景観保全[テキスト第Y章]
第6回 原子力安全[高橋滋論文]
第7回 中間総括、個人報告のテーマ報告
第8回〜第14回 個人報告
第15回 演習全体の総括討論
授業の進め方
[第1回]
 自分がどの環境問題について興味があるのかを考えてください。自己紹介と合わせて述べてもらいます。
[第3回以降]
 参加者は上記のスケジュールの中で最低2回の報告を行うこととします。各回ともに報告者のほかに司会者とコメンテーターを事前に選び、次のとおり演習の進行を担当していただきます。
1.報告者、担当範囲の紹介
2.報告者による報告(20〜30分)
3.コメンテーターによるコメント(5分)
4.質疑応答、全体討論
5.担当教員コメント
6.報告者総括
 報告者は、報告の一週間前のゼミでレジュメを配布します。
 各参加者は、各回のレジュメと必要な文献を予習した上で疑問点やコメントを用意して全体討論に臨んでください。その際、必ず一度は発言してください。
 学期末には、各参加者が行った報告と議論を基にレポート(5000字以上)を作成し提出していただきます。
教科書・参考書等
[使用テキスト]
北村喜宣『プレップ環境法(第2版)』(弘文堂・2011年)
高橋滋「福島原発事故と原子力安全規制法制の問題」高木光ほか編『行政法学の未来に向けて』(阿部泰隆先生古稀記念)(有斐閣・2012年)395-421頁(※担当教員が用意します。)
その他は、演習時に適宜指定します。

[参考図書]
環境法
 入門書としては、畠山武道『考えながら学ぶ環境法』(三省堂・2013年)
 基本書としては、北村喜宣『環境法[第3版]』(弘文堂・2015年)
 判例集としては、淡路剛久ほか編『環境法判例百選』(有斐閣・2011年)
行政法
 入門書としては、高木光『プレップ行政法(第2版)』(弘文堂・2012年)
 基本書としては、大橋洋一『行政法T 現代行政過程論[第2版]』(有斐閣・2013年)
 両方を扱うものとしては、原田大樹『例解行政法』(東京大学出版会・2013年)
成績評価の方法・基準
試験は行いません。以下の割合に従って評価を行います。
1.授業への参加度:40%
2.報告内容:30%
3.レポート:30%
1の評価では、議論への参加状況(到達目標(D))を特に重視します。2と3の評価では、基本的概念や基本的な考え方を理解したのか(到達目標(A))、自らの見解を論理的に組み立てることができたのか(到達目標(B))、わかりやすくプレゼンテーションができたのか(到達目標(C))を特に重視します。
※無断欠席は厳禁です。無断で欠席した場合、単位は認定しません。
その他(質問・相談方法等)
質問は随時受け付けます。メールや研究室での相談も歓迎します。

【科目コード:LAW-LAW1911J】
過去の授業評価アンケート 2014年度前期