多数の原告が登場し得る紛争は、少数当事者間の紛争解決に主眼を置いて設計された法制度において、長い間困難を生じさせてきた。この困難の結果、個人は訴訟提起することを控え、深刻な損害だが拡散型の損害を生ぜしめたことで被告になり得た者は「罰則」を免れる可能性がある。つまり、一方では個人が自分の権利を保全する利益から、他方では社会的に有害な行為を抑制する社会全体の利益にまでわたる「多層的な利益」が、満たされない状態に陥り得る。 この問題を解決するために、様々な形態のコレクティブ・アクションが発展してきた。たとえば、複数の個別訴訟を一つの手続に服させる集団訴訟(group actions)、組合が多数の申立人を代表して提訴する代表訴訟(representative actions)、および、他の者のための裁判例構築のために提訴するテストケース手続(test case procedures)がある。これら多様な形態のコレクティブ・アクションは、断片化した多数の個別利益を集めることで、個人の「司法へのアクセス」を容易にすることを目的としている。また、これらのコレクティブ・アクションは、特定の原告集団の共通利益および社会全体の共通利益を保全するメカニズムとして捉えられる。コレクティブ・アクションは単なる手続ツールではなく、政治的、社会的、および経済的問題をもたらすものである。コレクティブ・アクションが司法へのアクセスおよび多層的な諸利益を保全および調整し得るか否かについては、議論が活発になされている。 このカンファレンスの目的は、様々な分野での法の執行における、コレクティブ・アクションの役割を検討することである。その検討にあたっては、コレクティブ・アクションが、個人の「司法へのアクセス」を保障し様々な利害関係を調整することは可能なのか、可能であるとすればそれはいかにして可能なのかを考察することで、その適合性を分析する。これらの分野には、競争法、会社法、有価証券法、消費者保護法、環境法及び保健法が含まれる。 このカンファレンスは、特に、以下の点を議論する。 1.コレクティブ・アクションは、個別の諸利益に対処するために実行可能な解決であるかどうか。コレクティブ・アクションは、共通利益の保全のために個別利益を犠牲にするものであるか。 2.コレクティブ・アクションは、公的機関による法執行と比べて、「司法へのアクセス」と多層的な利益との均衡をより良く実現するものかどうか。また、この目的の達成のためには、どの形態のコレクティブ・アクションが最も適当であるか。 3.検討対象とする法分野において、コレクティブ・アクションの限界はどこにあるか。 2月12-13日2011 九州大学西新プラザ 2月12日2011 10:00 – 10:10 開会の辞 第1セッション:集団的救済制度の展望 10:15 – 10:35 シュテファン ヴルブカ 11:25 – 11:45 休憩 11:45 – 12:05 学生からの質問第1セッション 12:05 – 13:00 昼食 第2セッション:集団的救済制度を強化する必要性 13:00 – 13:20 レイチェル マルヘロン 14:10 – 14:30 休憩 14:30 – 14:50 モニカ ヒンターエッガ 15:20 – 16:10 学生からの質問第2セッション 16:10 – 16:30 休憩 16:30 – 17:30 パネルディスカッション及び質疑応答 第3セッション:コレクティブ・アクションと司法へのアクセス 9:30 – 9:50 ステーヴェン ヴァン アーツル 10:15 – 10:35 学生からの質問第3セッション 10:35 – 10:55 休憩 第4セッション:コレクティブ・アクションの歴史的考察 10:55 – 11:15 アーサー R. ピント 11:40 – 12:00 学生からの質問第4セッション 12:00 – 13:00 昼食 第5セッション:コレクティブ・アクションの一形態としての株主代表訴訟 13:00 – 13:20 マチアス スィームス 13:45 – 14:05 学生からの質問第5セッション 14:05 – 14:25 休憩 第6セッション:間接的購入者とコレクティブ・アクション 14:25 – 14:45 サイモン ヴァンドゥワラ 15:10 – 15:30 学生からの質問第6セッション 15:30 – 15:50 休憩 15:50 – 16:50 パネルディスカッション及び質疑応答 16:50 – 17:00 閉会の辞 講演者: ブノワ アレメールス モニカ ヒンターエッガ ショーン マクギンテイー レイチェル マルヘロン 中田邦博 ウィリアム ページ アニナ H. ペーション アーサー R. ピント ダン プチニャック クイン クゥアチ マチアス スィームス 上杉秋則 ステーヴェン ヴァン アーツル サイモン ヴァンドゥワラ シュテファン ヴルブカ 問い合わせ: eigo@law.kyushu-u.ac.jp |