[2020-1]「国際文化遺産法」特殊講義

法学部2年の今泉友希です。GVの学生4名と他の法学部生2名の計6名でこの集中講義に参加しました。夏季休業中に7月22日、8月14日~16日においてPeter 先生の指導の下Preparatory session、8月18日~28日において河野俊行先生の国際文化遺産特殊法講義、9月1日~2日には九大LL.M.の学生と「アムステルダム運河地区の奴隷貿易に関する問題」について模擬世界遺産委員会を行いました。

例年は、日本で集中講義を受けた後にフィリピンを訪問しアテネオ・デ・マラヤ大学の学生と共同セッションを行っていますが、今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、全日程においてすべてオンラインで行いました。9月3日~5日で沖縄研修を予定していましたが、こちらも同県の緊急事態宣言延長の影響を受け中止になりました。

Preparatory sessionでは、まず日本語で書かれた課題図書を読み母語で基礎知識をインプットして、それを英語でアウトプットする練習をしました。また、英語で書かれたICOMOSの文書やアメリカの南部連合のモニュメントと国際法に関する論文を読み、世界遺産についての理解を深めつつ、英語でアウトプットする練習をしました。時間が限られていたのもありますが、世界遺産について英語で学習するのが初めてだった私は、このはじめの段階で理解するのに時間がかかり苦労しました。しかし、皆で内容を確認したり先生から助言をいただく過程を経て徐々に不明確だった箇所を明らかにすることができました。

河野先生の授業においては、Preparatory sessionで取り扱った内容の理解を深めたうえで、模擬世界遺産委員会の議題となる、アムステルダム運河と奴隷貿易の歴史についての基礎知識を確認し、これまで扱った文書を参考に模擬世界遺産委員会で論点となりそうな点を絞りだす作業を行いました。授業時間外も生徒同士で文書や論文の内容を確認したり、アムステルダム運河地区についてどのような議論が予想されるか、またその論点について自分たちはどう考えるのか話し合いました。

模擬世界遺産委員会においてはLL.M.の学生と二人一組でチームをつくり割り当てられた国の代表として委員会に参加することになりました。ここでは自分の代表する国の歴史や文化的背景を踏まえてアムステルダム運河地区の問題についてのみずからのスタンスを考えることを求められ、本番に向けてLL.M.の学生のパートナーと打ち合わせを重ねて本番に臨みました。約2週間かけて世界遺産について理解を深めた甲斐もあり、パートナーとの話し合いでは物怖じせずにしっかり議論できたと感じました。

模擬世界遺産委員会では、すでに世界遺産として登録されている「アムステルダム運河地区」が過去の奴隷貿易の利益の恩恵を受けて作られたという指摘について、世界遺産委員会としてどのように対応するか話し合いました。現在の世界遺産の枠組みではオランダのような奴隷貿易の歴史を理由に当該遺産をリストから除外するのは難しく、単純には解決できる問題ではありませんでした。しかし参加者の積極的な協力もあり、最終的にコンセンサスをとることができました。非常に充実した話し合いができた一方で、LL.M.の学生にかなり助けられた場面も多かったので、今後はこのような大人数の話し合いでももっと積極的に自分の意見を発信していけるように自分の英語力を向上させていきたいと思いました。

私はGV生ではない法学部生としてこの授業に参加しました。はじめは自分の英語力でGV生のみなさんについていけるかなど、少し不安はありましたが、みなさんが本当に温かく受け入れてくださったおかげで充実した時間を過ごすことができました。短期間ではありましたが、段階を踏んで理解が深まり少しずつ自信がついていくのを実感できました。これからも今回の経験を生かしてさらに法学部での学習と英語の学習も励んでいきたいと思います。

(今泉 友希)