[2020-2] GVプログラム 特別講演 (3/8)

2021年3月8日、私たちは、九州大学法学部の卒業生であり、長きにわたって企業法務のキャリアを積んでこられた中村豊氏による、「企業法務のあり方」に関する講演を聴きました。中村さんはこれまで、川崎製鉄、NTTドコモ、アシュリオンジャパンホールディングス等の企業法務部にて、組織設立、M&A、訴訟紛争、知的財産やコンプライアンスに関する業務等、様々な経験を積んでこられたそうです。そんな中村さんからまず、企業法務部の必要性についてお話しいただきました。

日本でハイテク産業が隆盛した1980年代は、企業法務部門が設けられていない企業がほとんどでした。しかし、日本企業が海外市場へ進出し、国際取引に参加するためには、社内に法律を専門とする部署を設けることが必要不可欠となっていきます。そして1990~2000年代において、バブル崩壊や大企業の不祥事等により、企業法務部は予防法務、すなわち「会社を守る」役割をも担うことが期待されるようになります。2010年以降は、テクノロジーの発展に伴い、個人情報やプライバシー等「未知の法務リスク」が次々と現れだし、それまでは想定されてこなかったような様々なリスクに対応し、備えるという重要な役割を企業法務部は担っています。現在の企業法務部の主な仕事内容は、臨床法務、予防法務、戦略・政策法務に大きく分けられ、企業における「アクセル」であり「ブレーキ」でもあるそうです。したがって、企業法務の仕事をこなすには、①ファクトファインディングスキル、②多元的な利益衡量スキル、③ルールを状況に応じて変化させるスキル、④アイデアを論理的・効果的・説得的に伝えるスキル、の4つのスキルが非常に大事であるとのことです。そして中村さんによると、それらのスキルは、法学部での学びを通して培うことが可能であり、企業は私たち法学部の学生に、それらスキルをしっかりと養って社会に出ることを期待しているそうです。すなわち、私たち法学部生は、そのころを日々意識しながら学習することが大切になるのだと思います。

今回の講演では、企業法務について詳しく教えていただき、大変勉強になりました。私自身、企業の法務部の存在は知っていたものの、企業の法律問題を解決する部署、という漠然としたイメージしか持っていませんでした。しかし、今回中村さんのお話を聴いて、企業法務では豊富な法律の知識だけでなく、自ら事業の中に飛び込み、その会社のビジネスを作っていく、という強い意識を持つことが必要だと感じました。中村さんが、海外企業との交渉が難航した際にも粘り強く信頼関係を築いていかれ、交渉を成功に導いたお話なども聞かせていただき、企業法務の仕事のスケールの大きさを感じました。講演の最後には、企業法務を目指す場合に弁護士資格を持っておくべきか、など具体的な質問にも答えていただき、将来の進路を考えるうえで大変参考になりました。本当にありがとうございました。

(丸山栞・吉村藍)