3・4年次に開講される講義についてご紹介いたします。
「行政学」について、担当されている嶋田暁文先生にお話を伺いました。
Q:「行政学」とは?
次々と噴出する公共的課題を解決していくためには、情報・財源・権限・人材・技術といったさまざまな資源を組み合わせながら、社会制御を行わなければなりません。そうした社会制御のメカニズムを具現化したものが「行政システム」です。
しかし、この「行政システム」というのは、放っておくと国民の意思を無視して作動してしまう危険性があったり、さまざまな理由からうまく作動しなかったりといったことが珍しくありません。いかにして、民主的かつ能率的に行政システムを作動させることができるのか。この点を考えるのが行政学という学問になります。そのため、政治学、法律学(憲法・行政法)、組織理論など、さまざまな学問的な素養が求められるというのが一つの特徴です。
なお、行政システムというのは、中央政府に限りません。日本では地方政府の働きが極めて重要になります。また、行政システムは、民間委託のように、民間主体の手を借りながら作動する面もある。
そこで、私の講義では、「法と行政」「政治と行政」「管理(組織)と行政」という三つの概念連関を意識しながら、「政治と行政」「国と地方」「政府と民間」という三つの視角から行政システムを考察することとしています。
Q:講義ではどのようなことをしますか。
もちろん、一通りの行政学の知識は教えます。私の場合は、大量の情報を盛り込んで講義するので、その分、詳細なレジュメを配布する形で講義をするのが特徴です。しかし、より大事にしているのは、「ものの考え方」を伝えることです。独立変数、従属変数、媒介変数、擬似相関といった社会科学方法論的な考え方を教えたり、時には、「震災後、さまざまな応援物資が被災現場に送られた。その中で、500人いる避難所に300人分の布団が送られてきたことがあったという。驚くべきことに、このとき、行政は、“300枚布団があっても、500人全員に渡せないので、不公平になる”という理由で、せっかく送られてきた布団を配らなかった。担当者はなぜこのような対応をしたのか?ほかにどのような対応が可能だったのだろうか?」といった問いを投げかけ、学生の皆さんに考えてもらったりしています。
Q:新入生・受験生に一言お願いします!
高校までの勉強は、決まった問いに対して「正しい答え」を出せるようになるための勉強です。それに対して、大学での勉強は、「そもそも、どこに問題があるのか?」、「これはどういう問題なのか?」といった具合に、「問題」それ自体を発見することから始まります。そして、その「問題」に対して、論理的、実証的、規範的に「答え」を導き出すのですが、「答え」はいろいろとありえます。答えは一つではないのです。だからこそ、大学の勉強はとても面白いと思います。そういう面白い勉強を、皆さんと一緒にできる日を楽しみにしています。
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著作:九州大学法学部広報委員会